シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

適応メモ(適応的引きこもりとかその辺)

 
 「うつ病になったほうが適応を維持しやすい状況」において、人間はautomaticにうつ病になるorうつ病と同じ状態を呈し得る、という事実は、古くからそれなりに知られていることだったと思う。例えば「神経症性抑うつ」「退却うつ病」などと表現されるような病態は、適応促進的な(例えばビクトリア朝イギリスの婦人達のヒステリー発作のような)神経症症状と同様、個人の適応を歪めつつも促進させる。神経症圏に含まれる病態の少なからぬ割合は、意志や理性に拠らずに発動される適応促進的な(あるいは疾病利得が期待される、と表現したほうがいいのかな)振る舞いだってことは、多分そっちの人は大体わかってることだと思う。もちろん、その適応促進的な病態の多くは、短期的にしか適応を促進させないにしても。
 

 こうしたautomaticかつ「病気によって適応が妨げられるような装いになる」状態が個人の適応をむしろ促進する(または防備する)ことを踏まえて、もう一度引きこもりや「働いたら負けだと思っている」系ニートを眺めやってみる。退却なり何なりをdysfunctionまたはabnormalとはみないで、functionalでcleverな適応として捉えなおしてみたら?なんだかとても彼らの選択行動が合理的で了解可能なもののようにみえてくる。少なくとも、彼らの選択は短期的には彼ら自身の物的/心的問題を適正化する機能を果たしているようにみえる。彼らの選択と行動を適応的に意義深いものとして捉えなおさなければ、彼らに「処方箋」を出すことは出来ないような気がする。