シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

借金玉『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』の巻末解説を担当しました

 

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術

 
 もう書店に並んでいるみたいですが、借金玉さんの著書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』が出版されました。その巻末解説を私が担当いたしました。
 
 この本は、発達障害当事者である借金玉さんが書いた本で、ADHDをメインとする治療歴が反映された一冊だと思います。しかし一読者として読むと、ADHDや発達障害といった括りにおさまりきらない、もっと広範囲の社会適応のエッセンスを語った本であり、借金玉さんという一人の当事者の世界観が反映された本でもあります。
 
 この本、ブログに紹介したくなる面白いアイデアがたくさん書かれていて、紹介されている道具や方法のいくつかは原稿の段階で私も採用しました。私はパブリックにADHDと診断されたことはありませんが、この本に書かれている内容には思い当たるところが色々あり、それは、"発達障害がスペクトラムという概念である"以上、それほどおかしなことではないと思います。
 
 もっとわかりやすく言えば、発達障害の人の仕事術は、発達障害と診断されていない人の仕事術と、地続きだと思うのです。仕事の方法や職場の振る舞いで困っている非-発達障害の人のなかにも、この本が参考になる人が少なからずいることでしょう。
 
 なお、この本はちょっと分厚いですが、借金玉さんの文体には「リズム」があり、これに乗れるとたちまち読み進められます。お買い求めになる際には、是非、書店にて立ち読みをしてみてください。「リズム」に乗れると感じた人は、そのためだけに買ってもいいかもしれません。「リズム」に乗ると「スピード」が伴います。推薦文としてはメチャクチャな気もしますが、この本、本当に「リズム」と「スピード」があるんですよ。それが借金玉さんの魅力のひとつでもあります。
 
 ここからはちょっと違った話を。
 
 借金玉さんにせよ、ちょっと前にモテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門 (文庫ぎんが堂)を出版されたトイアンナさんにしても、あるいは私自身にしても、ネットから出発して社会適応の本を出そうとする人って、多かれ少なかれ社会適応に苦労した経験があって、その経験を背景として書籍を書いている部分があるように思われます。
 
 なんていうんですか、社会適応に苦労した時期に「社会適応の自明性」みたいなものが喪われていて、喪われているからこそ自分なりの社会の眺め方を獲得して、「社会適応を頭で考えてエミュレートしながら」生きているというか。
 
 そんなのは誰にでもある、とおっしゃる人もいるでしょうし、たとえば新人歓迎会の際の新人さんの振る舞いなどのように、人間の社会行動には「エミュレートしている感じ」が伴うのは自然ではあります。でも、その程度が甚だしいと、社会行動のより広い範囲をエミュレートしなければならず、頭がいっぱいいっぱいになりやすくなります。そのかわり、社会適応の言語化もはかどるのではないでしょうか。
 
 およそ社会適応について掘り下げた視点をする人は、社会適応について掘り下げなければ生きていけなかった人なのだと思います。少なくとも私にはそういう部分があったので、借金玉さんがこういう本を著されたことに、親近感を覚えずにはいられません。そのあたりについても巻末解説でも少しだけ触れました。なんとなく他人事ではないので、売れてくれたらいいなぁと願っています。
 
【ついでに私の近著も貼り付けておきます。よろしければどうぞ】
 
認められたい

認められたい

 重版となりました。承認欲求でうまくいかない人におすすめです。
 
「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

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 おじさんおばさんになりたくない人、若さにしがみつきたい人におすすめです。