シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきたシロクマ(熊代亨)のブログです。

ヤン・ウェンリーが「なろう小説」の主人公に思えて仕方がない

 

 
 新アニメ版の銀河英雄伝説、『銀河英雄伝説 Die Neue These』を楽しみにしているけれども、タイトルに書いたように、最近、ヤン・ウェンリーが「なろう小説」の主人公みたいに思える病気にかかってしまった。
 
 原作を読んだのも旧アニメ版を観たのも二十五年以上前で、当時は「小説家になろう」なんて存在していなかった。web小説どころかライトノベルというジャンル名すら存在していなくて、ノベルスと呼ばれていたように記憶している。
 
 それはともかく、新アニメ版のヤン・ウェンリーが、今は「なろう小説」の主人公みたいに見えてしまう。
 
 アスターテ会戦でもエル・ファシルでも、ヤンは奇跡のような活躍をみせていたが、その背景として戦史や歴史についての膨大な知識があることが仄めかされていた。そのうえ、新アニメ版では図書館で読書に耽るヤンの姿がしっかり描かれてもいた。このあたり、原作のヤン・ウェンリーと矛盾していない。
 
 ところが、2018年に私がこのヤンを眺めると、彼が歴史読書の知識で無双しているようにみえてしまう。もちろん、ヤンは異世界にオーバーテクノロジーを持ち込んで無双しているわけではないけれども、「みんなが軽んじている歴史知識を使って無双」しているようにはみえる。そうやって無双を繰り返すうちに「魔術師ヤン」なんて呼び名がつくのも、どこか「なろう」じみている。
 
 それと、これも気のせいだとは思うのだけれど、新アニメ版のヤンが勝利のカラクリを語ったり歴史的知識に則った発言をしたりしている時に、ドヤ顔っぽいというか、「さすがお兄様」的な語りというか、そういう兆しを私は感じてしまう。ぐうたらで、読書家で、世間擦れしていないヤンが活躍し、周囲の人物から珍重されているあたりも、どこか「なろう」の主人公っぽい。そんな風にヤンのことを観てしまっている自分がいる。
  
 今にして思うと、『銀河英雄伝説』の各陣営では自由惑星同盟が一番「なろう」っぽかった。
 
 帝国側は、美貌の天才的主人公・ラインハルトの配下に一癖二癖ある将官が集まり、倒すべき敵としての皇帝や門閥貴族が幅を利かせていた。ラインハルトには悲劇の英雄としての趣もあって、このあたりは「なろう」で無双する主人公のテンプレどおりではない。
 
 対して自由惑星同盟のヤンの周辺人物は、だいたいヤンの無双を際立たせるか、ヤンの無双をサポートするために配役されている感じが否めない。「さすがヤン提督!」と言わんばかりのユリアンやフレデリカは言うまでもなく、第十三艦隊の幕僚たちも含めて、ヤンのための配役感があって、なんとなく「なろう」を思い起こさせるものがある。ラインハルトのような万能型の美貌天才ではなく、特化型でぎりぎり美青年というあたりも「なろう」じみている。
  
 断るまでもないことだが、『銀河英雄伝説』というビッグタイトルの新作アニメが「なろう小説」に寄せてつくられているとは思えない。こういう感想をヤンに抱いてしまうのは、ひとえに、2018年に新アニメ版を視聴している私自身が、勝手に「なろう」小説のテンプレートを連想して、勝手に「なろう」の色眼鏡でヤンのことを見ているに過ぎないのだろう。
 
 『銀河英雄伝説』やヤンが変わった以上に、私自身が変わってしまったのだろう。まあでもヤンの活躍を視るのは楽しい。こればかりは今も昔も変わらない。
 
銀河英雄伝説 Blu-ray BOX スタンダードエディション 3

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