- 作者: 逢空万太,狐印
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2012/04/16
- メディア: 文庫
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以前、敬愛しているあるライトノベル愛好家の人が、こんな事を言っていた。
「ライトノベルには異能者や非日常がたくさん出てくるけど、一番非日常なのは、美少女とのキャッキャウフフだよね」
これは至言だと思う。ラノベがターゲットとしている読者層は、異性とのコミュニケーションにそれほど恵まれてはいないだろうし、そもそも、十代のうちから異性とのコミュニケーションに慣れきっている男性なんて稀だろう。まして、ラノベのキャラクターのような、絵に描いたような美少女に囲まれた思春期なんてそうそうあるモンじゃない。ラノベが非日常であるためには、本当は、魔法も異能も宇宙人も必要無い。性別の壁を越えてやって来た、正体不明の、やたら魅力的にうつる美少女が接触を図ってくれば立派な非日常といえる。
で、そういう目線で『這い寄れ!ニャル子さん』を読んでいると、意外と含蓄深いような気がしてくる。
設定上、ニャル子はクトゥルフ神話のニャルラトホテプということになっているし、だから“這い寄る混沌”ということになっている。けれどもそんな設定に頼るまでもなく、ニャル子という美少女こそが異世界の住人であり、彼女の押しかけ女房的な振る舞い自体が“這い寄る混沌”もいいところだ。女の子にちょっと声をかけられただけでドキがムネムネしてしまう諸氏においては、正気度を下げるにあたって“クトゥルー神話の邪神”などというキャラ属性は必要ない――美少女が一次的接触を図ってくるというだけで、もう正気度の下がるような緊急事態なのだから。
その点、『這い寄れ!ニャル子さん』の主人公・真尋を見ていると、あんな境遇でよく正気度を保てているなぁと感心する。唯一男性のハス太くんにしても、あれはあれで好意を寄せられ続けたらやっぱりヤバいというか、頭が麻痺しているうちにフラフラと惹き付けられてしまいそうだ。ペットのシャンタッくんだけが、まだしも安全そうに見える。
そんな真尋も、最近の巻ではニャル子達にデレはじめているように見えて、「ついに真尋も陥落かぁ」感があって趣深い。まあ、あんなに美少女に囲まれてキャッキャウフフしていたら、相手が邪神か否かに関わらずSAN値が幾らあっても足りないでしょう。美少女という非日常に浸食されていく真尋の日常。キャッキャウフフって本当にいいもんですね。