シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

女性と美少女アニメを楽しみやすい時代が来ましたよ、オタク

 
 最近の『とらドラ!』や『けいおん!』などをみていると、オタク向けの美少女アニメとはいえ、ロボットやらウザい蘊蓄やらがしゃしゃり出てくるでもなく、男の子に媚びるしか能のない萌えキャラが出てくるでもなく、なかなか快適感慨深いものがある。
 
 なにか、界隈の風向きが変わったような気がする。
 従来、美少女アニメを消費するのは“きつい萌えオタ”で、彼ら好みの濃い味付けが施される*1のが常だと思っていたんだけど、『とらドラ!』『けいおん!』あたりで重視されているのは、そういう“きつい萌えオタ”へのアピールではないようにみえる。もっと幅広い、ライトにアニメを楽しんでいる人達への訴求力の高い作品として仕上がっている。
 
 例えば『とらドラ!』のキャラクターの振る舞いは、従来の美少女アニメのテンプレと比べてオタ媚び度がかなり低く、ストーリー展開も、エロゲーよりはテレビドラマに近い。オタクネタに頼りすぎることなく、キャラクターの動きや心情描写などだけで勝負してくる割合が大きいから、ヘビーなオタクでなくても十分に楽しめる。例えばうちの嫁さんなども『とらドラ!』をごく普通に、毎週楽しみにしていたわけだ。
 
 同じく『けいおん!』も、萌えのテンプレやオタクネタに依存しすぎていないこともあって、割と勧めやすいアニメに仕上がっていると思う。キャラクター達の細かな仕草や服装もそれなりに女の子っぽく、萌えのテンプレに頼ってなくても十分にかわいらしい。部活動の内容も、“光画部”“麻雀部”“現視研”などではなく、あくまで“軽音楽”というあたりも絶妙だ。これだけ女の子のかわいらしさを前面に押し立てた作品ながらも、“萌えオタ向けの作品ですよー”という古臭ささを回避できている
 
 

女の子とアニメを楽しみたいと思っていたオタク、チャンスですよ!

 
 そういえば、いつの時代にも「女性と一緒にアニメをみたい」と愚痴る男性オタクは絶えたためしがないけれど、現在は、千載一遇のチャンスなんじゃないだろうか。これまで、女性が一緒に楽しめるオタ向けアニメとなると、なかなか良い選択肢が見つからなかった。もちろん、腐女子受けの良い『ガンダムSEED』のようなものが無かったわけではない。けれども“カタギ”の女性と楽しむとなると、ロボット物を避けたり、オタクネタ全開の作品を避けたりと、なかなか難しいものがあったわけだ。
 
 ところが、『とらドラ!』も『けいおん!』の場合、従来のオタ臭い萌えアニメに比べれば鼻につくような媚態も少ないし、ストーリー立てやキャラの動きできちんと魅了してくれる作品に仕上がっている。*2いわゆるオタク的知識やオタク的おやくそくを知らなければ楽しみが激減してしまうような作品でもない。つまり、オタクじゃなくてもまずまず楽しみやすく、オタ臭さを敬遠されにくい。これなら大丈夫ですよ!美少女アニメだけれども女性とアニメが楽しめる作品!オタク、チャンスですよ!
 
 いい時代になりましたね、オタク。
 こういう時代の変化を見るにつけても、オタク文化圏ってやっぱりライト化しているんだなーと思わずにいられない。ライト化という表現に抵抗があるなら、“コアなオタク以外にも門戸を開放した作品も、丁寧に創られていれば支持されるようになってきている”と言い換えれば良いだろうか。とにかくこれで、女の子と一緒に楽しめる美少女アニメが無いとか、オタクをやっていると趣味の接点が無いとか、嘆く必要はなくなったわけですよ、オタク
 
 一人で鬱屈をかかえながら美少女アニメをみる時代が終わり、スマートに、気楽に、美少女アニメを楽しむ時代がはじまっている、のかもしれない。
 
 
 [関連]:若いライトオタクの流入と、中年オタクの難民化 - シロクマの屑籠
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*1:例えば『瀬戸の花嫁』

*2:オルゴールBGMでお涙頂戴的な、あの気味の悪い自己陶酔タイムも少ない。