シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

春〜夏におすすめのイタリアワイン――ハズレなし8社紹介

 
 暖かくなってきましたね。
 
 季節の変わり目はワインの変わり目でもあります。冬料理に似合うような重いワインの季節は終わり、軽めのイタリアワインがおいしい季節を迎えました。
 
 イタリアワインは融通がきくというか、ガーデンパーティーにも、夕焼けを眺めながらの一杯にも、文句を言わずに寄り添ってくれます。ただ、イタリアワインには「ハズレ」が多いという欠点があって、しまりのない白ワイン、渋くて酸っぱいだけの赤ワイン、スパークリングワインなのに泡が沸いてこないワイン……等々がゴロゴロしています。親しみのない人にとって地雷原のようなジャンルかもしれません。
 
 それでも、ちゃんとしたメーカーはちゃんとしたワインをつくってますし、“味と香りで人を組み伏せる”新世界のワインとは違った趣があります。この記事では、お勧めのメーカー8社を紹介してみます。
 
 
 【今回の選抜コンセプト】
 ・ネット通販でほぼ確実に入手できる
 ・狙い目の価格帯は1000〜3000円ぐらい
 ・そのメーカーなら、何を買ってもお値打ち
 ・「イタリアワインならではの美質」を大切にしていて、フランスに媚びてない
 ・前回よりはワインを呑んでいる人向けに
 



 
 1.ピエロパン Pieropan
 
 
 イタリア白ワインでも知名度の高い“ソアーヴェ”。軽くて繊細、柔らかい口当たりと爽やかさが身上のソアーヴェですが、「ただ軽いだけの、水っぽく、箸にも棒にもかからない」ひどい品がたくさん流通しています。それでも「軽いだけではないソアーヴェ」をつくっているメーカーもあって、このピエロパンもそのひとつ。「軽いけれども風味がしっかりしていて」「飲み進めると顔つきが微妙に変化してくる」ソアーヴェが楽しめます。
 
 これからのシーズン、冷やしたソアーヴェを飲みながらのパスタや前菜は幸せです。このメーカーは上級クラスのソアーヴェ・クラシコもつくっていますが、リンク先の通常版でも十分おいしいと思います。
 
 
 2.イエルマン Jermann
 
 
 白ワインづくりの上手いメーカーをもうひとつ。リンク先の「ヴィナーエ」はイタリア土着品種を使ったワインで、ほかの品に比べて“張り”があり、ハーブ・アーモンド・ピーナッツを連想するような風味が特徴。新世界の安ワインにありがちな“押し付けがましい味と香り”で迫ってくるタイプでないお陰か、飽きがくるのも遅いので、夕暮れ時からダラダラ一人飲みするにも向いています。
 
 このイエルマンというメーカーは本当にハズレ知らずというか、どの品を買っても特徴がはっきりしていて、風味豊かで期待を裏切りません。「白ワインの美味しさとは、味や香りの押し売りではない」と教えてくれます。
 
 
 3.カルペネ・マルヴォルティ Carpene Malvolti
 
 
 ハズレの多いイタリアワインのなかでも、スパークリングワインは要注意。数分程度で泡がなくなってしまう品・飲むと締まりがなくなって飽きやすい品がゴロゴロしています。1000〜2000円の予算でスパークリングワインを選ぶ際、わざわざイタリア産を選ぶのは勇気が要ります。
 
 それでも例外はあって、リンク先のワインなら味も香りもしっかりしていて、簡単には飲み飽きません。八つ橋やパンを連想させるような匂いに、果物を連想させる酸味と甘味を伴っていて、それでいて芯が太いというか……かなり濃い料理に合わせても力負けしません。漬物のような発酵食品の香りをほんのり伴っているのも、いいアクセントになっています。お値打ち品。
 
 
 4.メディチ・エルメーテ Medici Ermete
 
 
 春〜夏のイタリアワインで赤の発泡ワイン「ランブルスコ」を挙げない手はないでしょう。このメーカーの甘口ランブルスコは、暑い日にグビグビやるのに向いています。ヨーグルトっぽい風味を伴った甘酸っぱい味わいと、泡の爽快感、しっとりとした口当たりが特徴で、これだけでデザートになります。いっぽう辛口ランブルスコは甘さ控えめ&酸味しっかりタイプ、ミートソースやハンバーグといった肉料理との相性が抜群。価格が控えめなのもありがたいところです。
 
