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女性向けに「オタクな彼をターゲット」なんて煽りフレーズが生まれる時代になったのか!ちょっと驚いた。と同時に、結婚や男女交際に際して趣味のマッチングを意識するのは良いことだとも思った。
大人向けアニメのBlu-Rayディスクやゲーム専用機が家庭にあるのを許せない女性が、それら無しでは生きていけない男性とどうして暮らせようか。どうせなら、趣味が共通していたほうが一緒に楽しめるし、それが無理としても、趣味ジャンルが比較的近く、お互い寛容になりやすい者同士のほうが摩擦は少なくて済む。そういう意味では、アニメやゲームの好きな者同士のカップリングを望むのは自然なことで、今後、アニメやゲームを軸にした合コンのようなもの*1が増えてきてもおかしくはない。
では、どうやって、趣味ジャンルの近しい異性にめぐり合えば良いのか?その後注意すべきポイントはどんなことなのか?そのあたりについて、これまで見聞してきた男女を思い出しながら挙げてみる。
・ネットやオフ会で知り合った異性とのマッチングには時間を掛ける
スタンダールが言うように、もともと恋愛中は相手を理想化して見てしまいやすい*2。そしてネット上やオフ会でのコミュニケーションは、人間をメディア的・劇場的に修飾してしまう。言い換えるなら、ネット上やオフ会でのコミュニケーションは「見せたい自分だけ見せて」「相手の見たいところだけを見る」のに適しているため、相手の望むような理想の振る舞いを演じやすく、自分自身も相手を理想化してまなざしてしまいやすい*3。この、“やたらとお互いを理想化してしまいやすい”というメディアの特性は「熱しやすく醒めやすい恋」には向いているが、まともな伴侶探しには向いていない。
勿論、ネットやオフ会での馴れ初めを忌避する必要は無いし、職業的にみてネットに出会いの場を求めるのが自然な人もいるだろう。それでもネットやオフ会に軸足を置きすぎた相互マッチングは理想化の罠に陥りやすいことには十分な警戒が必要で、ともすれば結婚後に「こんな人だと思ってなかった」と醒めて困ってしまいやすい*4。趣味的にバッチリの異性が見つかっても、否、見つかった時こそ、知り合っていく過程にしっかり手間暇をかけておいたほうがいい。それも、オフラインでだ。
・オフラインでの出会いでは、趣味がマスクされている確率が高い
一方、日常生活のなかでオタクな異性と出遭う場合には、ネットやオフ会とは逆のことが問題になる;つまり、異性の趣味を確かめること・自分の趣味を打ち明けること自体が最初のハードルになり得る。
職場や日常生活の場では、アニメやゲームの話をする機会は意外と少なく、そういう話題を口にするタイミング・程度をはかるのも難しい。アニメやゲームはプライベートな娯楽なので、共通の話題として口に出して良いかの判断が難しく、しかも年長者を中心に「大の大人が楽しむものではない」と考えている人はまだ多い。このため「私はオタ女でーす」的にアピールするメリットがデメリットを上回ると判断されない限り、彼女達はプライベートな趣味をすすんで開陳しようとはない*5。
なら、どうすれば彼女達を探知できるのか?
