シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

オタクコミュニティで一部上場男子を釣った女性の話。

 
 オタク男を落とすのは簡単
 画像で解説する「オタク男を落とす簡単な方法」:ニュー速VIPブログ(`・ω・´)
 
 季節柄、こういう話を見かけると、つい「サークルクラッシャーだ!」と言いたくなるけど、この手の女性が必ずサークラ女かというと、そうとも限らない。
 
 男性に偏ったサークルに一人または少数の女性が入り込んだ結果、女性を巡ってサークル内の人間関係がグチャグチャになってしまう現象は、ネットスラングで「サークルクラッシュ」と呼ばれる。サークルクラッシュは、男性同士の関係がギスギスになってしまうので「男性が被害者で女性が加害者」とみられがちだが、最終的には女性自身がサークルを去らなければならなかったり、ストーカーを惹きつけてしまったり、女性側のデメリットも大きい*1
 
 ところがたまに、サークルクラッシュを起こすでもなく、男にチヤホヤされて有頂天になってしまうでもなく、サークル内で男子の一本釣りをやってのける女性がいたりする。一例としてAさんを挙げてみる*2
 

 男女比が10:1ほどの某オタクコミュニティに、新しいメンバー(Aさん:26歳、女性)が入ってきた。Aさんは特別美人だったわけではなかったけれども、それなりに気遣いが出来て、それなりに男性受けの良さそうなメイクと服装をしていたので、すぐにコミュニティ内の男性達を惹きつけ始めていた。そういう格好をしていても、他の少数女性達も似たり寄ったりだったうえ、もっと若く、もっとチヤホヤされて浮かれている女性もいたりしたので、コミュニティのなかでAさんが悪目立ちするような事態にはなっていなかった。男を漁っているという雰囲気は乏しく、ガードの固い・男性陣と慎重に距離を取りながら同人活動に参加している、といった雰囲気だった。
 
 ところが、それから半年ほど経ったある日、私はAさんがコミュニティの男と付き合っていることを知った。相手は、コミュニティのなかではそれほど目立たないほうの、しかし一部上場の某大企業に勤めている男だった。出会って暫くして、少しずつ仲良くなったという。私は事の進行に気付いていなかった。そして後日、お二人から結婚したという知らせを貰った。

 
 

Aさんのような女性は、婚活市場にはあぶれてこない

 
 この事例を読んで「Aさんみたいな女性が俺のコミュニティにも現れたらなぁ」と思うオタク男性もいるかもしれない。いや実際、絶無というわけではないのだ。しかし、Aさんのような女性が、彼氏無し・配偶者無しの状態のまま何年も放置されているなんてあり得るだろうか?
 
 ここで、Aさんの男女交際戦略について考えてみよう。
 
 彼女は、ゲームや同人活動に全てを捧げるような、オタク道だけにまっしぐらというタイプではなかった。オタクコミュニティでそれなり愉しみつつも、どういう場所で・どういう相手に・どんなメイクや服装で自己アピールすれば、男を選び放題に出来るのか、それなり弁えて振舞っていたと思われる。その目的も、単に男漁りをしてチヤホヤされたいといった浅はかなものではなく、自分の趣味を自分のペースで楽しみながら、面倒な男性にはガードを施しつつ、あわよくばコミュニティ内で最も手堅い男性を水面下で釣るというものだった。
 
 女性に不慣れな男性の多いコミュニティは、ちょっと手を握られただけで勘違いしてしまう男性や、一度惚れるとストーカーのようになってしまう男性も混じっているので、サークルクラッシュのことを抜きにしても、女性にとって必ずしも安全なフィールドとは言い難い。しかし、そういったリスクをきっちり防禦しながら、水面下でAさんは一番手堅そうな男子をロックオンしていたのだろう。より若く、より男性陣にチヤホヤされている女性が存在したのも、おそらくAさんにとって幸いした。面倒くさいだけで利の薄そうな男性は、だいたいそっちに気を取られていたからである。
 
 こうしてみてみると、適切な場所で、適切な物腰で、適切な相手をしっかり選んで交際→結婚に至ったAさんの交際戦略は、非常にクレバーで、無駄が少ないといわざるを得ない。Aさんのような女性は、それほど美人ではなくても遅かれ早かれ“一本釣り”に成功し、婚活市場から早々にフェードアウトするタイプと思われる。これほどしたたかなタイプであれば、婚活サービスを提供する企業に頼らず、自分で自分を売るべきところに売ったほうが、おそらく高値で自分を売り抜けられるとも思われる。
 
 Aさんのようなタイプは、ひょっとしたら、婚活で悩む多くの女性からは「男に媚びている」「盗人猛々しい」的にみられるかもしれない。また、一部の男性からも快く思われないのかもしれない。しかし、男女の需要と供給のバランスの偏ったコミュニティで、そのコミュニティに受け入れられやすいスタイルを提示しながら慎重に異性との出会いを求めるのは、男女交際のストラテジーとしてきわめて理にかなったもので、多くの婚活者にとって見習う価値があると私は思う。少なくとも、出会いがないとぼやきながら何もしないでいる人達よりは、よほど理にかなっている。
 
 ましてや、ライトノベルやゲームにもともと造詣があって、それを一緒に楽しめる男性がいいという女性や、夏と冬のコミケ詣では夫婦一緒で構わないといった“その手の”女性であれば、こうしたストラテジーを躊躇う理由などあるまい*3
 
 もちろん、このストラテジーには、“余計な男を寄せ付けない防禦”や“男に囲まれて有頂天になってしまわない慎重さ”も必要なので、いつも承認欲求に飢えているようなタイプの女性や、脇の甘い女性には全く向いていないことは断っておく。そういう甘っちょろい女性がこれをやろうとしても、男達にほだされているうちにサークルクラッシュするか、ストーカーまがいの男につきまとわれるのが関の山である。しかしそういった問題を回避するだけの意志力を持ち、節制を利かせられる女性なら、一考の余地があると思う。
 
 ……まあ、それだけの戦略性と意志力と節制がある女性なら、ほっといても最適な時期に最適な相手と結婚するような気がしないでもないけれど、Aさんみたいな抜け目のないタイプは実在しますよ、ということで。
 
 [関連]:「ゲーセンクイーン」の成立条件と生態 - シロクマの屑籠
 

*1:こうしたデメリットの火種は、女性側が複数男性からチヤホヤされて有頂天になって自己コントロールが甘くなっている間につくられやすい

*2:※プライバシーおよび各方面への配慮から、Aさんは幾つかの事例をモンタージュしてつくりました

*3:他の趣味領域でも同様なのは言うまでもない