インターネットおっさんとしての生き方 ~36歳を迎えて | @raf00
リンク先は、黎明期からインターネットと付き合いながらおじさんやおばさんになった人には無視しにくい文章だ。
かつて、インターネットは若者の国だった。少なくとも、マスボリュームという点で十代〜二十代の比率が高い時代があった。二十二歳や二十四歳がそれほど若くないインターネット。オフ会で出会った三十歳がおじさんに見えたインターネット。
そのインターネットも、さほど若者の国では無くなった。今日日のインターネットには四十代、五十代も珍しく無い。聞けば、2ちゃんねるは高齢化しているという。いつの間にか、家庭や子育ての話題がtwitterやソーシャルブックマークを賑わすようになった――いや、変化は何年も前から起こり続けていたことだ。このまま推移すれば、健康や介護がtwitterやソーシャルブックマークを賑わす日もやって来るだろう。
なにより、当時のネットユーザーは年を取った。
大切な事なのでもう一度。
当時のネットユーザーは、年を取ったのだ。
二十代の頃、自分より世故長けているようにみえた、オフ会で出会った三十代のおじさんが、今ではそれほど世慣れていなかったように感じられる。そういえば、シャア・アズナブルや葛城ミサトの年齢を追い抜いたのは何年前だったか。かつてはお兄さん・お姉さんにみえたキャラクター達も、やけに若く、やけに幼く見える。
彼らが若くなったのではない。私が、私達が年を取っただけだ。
おにいさんやおねえさんとしてインターネットに浮遊しはじめた私達が、今、おじさんやおばさんとしてインターネットに浮遊している以上、私達はもはや、インターネットおにいさんやインターネットおねえさんとして生きていけない。なんとすれば、新たにアカウントを作り直し、二十代のごとき若作りインターネットに挑戦できなくもないが、過去のサブカルチャーに言及したり、90年代的琴線に触れるようなメッセージを発したりすることで、実態は暴かれるだろう。そもそも、どれだけアカウントを若く繕ってみたところで、自分自身に蓄積している歳月と歴史からは逃げられない。
だから、インターネットおじさんやインターネットおばさんは、やはり自分の年齢に即したインターネットを――いうなればアカウントのエイジングを――それなり意識したほうが良いのではないか。そして知識も経験も浅い年少者アカウント*1に対しては、相応の向き合い方というか……年齢も経験も対等ではない、という大前提を踏まえたうえで……コミュニケートするのが適当ではないか。
「若い世代を無条件に承認しましょう」という話ではなく、まして「年下とわかるや殊更に威張りましょう」という話でもない。ひとつひとつのコミュニケーションはケースバイケースだから、単一パターンに固執しても良いことは無い。ただ、どのように対応するのであれ、干支が一周〜二周違った“なかのひと”のアカウントが目の前に存在し、自分より年下にみえる相手からは年上としてみられているであろうことを、ときに意識したほうが良いのではないか、というだけの話だ。
ところが、その「意識するだけ」がネット上ではなかなか難しい。仮に意識できたとして、どのように応対するのが最適なのか?
90年代にインターネットをスタートした頃、インターネットでおじさんやおばさんをやっている人は少なかった。なにより、当時のインターネットはまだ社会でも世間でもなく、アングラで、歴史も生まれていなかった。「一律に若かった」とは言わないけれど、今日のようにおじさんおばさんだらけではなく、おじいさんやおばあさんはきわめて少なかった。
対照的に、現在のインターネットは社会でもあり世間でもある。歴史の蓄積が始まり、年下と年上がメンションを覗き合う社会の窓としても機能しはじめた。若者だけのインターネットが終わり、老若男女のインターネットが始まった。
では、これからのインターネットおじさん・インターネットおばさんのロールモデルはどこにいるのか?オフラインの世界にヒントはたくさんあるだろうし、パソコン通信以来の古参も参考になりそうだ。もちろん古典も。ただ、そうした世代とて、ネットが社会化・世間化した状況は初めて遭遇するものだから、今風のネットコミュニケーションに即したアレンジメントは、これから見つけていくしかない。
簡単ではないかもしれない。さりとて、インターネットも思春期も、ひとつの世代・ひとつの時代だけが独占して良いものとは思えない。だから、インターネットおにいさん・インターネットおねえさんをやるのは若い世代にお任せするとして、インターネットおじさん・インターネットおばさんとしてどのような理想があり得るのか・どのように立ち振る舞っていくのが望ましいか、考えていきたいな、と思う――私自身のインターネットおじさん習熟度を上げてゆくためにも。
- 作者: 熊代亨
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/02/19
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (16件) を見る
が、何故かリンクがバグるのでここには貼ってありません。
*1:少なくとも、年少者アカウントとはっきり判明している限りのアカウント