以前にまとめたように、第一には、異性の言動や仕草、アクセサリなどに日頃から注意を払っておき、勘を磨いておくことだろう。画材運びに適した大きなバッグ・携帯ストラップ・言葉遣い・自動車のインテリアなどは、目星をつけるヒントを与えてくれるし、ときには「わかる人にしか届かないメッセージ」を発している場合さえある。オフ会で異性の典型例を目撃しているなら、そういった人達との共通点を探すのもいいかもしれない。
最近は「オタク趣味のカジュアル化」が言われるけれども、職場のようなパブリックな空間では、まだまだ気付きにくい。「ときどき深夜アニメを見ている」「昔は腐女子だった」くらいの人なら尚更だ。きちんと見ていないと、間近なところにいる理想のパートナーも見落としてしまう。
・守備範囲が広めの人のほうが異性のオタクガジェットに気付きやすい
この観点からすれば、一点集中の専門家肌のオタクよりは、ある程度“雑食性”のオタクや、異性のジャンルに幾らか興味のあるオタクのほうが、異性のガジェットに気付ける可能性が高いという意味では有利かもしれない。
ただし、関心の無いジャンルを無理に知ろうとすると「付け焼刃」感が生じかねず、全てのジャンルを網羅出来るものでもないので、“頑張ってやるものでもない”。単一ジャンルにすべてを賭けている求道者には関係無いところだが。
・趣味の暴露はデリケート
もし首尾よく、間近なところにいいオタク異性を見つけたとしても、いきなり趣味を暴いてはいけない。誘導尋問などもってのほかだ。どんなに明確な“物証”を見つけていたとしても。
もしかしたら、彼/彼女は上司や同僚に趣味がバレて欲しくないと願っているかもしれないし、その背景として、上司や同僚にアニメやゲームを悪く言っている人物がいるかもしれない。そういった異性側の事情に注意を払わないようでは、いくら趣味が近くても疎まれるのが関の山だ。「おまえのせいで、職場の居心地が悪くなったじゃないか」などと恨まれたら、恋愛成就どころではない。
また、あなたが「オタクな私」アピールを最悪の形でやらかした場合も、その職場のステルスなオタク達は、“あなたと同類だと扱われないような振る舞い”を余儀なくされているかもしれない。この場合も、どちらかといえば疎まれるだろう。
そうした可能性を踏まえるなら、自分自身の趣味を打ち明けるにしても、異性の趣味に切り込むにしても、タイミング・状況・背景を踏まえてスマートに振舞う必要がある――そうでなくても、異性のプライベートな領域を突っつく際には細心の注意が必要なのだから。このあたり、オタクか否かという以前のデリカシーの領域の問題のような気もするが、こういう基本的なことを疎かにして、自らチャンスを遠ざけている人をいまだに見かける。
・趣味ジャンルが重なりすぎるより、ちょっとずれていたほうがいい
趣味ジャンルが完全に重なり合うよりは、多少ズレがあったほうがラクだと思う。ジャンルが重なり合いすぎると、技術の巧拙や知識の多寡が意識されやすく、かえって摩擦を生じることもあるからだ。また、違ったジャンル同士なら互いに知識を融通しあえるけれども、単一ジャンルではそれが出来なくなってしまい、一方向的に伝授されるような形になりやすい。対等な関係を目指すのなら、趣味の領域でも、互助的な関係を構築できるに越したことは無い。
そして当たり前かもしれないが、自分自身と自分の得意ジャンルばかり贔屓するのでなく、パートナー自身とパートナーの得意ジャンルにも、相応のリスペクトを払うこと。リスペクトは、時間、金銭、収納スペースといったリソース配分で協力を示さなければ相手には伝わらない(リソースを独占しておいて、口でリスペクトリスペクト言っていてもダメ!)。できれば、お互いに相手の専攻ジャンルに若干の興味を持っているぐらいが望ましい。
おわりに
まとめると「異性の見るべきところをきちんと見て、察するべきは察して、助け合って、互いの生活と趣味を大切にしましょう」ということに尽きる。ジャンルに限らない基本的なところだろうし、付き合い始める前にも後にも共通していると思う。ところがその基本を有耶無耶にする人が後を絶たないのだが。
もし、オタク界隈に特有の注意点があるとしたら、接点が趣味やネットといったメディア依存度が高いカップルは、メディアを離れたときに幻滅が起こらないかちゃんと確かめること。どんなに趣味の話やネットコミュニケーションで盛り上がっても、男女の意気投合をメディアに依存しすぎるのは危ないと思う。
*1:および合コンをセッティングするためのサービス
*2:スタンダールの言うところの“結晶作用”
*3:これが、生活空間や仕事空間を共有している異性なら「見せたい自分」だけを見せているわけでも「相手の見たいところだけを見ている」わけでもないぶん、相手を過剰に理想化→幻滅したりするリスクはまだ少なくて済むし、デートのような特別シーンだけに幻惑されにくくなる。
*4:これは、オフ会やネットに限らず、異性との接点がメディア的・劇場的な交際全般にも当てはまる。メールでのやりとりが多すぎる交際も、この点から見れば実は考え物かもしれない。
*5:男性オタクも同様。男性の場合も、自分の趣味を開陳するのも、デメリットを上回るメリットがあると判断される時だけで、職種・年齢・営業所次第では趣味のステルス化を余儀なくされることはあり得る。