シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

住民組合法人が会費徴収?都市計画税払ってるのに?

 
日本経済新聞
 
 日本経済新聞によれば、街並み整備を住民組織に委託する方針を国交省が発表したとのことだ。住民に参加義務をつけた組織をつくり、そこが国や地方自治体に代わって地域の管理計画や景観規制を定めて運営するとのこと。公共施設の維持・管理権限と負担を住民らに求めることで、良い街づくりを目指すという主旨らしい。
 
 一見すると、この方針はすごく良いもののように見えるんだけど、ちょっと考えてみたらなんか変な感じがする。この手の都市計画に関する税制って、確かなかったっけ?・・・あった。都市計画税だ。固定資産税などとともに、土地保有者に支払いを義務付けられている法律があった。あの法律があるにも関わらず、今回検討されている「住民組合法人」なるものは住民から毎月会費を徴収して運営資金に充てるというのだという。んでもって、「この住民組合法人」は、準自治体としての性格を持たせるのだそうな。
 

 これをみた私は心配になった。土地所有者は、「地域の景観」なんていう体の言いコトバに踊らされて、二重の負担を強いられる可能性があるんじゃないの?都市計画税は、これに伴ってちゃんと廃止(または縮小)されてくれるのだろうか?本来、都市計画税とは、『都市計画税は、都市計画事業又は土地区画整理事業を行う市町村において、その事業に要する費用に充てるために、目的税として課税されるもの』なんだという。だとしたら、今回の「住民組合法人」が担当するであろう街並み整備の費用は、「都市計画税」という財源から出くるのが筋じゃないの?それか、「都市計画税」そのものを廃止する代わりに、「住民組合法人」が運営資金を独自に徴収する仕組みにするの?まさか、両方いっぺんに徴収しておいて、都市計画税はそのまんま懐に、そのうえ「住民組合法人」に現金を徴収させておいて景観事業をお任せって事になるんじゃないか?この分野の素人たる私は、この記事をみて甚だ不安になった。しかも、日本経済新聞そのものの朝刊記事をみる限り、なんか好意的に書いてあるし、都市計画税のことは一行も触れてない。大丈夫なのかなぁ。
 

 ついでにいえばこの法人の取り扱いが『準自治体』ってのも気になる。役人の天下り先にうってつけの組織なんじゃないのか。都市計画税との役割分担や役割交代を明確にしてもらわないと、二重三重に税金ばかりとられ、そのうえ余分な役人の天下り先を抱え込むを増やす結果に終わるような気がしてならない。この指針、役人以外の誰が得をするんだろうか?住民のためとか、街並みのためとか、ふれあいのためとか、そういう体の良いコンセプトオブラートを用いて、これまで役人は本当に役に立たない施設や法人を大量生産してきていたので、素人たる私は今回の「住民組合法人」に強い心配を感じずにはいられなかった。都市計画税が既に存在するにも関わらず、“住民組合法人からの徴収”を上乗せするなんて、組織の複雑化と天下りの激化を招くだけのもののようにみえてならず、どちらかに一本化しないとヘンな事になる&負担と税金の無駄遣いばかりが増えるように思えてならないの。何か、私のような庶民には理解すら出来ない、高所大所な皆さんにしか分からない事情があるのだろうか?はてなやっている人でこの辺りに詳しい方、どうか教えてやってください。
 

 【補足】確かに、『都市計画税』と今回対象になっている街並み整備は、ちょっと担当範囲がズレている可能性はあるかもしれない。都市計画法第4条第15項によれば、都市計画事業とは、

都市計画事業 = 「都市計画施設」の整備に関する事業及び市街地開発事業(都市計画法第4条第15項)

  都市計画施設は、次に掲げる施設である(都市計画法第11条第1項)。  
1   道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
2   公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
3   水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設 等

 という事になるので、街並みの景観整備はここに含まれないと強弁する余地は残されているかもしれない。だとしても、その為に新しい準自治体をぶちあげるというのは、なんというかかんというか・・・。僕にはまだ、理解できていません。
 

[参考:都市計画税とは]http://www.soumu.go.jp/czaisei/czaisei_seido/ichiran01_t.html
[関連]:国土交通省

[関連]:utsukushii-keikan.net -