先日、ある人に「どんなワインをリピートしたいですか?」と訊かれました。
「そりゃ、おいしいワイン、感動するワインに決まってるでしょ」……と答えかけて、言葉に詰まってしまいました。なぜなら、私が実際に贔屓にして、リピートしているワインは特別に感動するようなワインでは無いからです。
そりゃ、感動を秘めた“偉大な”ワインは素晴らしいものです。でも、普通の週末・普通の食卓に必要なのは、もっと寛ぎやすく、お付き合いしやすいワインじゃないでしょうか。だいたい、激しい感動をもたらしそうなワイン*1は値段が高すぎるので、気軽にホイホイ開けるわけにもいきません。
じゃあ、どんなワインを私がリピートしているのか?
確かめがてらに、リストアップしてみます。
【フランスワイン】
1.エチエンヌ・ソゼのベーシック白ワイン
ブルゴーニュ ブラン ラ・トゥフェラ
最初に思い出したのは、フランスはブルゴーニュ地方で素晴らしい白ワインをつくっているエチエンヌ・ソゼのベーシック品。花畑を連想させるスッキリした香りが中心で、蜂蜜フレーバーは控えめ、押しつけがましくありません。それでいて、酸っぱ味がいいんですよ!「綺麗な酸」なんて書くと馬鹿っぽいですが、こいつを飲むと本当に「綺麗な酸」だと感じます。ワインに重厚さや絢爛さを求めるのでなければ、品の良さに満足がいくはずです。
唯一の問題点は価格でしょうか。このワインは、ここ1年〜2年で急に値上がりしてしまいました。前は2500円も出せば確実に買えたのに、今では……。
2.ニコラ・ロシニョールのの赤ワイン
ニコラ・ロシニョール サヴィニ・レ・ボーヌ 2011
ブルゴーニュ地方から、赤ワインをもうひとつ。ニコラ・ロシニョールさん家は、超一流メーカーではないかもしれませんが、お手頃価格の美味い赤ワインをつくってます。ブルゴーニュの赤ワインのなかではフワフワした甘味が強いほうかもしれませんが、気取らず、凄まず、疲れさせないところでバランスがとれてるんじゃないでしょうか。ここのベーシック品はちょっと寂しいこともあるので、リンク先ぐらいの、やや格上の品が私の狙い目です。
※2016年追記:このメーカーのワイン、恐ろしく値上がりしてしまいました。昔は3500円も払えばお買い得なワインが買えたのに、現在は軒並み5000円以上です。シビアだ!
【新世界ワイン】
3.ドメーヌ・シャンドン ブリュット オーストラリア
ドメーヌ・シャンドン ブリュット オーストラリア
このオーストラリア産のスパークリングワインは、ざっとシャンパンの半分の価格で入手できます。大手シャンパンメーカーが手掛けているだけあって、“ちょっといけているシャンパン”に似ていて、軽くてペラペラしたそこいらのスパークリングワインとは比較になりません。素性の分からない激安シャンパンや激安スパークリングを買うぐらいなら、こちらを選んだほうが手堅いでしょう。
ちなみに、同程度の品質でもっと軽いタイプがお望みなら、カルレス・アンドリューかカルペネ・マリボルチあたりが個人的にはお勧めです。
4.カレラ シャルドネ
カレラ セントラルコースト シャルドネ
やめられない白ワインその2。最初に紹介したソゼの白ワインに比べると、蜂蜜っぽいフレーバーがたっぷり漂っていて、呑めばフレッシュな果実味炸裂、ボリュームもしっかりしています。でも、出来の悪いヘビーなワインと違って、このカレラのシャルドネには節制があって、ダレたり疲れたりすることがありません。“適度に快楽的”なんですよ。最初に挙げたソゼのワインは価格高騰中ですが、こちらは穏当な価格が続いているのもありがたいところ。
【イタリアワイン】
フォントディ キアンティクラシコ
トスカーナの有名赤ワインは値段が高めですが、こいつは値段が控えめで確実においしいのでリピートしてます。イタリア中部の赤ワインにありがちな、スミレの花のような香りや軟膏(?)のような香りが中心ですが、ときどき森の切り株みたいな匂いがしたり、“お汁粉”みたいな粉っぽい雰囲気が宿ったり、なかなか変化があります。キアンティ・クラシコなのでもちろん肉料理にはバッチリですが、ちびちびやっても意外と飲み飽きず、軽い食事にも付き合ってくれます。店頭で見かけやすいのも長所。
6.ピエロパン ソアーヴェクラシコ カルヴァリーノ
ピエロパン ソァーヴェ クラシコ(クラッシコ) カルヴァリーノ
やめられない白ワインその3。ボルドーの赤やカリフォルニアの白ワインを“油絵”に喩えるなら、ソアーヴェクラシコは“水彩画”でしょうか。このカルヴァリーノは淡くて軽くて柔らかいワインですが、だからといって薄くてペラペラかといったらそうでもなく、余韻もなかなかしっかりしています*2。自己主張の強いワインに嫌気がさした時には、こういう、ほんのり寄り添ってくるようなワインが恋しくなるんですよ。格下のこちらもお勧め。
7.ルイジ・リゲッティ アマローネ ヴァルポリチェッラクラシコ
アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラシコ [2011] ルイジ・リゲッティ
アマローネは、ヴェネチアに近い地方でつくられている、濃くてきめが細かくてアルコール度数の高い赤ワインですが、値段が高くておいそれとは買えません。でも、この会社のものはお手頃で、十分すぎるほど美味いので助かってます。ジャムを煮詰めたような香りの奥から漢方薬っぽいオリエンタルな風味が漂ってくることもあって、「おいしい」だけでなく「凄い」ワインでもあります。3000〜4000円台で「凄い」ワインを探索する人には候補のひとつではないでしょうか。度数が高くて濃いので、2〜4日かけて飲むか、みんなで飲みましょう。
8.イエルマン ヴィナーエ
[2013] ヴィナーエ / イエルマン
最後はこれ。イタリア北東の端でつくられている、土着の葡萄を使ったワインです。ピーナッツをバターで炒ったような風味を伴っていますが、それでいてワインは軽々としていて爽やか……かと思えばクッキーみたいな甘い香りでたぶらかしてくることもあります。酸味がちょっと弱めの年もありますがバランスが崩れるほどではなく、ピーナッツ&バターを中心に風味がクルクル変わります。残念なのは、ここ数年ジリジリと値上がりしている点でしょうか。
書き並べてみて、「おいしくて押しつけがましく無いワイン」が好きなんだなぁと改めて思いました。ご大層なワインと格闘するのも良いですが、週末に一本開けるなら、これぐらいの価格帯の、おいしさと包容力を兼ね備えたワインが嬉しいですね。
【おことわり】
・ネット通販でワインを注文する時には「クール便」を選びましょう。
・節度を守って呑めない人は買ってはいけません。未成年はもちろんダメ。
・私は「酸味の強い、重くないワインが好み」です。好みが反対の人はご注意を。
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