自己愛の充たされ具合と、判断力について。
人間って、腹が減ってもすぐには死にません。空腹は辛いものですが、健康な人が一食抜いた程度なら大丈夫でしょう。しかし空腹がずっと続けば衰弱しますし、いつか餓死してしまいます。
人間の自己愛も、これに似ていると思います。人間の心は――少なくとも概ね健常な状態にある人間の心は――ちょっとやそっと自己愛が充たされなくなっても、すぐには潰れてしまわないものです。でも、ずっと自己愛が充たされない状態が続いていると、だんだん心が衰弱していって、メンタルヘルスを損ねやすくなってきます。尤も、自己愛が腹ペコ状態になっただけでメンタルヘルスを損ねるところまでいってしまう人は稀でしょう。身体的疲労やストレスが重なった時に、自己愛が腹ペコ状態なのかそうでないのかが問われ、その人の命運が左右されるんじゃないかと思います。
ここまでは拙著『ロスジェネ心理学』でも書いた話。
本題はここからで、自己愛が腹ペコだと、実は、人間の判断力ってかなり低下するんじゃないかって思うんですよ。いや、低下というよりバイアスがかかるといいますか、足りない自己愛を充たす方向で行動や判断のバイアスがかかったうえで行動選択してしまいやすいような気がするんです。
一方で、世の中には“心の隙間”を抱えた人間を的確に見つけ出し、その判断力の狂いにつけこんで高い対価を支払わせるような恐ろしい捕食者がゴロゴロしています。そういう捕食者が娑婆に一定割合で生息していることを思うにつけても、自己愛が腹ペコ状態のままの暮らしは極めて危険です。
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「自己愛を充たせるか充たせないかなんて、純-心理的な問題だ」と鼻で笑う人や「心療内科や精神科を受診するまでメンタルヘルスが蝕まれなければそれで良し」と思っている人も少なくないかもしれません。しかし、自己愛が腹ペコ過ぎると判断力にバイアスがかかり、そこをセキュリティホールとして狙ってくる悪者が存在する以上、自己愛をそれなり充たしておくことは人生のセキュリティ管理の観点から見ても優先順位の高い、プラグマティックな課題のように思います。