シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

非モテ同窓会に出席してしみじみした

 

奇刊クリルタイ6.0

奇刊クリルタイ6.0

  • 作者: クリルタイ,能町みね子,雨宮まみ,手塚真輝,古田ラジオ,ふじいりょう,奇刊クリルタイ編集委員会,吉川にちの
  • 出版社/メーカー: クリルタイ
  • 発売日: 2011/11/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 2017年も師走を迎えた先日、非モテ同人誌『クリルタイ』に関わったメンバーが集まり、旧交を暖めるオフ会があったので参加してきた。
 
 ちなみに私は非モテを名乗っていたのでなく、自称非モテの仮想敵とみなされる「脱オタ」派の一人とみなされていたが、彼らの論争に巻き込まれるうちにいろいろあって、非モテ同人誌に寄稿することと相成ったのであった。
 
 さて、非モテ論争から10余年が経って、非モテという言葉はネットであまり見かけなくなった。
 
 代わって頻繁に見かけるのは「陰キャ」という、1980年代の「ネクラ」を彷彿とさせる言葉である。結局人は、明るい-暗いという、最も単純なレッテル貼りから逃れられないのか! ガンダム!
 
 それか、モテないことと「発達」が関連付けて語られることもある。「発達」とは、もちろん発達障害のネットスラングである。「陰キャラ」か。「発達」か。あるいはその両方か。しかし発達障害という文脈にモテ非モテが回収されるというのも、あまりに切なく、乱暴という印象は否めない。
 
 そういった2017年の容赦のないネットの現実を顧みると、10年ほど前の非モテ論争、あるいは「革命的非モテ同盟」などといったお花畑が、なんとも牧歌的に思えてならない。
 

あのとき非モテだった君は

 
 さて、10年前に非モテ論争に参加していた人々は、10年後にどうなったか?
 
 非モテはおじさんになっていた。
 
 非モテの群れが、おじさんの群れになったのである。
 
 ある者は非モテといいつつも結婚し、夫としての責務を果たし。
 
 またある者は、仕事をあれこれ変えながらも一定のキャリアをつくりあげた。
 
 別のある者は、急進的な非モテ運動から鞍替えして、保守的な立場に流れついている。
 
 しかし、全員に共通していることがある。
 
 ひとつは、全員がおじさんになった、ということだ。もし女性が来ていたらおばさんになっていたであろう。「私がおばさんになったら、あなたはおじさんよ」という歌があったが、歳月は人を待たず、非モテの悩みを中年の悩みへとコンバートしていく。
 
 かつての繊細な非モテマインドも、歳月の侵食と社会経験と加齢臭のなかで図太くなっていった。たくましくなった、とも言えるかもしれない。人生観が前進したのだ。それを嘆くよりは成熟を祝福しよう!諸君!
 
 もうひとつ。全員が生き残った。オフ会に出てくる奴は生き残った奴だけである。肉体的生命を奪われた者、社会的生命を奪われた者はオフ会に出てくることができない。オフ会に出てくるということは、とにかくも生き残っているということだ。俺達は、まだ生きているぞ!!
  
 モテだ非モテだといった話はすっかり剥げ落ちて、そこには普通のおじさんの、普通の同窓会があった。なるほど、世間の人が同窓会をやる理由がわかった気がする。過去を共有した者同士が再会して、お互いに生きていることを確認するってのはかけがえがないことであるなぁ、と、しみじみ思った。