シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

お手頃価格で、とびきり美味いワインを紹介してみる

 
 Q.とびきり安くて、とびきり美味いワインはどこにありますか。
 A.有名ではない産地、有名ではないメーカーにあります。
 
 たいていの場合、ワインの品質と価格は比例します。「安くておいしいワイン」は存在しますが、「値段のわりに高品質で、素晴らしさを伴ったワイン」はまず存在しません。そのようなワインがあったとしてもじきに知られてしまい、品質にふさわしい価格になってしまうからです。
 
 逆に言うと、まだ有名ではない産地やメーカーで、市場価格よりも高品質なワインが売られていて、すごくお買い得……ということは起こり得ます。有名なワインにたくさんの人が群がっているのを尻目に、お買い得で、とびきり美味しくて高品質なワインを買い抜けするのは最高です。
 
 こんな個人ブログに書いても値上がりなんてしないと信じて、以下、私が思う「有名じゃないおかげで、値段からは考えられないクオリティのワイン」をいくつか挙げてみます。
 
 
1.イタリア・サルディニア島の土着品種、モニカ
 


 
 イタリアには有名なワインや産地がたくさんありますが、サルディニア島は無名なほうで、とりわけ、土着のモニカという品種でつくるワインはほとんど知られていません。
 
 上掲のワインは、メルローやカベルネといった国際的な赤ワインとはちょっと雰囲気が違いますが、果実味がしっかりしているだけでなく、どこか滋味深くて飲み心地が穏やか、そのうえ香りのバリエーションがすごく豊かです。飲み進めるにつれて、香辛料みたいな香りもぶわーっと吹き上がってきて、底力に驚かされます。
 
 これだけのクオリティのワイン、フランスやカリフォルニアの名醸地だと4000円ぐらいするんじゃないでしょうか。でも無名な産地の無名なワインなので2600円そこらで売られています。サルディニアには、ほかにもコスパの良いワインがゴロゴロしているので、デイリーワイン~良い日のワインまで、探し甲斐があると思います。
 
 
2.ルーマニアの、ヨーグルトみたいな赤ワイン
 

 
 ルーマニアも、ワイン産地としてはほとんど知られていません。で、このワインはヨーグルトみたいな風味が強くて、まあその、「正統派な赤ワインの美味さ」ではないのですが、ヨーグルな飲み心地の安ワインとしては非常によくできていて「ルーマニア来てるな」という感じがします。決して高級ワイン路線ではありませんし、ヨーグルトみたいな風味を嫌う人はやめたほうが良いですが、ヨーグルト風味が苦手でないなら、一度は試してみても良いかもしれません。
 
 ルーマニアはワインづくりに適した地中海性気候に恵まれているにも関わらず、旧共産圏だったこともあって無名で安価なままでした。なので、これから来ると思います。
 
  
3.イスラエル、ゴラン高原のワイン
 

 
 今回の一推しは、この、イスラエルはゴラン高原で作られたシャルドネ。
 
 ゴラン高原といえば中東の紛争地帯として知られていますが、実際、このワイナリーはイスラエルとシリアの国境地帯に存在します。ワインの産地としてはまったく無名な部類ではないでしょうか。
 
 ところが!このゴラン高原のメーカーが作るシャルドネが、めっぽう美味くてよくできているのです。蜂蜜、リンゴ、石灰岩、フルーツポンチ、それと塩。とにかく色んな味と香りを、万華鏡のように魅せてくれます。飲み進めるとアンデスメロンのような風味に出会うことも。ワインの色も黄金色に輝いていて美しい。みんなでチョビチョビ飲むのでなく、一人で全部飲んでしまいたくなるワインです。
 
 世の中には、このワインよりも素晴らしいシャルドネなんて幾らでもありますが、2500円以内で、ここまでのクオリティの品はまず無いのではないでしょうか。同価格帯の、同等の美味しさのシャルドネなら無いこともありませんが、このワインには値段相応以上の「品の良さ」と「飽きのこないバリエーション」があります。絶対におかしいですよ、このワイン。
 
 数年後には、この値段では買えなくなっていると思います。値上がりに備えて、私はたくさん買っておきました。ワイン好きな来客があった時に出しても恥ずかしくないワインだと思います。
 
 
4.ラピエールが作る、すごく土臭いボジョレー
 

 
 ボジョレーって聞くと食傷気味の人も多いでしょうが、このラピエールというメーカーが作っているボジョレーは完全に別物です。「大地の匂いがぷんぷんして」「ものすごく滋養に富んで」「元気が出てくる赤ワイン」が欲しいなら、狙い目です。
 
 ボジョレーヌーボーが無個性で誰でも飲めるワインなのに対して、ヌーボーではないボジョレー、特に「クリュ・ボジョレー」の名を冠したワインには強い個性と風味があって、これぞ大地のワイン、これぞアグリカルチャーなワインという感じがします。ボジョレーヌーボーの悪評が広まっているせいか、「クリュ・ボジョレー」に注目して、わざわざ買う人はあまりいません。そして、ボジョレーの誰がガチなワインを作っているのかを知っている人はあまりいないため、このラピエールは不当なほど安い値段がついています。
 
 

お買い得ワインがお買い得なのは今だけ

 
 今回紹介した4つのワインは、単にクオリティに優れているだけでなく、どれも滋養があり、元気を出したい時に選びたいワインでもあります。美味くて滋養のあるワインが市場価格よりも安く出回っていれば、いずれは値上がりし、今の値段では買えなくなってしまうでしょう。
 
 現代ワインの歴史は、値上がりの歴史でもあります。今楽しめるワインは、今のうちに楽しんでしまいましょう。お買い得ワインの一生は短いのです。
 
 ※ワインをネット通販で購入する際は、クール便の使用をお勧めします。
 ※節度を守って呑めない人は買ってはいけません。未成年は論外です。