 ランブルスコはメーカーによって品質がまちまちで、人工シロップみたいな味のやつもありますが、このメディチ・エルメーテなら大丈夫。国内の流通も良好です。
 
 
 5.ファルネーゼ Farnese
 
 
 ファルネーゼは、イタリアでも有数の安旨メーカー。果実味たっぷりの赤ワイン「モンテプルチャーノ・ダブルッツォ」が看板商品ですが、1000円程度の白ワインも相当しっかりしています。
 
 これからの季節にお勧めなのは、このメーカーのロゼワイン。普通のロゼワインよりずっと濃い色をしていて、味も濃厚です。――口のなかいっぱいにサクランボを頬張ったような味・柑橘類の皮のような風味・嫌味にならない程度のタンニン。しっかりしたワインでも爽やかさは健在で、ロゼワインの面目躍如。
 
 
 6.フェウディ・ディ・サン・グレゴリオ Feudi di San Gregorio
 
 
 ここからは南イタリア。フェウディ・ディ・サン・グレゴリオの白ワインは、ヘナチョコ白ワインにありがちな弱さ・しまりのなさとは無縁!レモンや青リンゴを連想させる強烈な酸味に、ピーナッツやハッカの風味が仄かによぎることもあって、ちょっと不思議な風味。味と酸味がしっかりしているおかげで、濃厚な料理に合わせてもビクともしません。魚介料理はもちろん、鶏肉料理、豚肉料理あたりまでなら問題なく付き合ってくれます。
 
 このメーカーはさまざまな種類の土着ワインをつくっていますが、ハズレらしいハズレが見当たりません。牛肉料理に合わせるなら、赤ワインのタウラージがお勧め。濃厚です。
 
 
 7.カステッロ・モナチ Castello Monaci
 
 1000円前後の南イタリア産なら、カステッロ・モナチ。赤ワインも白ワインもコストパフォーマンス良好で、料理の融通性が高いワインをたくさんつくってます。風味濃厚系ですが、イタリアワインだからか、適当な食べ合わせ・飲み合わせにもだいたい付き合ってくれます。
 
 このメーカーの看板商品は人懐っこい味の赤ワインです。プリミティーボは甘味と果実味がたっぷりで、赤ワイン慣れしていない人が馴染むための赤ワインとしてもいけるほうかもしれません。焼肉パーティーやバーベキューのお供としても優秀で、暑い日に呑んでも割となんとかなっちゃいます。
 
 
 8.グルフィ Gulfi
 
 
 
 最後はシチリアワインのグルフィ。このメーカーは、舌がもつれそうな名前の上級ワインをいろいろ出していますが、これからの季節に美味いのはベーシックなクラスの赤ワイン。香りはちょっと気取っていますが、柔らかな渋みに果実味たっぷりの飲みやすい赤ワインです。それでいてなんとなく上品で飽きにくい!少し冷やして呑んだほうが美味いかもしれません。
 
 イタリアワインはもともと料理との相性がアバウトですが、このワインの融通性はちょっと普通じゃありません――洋食なら、肉でも魚でもだいたい付き合ってくれます。グルフィはおいしい白ワインもつくっているメーカーなので、夏になると恋しくなります。
 
 

注意事項

 
 ・ワインは熱に弱い飲み物です。これからの季節、暑い車中でワインを放置するとあっという間に駄目になってしまいます。ネット通販で購入する時はクール宅急便を指定し、行楽地に持っていく際にも気をつけてください。
 ・ワインは数パーセントの確率で「だめに」なっていることがあります*1。できるだけ良いワインをできるだけ良い店で買って、あとは神様にお祈りましょう。
 ・夏はワインを冷やしたくなりますが、冷やしすぎても香りが分からなくなってしまいます。ここで紹介したメーカーのワインは、ベーシック品でも香りがしっかりしているので、冷やしすぎない程度に冷やしたほうが楽しい思いができそうです。
 
 春には春らしいワインを、夏には夏らしいワインを楽しみましょう!
 
 [関連]:普段、ワインを飲まない人にお勧めのワイン8種 - シロクマの屑籠
 

*1:いわゆるブショネ。参考:http://www.worldfinewines.com/corktaint.html