シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

脳内フォルダが四つしか無い女の子

 
 男性との距離感が掴めないとお悩みのMさんは、24歳のリスみたいな女性。彼女は大変かわいらしく、魅力的な女性にも関わらず、男性との付き合いはいつになっても不得手なままで、長く男性と付き合えた経験が無い。もちろん、彼女は“とっかえひっかえ”というわけではなく、むしろ近年稀なほどの清純系といえる。彼女がとんでもない山奥育ちだという事を差し引いても、男性と長く安定した交際を築けないのは不思議なことだと私は思っていた。職場では闊達なコミュニケーションが出来ているし。
 
 先日、その原因の一端を遂に私は知るに至った。それは、彼女の“脳内フォルダ”の少なさである。*1
 
 恋愛経験の乏しい男性オタクが女性を意識する際、「家族」「彼女」「他人」という少ないカテゴリーにしか分類することが出来ないことがしばしばある。「他人」からいきなり「彼女」に格上げした振る舞いをとってしまい、状況にそぐわない行動をとって恋愛の芽を潰してしまう不器用な男達。どうやら、彼女は性別こそ異なれど、同じ傾向があるように感じられたのだ。
 

Mさん:「相手の男の人にどう振る舞えばいいのかわからない。友達としてとか、恋人としてとか」
シロクマ:「そういうのって、空気でなんとなくわからない?」
Mさん:「わかんない。それに、一緒に付き合うようになってから、少しづつ好きになっていくものだし」
シロクマ:「じゃあ、例えば友達以上恋人未満なんて…」
Mさん:「え?私、友達と恋人の区別もわかりにくいのに、そんな…」
シロクマ:(絶句)

 
 どうやら、彼女の恋愛に関する脳内フォルダは以下のように分類されているらしい。

・他人(知り合いと赤の他人含む)
・友達
・恋人
・家族(恋愛の対象外)

 それでもって、男性と付き合う際に、自分が友達として振る舞うべきなのか、恋人として振る舞うべきなのか分からなくて失敗するという。多分、友達と恋人の区別もかなり曖昧になっているっぽい。年齢も年齢だけに、「告白されて自分がok出したら恋人」などというわかりやすさは期待できない。友達から恋人へと距離が縮まっていくプロセスにおいて、相手に対してどの程度の親密感を提示すれば良いのか、Mさんにはどうも分からないらしい。勿論、自分の行動が相手男性にどう捉えられてどういう関係を期待されるのかも想像出来ない。求愛する側かされる側かの違いはともかく、相手との距離感や相手との関係性を調整しきれないという点では、脳内フォルダの少ない男達とよく似ている。そして件の男達と同様、Mさんは対象異性とのコミュニケーションに四苦八苦しているというわけだ。脳内フォルダ問題は、男性側だけの悩みではない。
 
 そこで私(シロクマ)は、対処法として脳内フォルダの拡大をMさんに提案してみた。つまり、

・赤の他人
・知り合い
・友達
・男性としてちょっと魅力的な友達
・友達以上恋人未満
・一応恋人
・かなり恋人
・家族(恋愛の対象外)

 四段階からせめて八段階に拡張できないかと提案してみたわけだ。本当は脳内フォルダを沢山設けるよりは、数直線状に恋愛メータが備えるほうが融通が利くけれど、いきなりMさんにそれを求めるのは無理だろう。なので、まずは八段階に分類し、それぞれのフォルダに該当する男性ごとに振る舞いを切り替えてみてはどうだろうかと伝えた。当然のことながら、「友達以上恋人未満」「一応恋人」がわかりにくいと言われたので、中間項目を書き出して分類して貰うことにする。“一応恋人”なら腕を絡めてみてもok、“男性としてちょっと魅力的な友達”なら二人で夕食に出るまではok、などなど…。彼女の奥手な傾向を考慮しつつ、脳内フォルダを自分なりに細分化してもらってみる。随分と大雑把なフォルダ分けで、柔軟さに欠けるところはあるものの、脳内フォルダが四つしか無いよりはまだマシだろう。Mさんは相当な魅力を隠し持っているので、コミュニケーション上の行き違いさえ乗り越えれば、望むような相手との交際は可能に違いない。脳内フォルダの細分化が、彼女の振るまいのギアチェンジに貢献してくれると良いのだが。
 
 ※なんかこれって、SST(social skill training)みたいだなぁ。これの非恋愛バージョンなら、仕事の際に話す機会が多いような気がする。
 

*1:脳内フォルダについて詳細は、こちらの記事とリンク先がお薦めか。→2004-12-10 - ARTIFACT@ハテナ系