ちょっとした相談//夏コミ同人誌について - orangestarの雑記
なんか天から巡り合わせがやってきた気がするので、小島アジコさんとその漫画について自分が日頃感じていることをベラベラ書いてみようと思う。
私は、小島アジコさんという作者と、そのアウトプットたる漫画をあまり境界づけては楽しんでいないと思う。
作品やコンテンツを楽しむ際、しばしば言われる言葉が「作者と作品は分けて評価」だ。作者がクズだけど作品は立派・著書は素晴らしいなんてザラにあるし、あくまで作品世界で記されたもの・描かれたものだけをしっかり捉える点では、そういう態度のほうが気が散らない。
ただ、私はいつでもどこでも「作者と作品は分けて評価」をやりたがるわけでなく、ときどき、作者と作品の境界を曖昧にしたまま楽しみたくなる。一人の作者がつくった作品やアウトプットそれぞれに共通する何かを噛みしめようと考えると、次第に、作品を楽しんでいるのか作者ならではのフレーバーを噛みしめているのかわからなくなる。
で、私の場合は、小島アジコさんという漫画家さんに対して、どうもこれが強いような気がする。
どうしてそうなったのか?
小島アジコさんは、インターネットな人でもあるので、つい、ブロガーを鑑賞するようなノリになってしまうのかもしれない。インターネットの人同士の心理的な距離感は、どこの誰とも知れない漫画家や作家のソレとは違ってきてもおかしくはないだろう。「お隣さんの漫画家」的な目線になってしまうのかもしれない。
それ以前に、作品から滲み出る独特のフレーバー――ここでは小島アジコ節とでも言っておけばいいだろうか――にやられてしまっているのだろう。ブログにアップロードされる諸々からも、小島アジコさん的なスペクトルを検知せずにはいられない身体になってしまったのだ、私は。
いやしかし、理由がなんであれ、私は小島アジコさんとその作品を切り離して考えることはできない。最新作の『アリスインデッドリースクール』にしても、原作が麻草郁さんの舞台だと知ってもなお、随所に小島アジコさん的なエッセンスがいちいち顔を覗かせている気がして、それが喜ばしく感じられる。
アリス イン デッドリースクール<アリス イン デッドリースクール> (電撃コミックスEX)
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最初はアニメ『がっこうぐらし!』と比べてやろうみたいな気持ちで読み始め、同じ女子高生のゾンビな作品でも方向性はだいぶ違っていて良かった。でも、私はそれ以上に『となりの801ちゃん』や『はてな村奇譚』で感じた小島アジコ臭や、これとかこれとかに染み着いているのと共通のセンスに夢中になっていたみたいで、作品を追いかけていたのか作者を追いかけていたのかわからない状態になっていた。作中、コミュニケーションの巧い子〜下手な子まで出てくるんだけど、彼女達の細かな台詞回しや仕草が小島アジコさんの諸断面を反映した万華鏡にみえてしまうこともあり、いやいや、そうじゃないんだと頭を振ってもう一度読み直すようなありさまだった。
ちなみに、『となりの801ちゃん』シリーズを読んでいた時には、剃刀のように……それはそれは冴えている時とそうでもない時があるように感じられて興味深かった*1。ネット上のアカウントの拍動を眺めていても、似たような傾向があるような気がする。『アリスインデッドリースクール』は冴えている時につくられたものだったのか、キャラクターの人数が多くて把握しづらかったけれども把握しづらくてもさほど気にならなかった。私が物語の筋をキッチリ追いかけていたというより、コマ割りひとつひとつから発せられる小島アジコ的切れ味を堪能しようとしていたせいかもしれないが。
お好みは手書きのフォントだけど
で、冒頭の手書きかフォントかの話だけど、個人的には手書きのほうが良いと思った。同人誌は、商業誌よりは書き手と読み手の距離が近いから、だとしたら作者のスメルが直に漂ってくるほうが喜ばしい気がするからだ。精神科のカルテだって、電子カルテ化された文字と、手書きのカルテの両方を経験してみると、なるほど手書きのカルテもいいモンだなと気づかずにいられない――手書きの文字は確かに読みにくいけれども、手書きの文字には筆者のメンタリティやフレーバーが何か宿っていて、それは標準化されたフォントには無い。紹介状も同様で、読みやすいのは綺麗なフォントの紹介状だが、精神科医の人となりが滲み出ているのは手書きの紹介状のほうだ(良くも悪くも)。
だから、私のような、作品を見ているのか作者を見ているのかゴチャマゼの人間が願望を述べるとしたら、「手書きがいいです!」に自然となってしまう。
でも、『アリスインデッドリースクール』のフォントが意外とへっちゃらだったことを思うと*2フォントでも大丈夫なのかも。堅苦しいやつでさえなければ。
手首が痛くなってきたのでこのへんで。
フォントの話をタネに好き勝手書いてきましたが、これからもご活躍ください>小島アジコさん
私はあなたの作品と、あなたの作品に宿っているあなた自身のようなものを、これからも眺め、楽しみ続けていきたいと思います。