シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

Masaoさんは、さっさと堕天すればいいと思う。

 
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 Masaoさんって「天使みたいに」いいひとよね!
 
 これまでにも、非モテ問題などにおいて「みんなが不幸じゃなくなるにはどうなるか」問題について盛んに論じてきたMasaoさん。しかし、こういうマクロな問題を論じては集中砲火を浴びる姿は、なかなか大変そうである。私などは、Masaoさんが集中砲火を浴びているのを波消しブロックのように利用させていただいて、安全な入り江から随分と好き勝手な事を書かせて頂いているクチであり、いつも感謝しております*1
 
 しかし、いいひとを続けて、ほうぼうを刺激して、烈しいリアクションに晒され続けるのは正直みていてしのびないなぁと最近は思うようになってきた。利他行動に自己利益を期待するさもしい私としては、優秀な波消しブロックにして脱オタ議論上重要な立ち位置のMasaoさんにノックアウトしてもらっては困るので、あまりMasaoさんがボコられるととっても心が痛むのだ(シューター同志ってのもあるし)。そろそろ、天使を降りても良いんじゃないですか?あなたは私と同じく所詮は悪魔の子。だのに、天使ぶっているってぇあたりが“他の天使達”がより烈しく介入する動機になってるんじゃないですかね?
 
【当事者でも無いのに天使を気取る、ということ】
 
 今回のジェンダーだかフェミニズムだかの件も、以前の非モテ議論の件も、Masaoさん自身が議論問題の安全圏に到達しているにも関わらず、「みんな仲良く」論を展開していている。私やMasaoさんがジェンダーだの非モテだのを議論する際、かつてはともかくとして現在は当事者性が乏しい。それでもなお理想論を書く場合、一体どこにどんなインセンティブがあるのかと普通は疑うんじゃないかと思う。私のような天の邪鬼は速攻で「こいつ天使様気取りだぜー!*2」とか勘ぐるし、ジェントルな人達だって「何か腑に落ちない気配」を敏感に感じ取るんじゃないかと思う*3
 
 私は、「人間の全行動は利己的動機・意図」を含んでいるという前提で考える方法論 - シロクマの屑籠という前提で考えるので、Masaoさんが一見公明正大な意見をアップロードするたびに「胡散臭いなぁ、彼の利得はどこにあるのかなぁ」と疑ってかかったものである。現在私が推測する“Masaoさんが天使のようなテキストをアップロードするインセンティブ”は、主として以下のようなものになる。
 
1.自分自身の内に潜む不浄・邪悪・利己性を遠ざけなければならないという心的要請。防衛機制、と言って良いと思う。私の知る限りにおいては、Masaoさんは過去に色々と心穏やかではない利己的行動を経験していたように思う。これらの過去と適切な距離をとるうえで、自らを聖戦士たらしめる行動選択は、葛藤防衛のうえで合理的なものだ。かつて、症例2(汎適所属)でそれとなく指摘したけど、Masaoさんが過去に脱オタの代償として経験した諸々は、現在のMasaoさんの適応的行動に(なんやかや言っても)反動的なバイアスをかけているんじゃないかなぁ。Masaoさんが過度に潔癖なテキストを吐き出し続けちゃうのは、その為じゃないのぉ?
2.Masaoさんが知らないうちに政治ゲームをやっている可能性について。“利他行動を奉じる自分自身を示すこと”は、コミュニケーション場面において自分自身のをディスプレイする優れた手段のひとつであり、自分自身の立ち位置や議論を強化せんと意図する者の武器として機能する(正義や正当性と同様)。ネット界隈におけるid:Masao_hateのポジションをより良いものにする戦略として「いいひと」を演じる事は、単なる防衛機制以外の実際的メリットをもたらすものだと私は考えている。Masaoさんの行動選択のなかのそうした政治性を見出しちゃいたくなる誘惑にはなかなか抗しがたいものがある。この誘惑に堪えられないのは、何も私一人じゃあないでしょう。
3.Masaoさんが知らないうちに優越感ゲームをやっている可能性について。これは、2.のような実際的な政治ゲーム上のメリットというよりも、「ちょうてんさい」「おれはこころがいい」「あいつよりもうつくしい」的な、自己満足の類である。このような優越感ゲームから人間が逃れる事は極めて困難であり、Masaoさんもまた私と同様、優越感ゲームがもたらす“自惚れ”“虚栄心”“自己陶酔”などといった砂糖菓子は定めしお好きなことだろう*4
 
