[PDF]平成23年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(文化庁)
文化庁は毎年、国語に関する世論調査という統計を出していて、日本語に対する意識やメディアの使用状況なんかを集計していて面白い。で、平成23年度調査が発表されたというので久しぶりに覗いてみたら、見慣れない項目が混じっていて、しかもちょっと興味深い結果を呈していたので、以下に抜粋する。
・初対面のコミュニケーションに対する得意意識、苦手意識に関する調査
※文化庁 平成23年度「国語に関する世論調査」の結果の概要より抜粋
表を見てまず目に付くのは、「30代は初対面に得意意識を持っている人が少ない」点である。他のすべての世代においては、約45%の人が初対面のコミュニケーションが得意だと答えているのに、30代だけ40%を切っている。これは何を反映しているのか?就職超氷河期時代のトラウマが反映されて、コミュニケーションに自信喪失している人が多い、ということなのか?不思議な数字である。
また、10代、20代の数字もたいへん興味深い。若い世代においては、「初対面への得意意識」の割合は40代や50代とほとんど変わらない。この数字だけを見ていると、「就職超氷河期のトラウマを抱えてうずくまっている30代を横目に、コミュニケーションに適応する若者達の姿」が目に浮かびそうではある。
ところが若い世代にも不気味な兆候がある――「苦手である」と回答している割合が多くなるのだ。この統計は四段階評価になっていて、「苦手である」は苦手意識が一番強い人が選択する項目である。この数字が、30代より若い世代においてジリジリ高くなり、10代になると20%もの割合を占めるに至っている。つまり、若い人ほど「コミュニケーションの得手不得手」の意識格差が強くなっている、ということらしい。
まとめると、
・30代は、コミュニケーションが得意と思っている人は少ないが、極端に苦手意識を持っているような人は少ない
・より若い世代は、コミュニケーションが得意と思っている人は従来どおりだが、極端に苦手意識を持っている人が増えている
ということになる。30代は、世代全体として・穏やかにコミュニケーションが不得意な感じで、それより若い世代に行くほど、コミュニケーションが闊達な人達と、コミュニケーションが極端に苦手な一部の人達とに二極化していく傾向が読み取れる。
私自身は30代なので、この表を見ると、自分の世代の来し方行く末に思いを馳せずにいられない。だが実際には、さらに若い世代におけるコミュニケーションの二極化・格差化のほうが深刻で、現代の社会システムの欠陥を反映しているようにも思えなくもない。若いうちからこんなにコミュニケーションが苦手な人達は、この、初対面コミュニケーションだらけな21世紀を、どこでどうやってサバイブしていけば良いのか?
「コミュニケーションの技能やノウハウが死命を制する」という意識は、若い世代においてこそ強い筈だし、コミュニケーションを磨きたいと欲求する機会も多い筈。にも関わらず、その若い世代においてコミュニケーションの二極化が進行しているとしたら――その意味するところについて、よく考えておかなければならないと思う。