【灯台もと暗しの疑い】
 
 だから、Masaoさんはもう天使をやめて堕天使になればいいんじゃないかな、と敢えて諫言申し上げてみる事にする。私と同じような、黒い手と黒い尻尾の堕落した自分自身に直面したほうが結果として摩擦が少なくなるんじゃないかな、と思う。どんなに天使のフリしたって、みんな気付いているのだ、私やMasaoさんの手が黒くて利己的動機に誘導されて動くケダモノだって事に。“灯台もと暗し”で気づきにくいかもしれないけれども。
 
 とりわけ、多くの人を押しのけて現在の適応を獲得してきた脱オタ者なんて、利己的行動者の典型とも言えるわけで、そんな私やMasaoさんが天使のふりして議論したところで、内にはバイアスを、外には勘ぐりを生み出しやすくなってしまうのがオチなんじゃないだろうか。防衛機制を含めた利得バイアスは、公明正大であるべき議論をグラつかせやすくなるし、そんな人間が公明正大であるべき議論を展開したところで他人に疑われやすくもする。しかも、当事者というよりは安全圏からの発信ときたもんだ。私はそれらが怖くて天使のフリをするのはかなり昔に諦めた。自分の手が真っ黒なのを認めるのは幾らか苦痛だったが、それを認めることで得られたもの・失わずに済んだものは大きい。自分の手が真っ黒であるという前提のうえで議論したほうが、結果として意義深い議論が沢山出来るんじゃないだろうか?とりわけ脱オタやってるMasaoさんや私などは。
 
【空を見上げてみると】
 
 はてなの狭い井戸から双眼鏡で空を見上げてみると、真っ白な羽を背負ったMasaoさんが他の天使達と空中戦を繰り広げているのがみえる。目からビームを出したり口から電撃を発したりして善戦しているようだが、いかんせん、蝋で造られたその羽はちょっと炙っただけで真っ黒になってしまう人造品。羽を焼かれて井戸の底まで落ちてくるかもしれない。それぐらいなら、もう、人造の羽をかなぐり捨てて本来の姿に戻ってしまえばいいんですよ。堕天ですよ、堕天。どうせ議論をやるんなら、私達利己的人間の本来の姿――黒い皮の翼、醜い角、黒くてとんがった尻尾――に戻ったうえで、天使達の軍勢をベタに襲撃すればいいんじゃないなぁと思う。きっと、Masaoさんは白い翼よりも黒い翼のほうがお似合いで、もっと機動性のあるバトルが出来るひとだと思う。さあ、天使のフリなんぞやめてこっちにおいでよ。秩序を前提として捉えている青白い連中に、混沌という現実を突きつけるような意地悪をしようじゃないか、僕と一緒に。
 

[関連]:「人間の全行動は利己的動機・意図」を含んでいるという前提で考える方法論 - シロクマの屑籠
[関連]:みんな、残酷な娑婆世界で必死に生きている。だったらそれでいいと思う。 - シロクマの屑籠
[茶飲み仲間]:2006-07-23 - 古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」
[念のため断っておきますが私はこんな人間です!我利我利仲間募集中!]「快楽をやろう」 - シロクマの屑籠
 

*1:こんなケダモノシロクマの波消しブロックに利用されるid:Masao_hateさんテラカワイソス とでも言えばいいんでしょうかねぇクックック

*2:ジョジョ風に言えば、“おれぁ生まれてからずっと娑婆世界でいろんな我利我利亡者を見てきた。だから執着の強い人間と薄い人間の区別は「におい」でわかる!こいつはくせぇッー!餓鬼以下のにおいがプンプンするぜッーッ!こんな執着には出会ったことがねぇほどなァーッ!”って感じだろうか。はっはっは、同族の匂いがするぞぉー!

*3:とりわけ、議論が知性化や合理化といった防衛機制のよりしろになりやすい分野においては、近親憎悪が発動して違和感に気付きやすいんじゃないかと私は疑ってみている。つまり非モテやらフェミやらは、個人的利得を隠した天使モドキに敏感な人達がウヨウヨ蠢く紛争地帯なんじゃないかと疑ってかかっているわけだ。願わくは、このような疑いが私個人の愚かしい勘ぐりであらん事を。

*4:例えばこのテキストなど、シロクマが仕掛けた典型的優越感ゲームの一つとして記銘されて然るべき汚物と言える。