シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

“職業釣り師”になるための10の条件

 
 きわどい文章を書いてアクセス数をかき集めるような行為は、「釣り」と呼ばれる。アクセス数を稼ぐ方法としてはイージーなので、これを金銭やエスタブリッシュメントの足しにしたいと思う人もいるらしい。だが、ネット釣り師をやって職業的に成功する人は少ない。
 
 

職業釣り師の条件

 
 実物を参考にするなら、以下のような能力が職業釣り師には必要と思われる。
 
 1.読みやすい文章が書ける
 アクセス数を稼ぐなら、「140字以上は読みたくない人」「三行以上は我慢できない人」もきっちり釣っておく必要がある。だから職業釣り師を目指すなら、中学生でも読めるようなやさしい文章を、所々ユーモアを交えながら書けるようになっておく必要がある。正確さや精密さは、二の次三の次。
 
 2.釣りタイトル作成能力
 思わずクリックしたくなるような、釣りタイトル作成能力は必須。インターネット上での伝播しやすさを考えると、週刊誌の見出しのような、短く、挑発的で、わかりやすいタイトルを捻り出す必要がある。おそらく、釣りタイトル作成能力は、読みやすい文章を書く能力より高度で稀と思われる。
 
 3.主語は大きく!
 「個人的には…」とか「かくかくしかじかの条件では…」といった範囲を限定するような小利口さは、不特定多数を釣るには向いていない。「弱者は…」「日本は…」といった大きな主語を使ったほうが、不特定多数の自我境界を浸食しやすく、大漁旗をあげやすい。ラーメン屋でも、居酒屋でも、牛丼屋でも、絶えず社会の大問題を考えているような人が職業釣り師に向いている。
 
 4.ちょっと尊大な文体
 「俺はいつも一歩先を知っているぜ」的な、景気の良い文体が望ましい。こうしておけば、文体だけで正誤を判断するような、自分のアタマで考えない人達はみんな味方になってくれる。しかも、尊大な文体で隙間だらけの釣り記事は、アンチの人達を大喜びさせるので、アンチの人達を釣って釣って釣りまくるという意味でも、偉そうな身振りは必須。
 
 5.アンチも“おもてなし”できるキャラクター
 感心しながら読んでくれる読者も、貶しながら読んでくれる読者も、ページビュー数の肥やしという点では等価。だから支持者だけを集める文章でなく、アンチな人達が狂喜しながら非難できるような文章を書けば、支持者/アンチの両方のアクセス数を稼げるぶん、釣りとして優れている。
 
 たぶん最高なのは、「釣り記事を感心しながら読んでくれる人にはオピニオンリーダーのように見え、アンチには悪役プロレスラーのように見え、冷静な人からは道化師のように見える」ようなキャラ立て。
 
 6.炎上に耐えられるメンタリティ
 少ない文字数で、大上段に社会問題を論じて、しかもアンチな人達もおもてなしするとなれば、プチ炎上なんて日常茶飯事……というより、不動明王のように常に火焔をまとっているぐらいでなければ職業釣り師は成立しない。このため、ちょっと批判されただけでナーバスになってしまう人は職業釣り師に向いていない。自分がプチ炎上しているのを眺めながら「はっはっは、今日も燃えとる、燃えとる」と酒の肴に出来るようなメンタリティが職業釣り師に相応しい。
 
 7.炎上コントロール能力
 ただし、アカウントを閉鎖せざるを得ないような致命的な火傷は避けなければならないので、プチ炎上を制御する能力も必要。こんがり焼け死ぬ一歩手前ぐらいの、コントロール可能なぎりぎりのところでプチ炎上を制御しながら耳目を集められる人は、立派な職業釣り師になれると思う。
 
 8.風呂敷を畳んではいけない
 釣り記事を制作する際には、「有意義な結論」とか「有効な処方箋」を提案しようと頑張ってはいけない。そもそも、中学生でも読めるよう配慮した1000〜2000字程度の文章で、マトモな結論を書くのは難しいのだから。それより、ファンやアンチの読後感として「一言言ってやりたい気分」を喚起しっぱなしにしておくほうが耳目を集めやすかろう。
 
 9.どんな時も更新しろ
 職業釣り師は、釣りを職業にするぐらいなのだから、週に五回ぐらいは更新するべきだろう。今日はネタが無いだとか、今日はデートで忙しいとか、そういうのは言い訳にならない。週に二日更新するだけでフゥフゥ息が上がるような人は、職業釣り師に向いていない。入浴中も、スターバックスでコーヒーを飲んでいる時も、バリ島でバカンスを楽しんでいる時も、キーボードを肌身離さず、更新し続けるぐらいの執念が要る。
 
 10.「自分語り」もコンテンツ
 強力な職業釣り師たるもの、「自分語り」も劇的なコンテンツでなければならない。コンテンツにならない「自分語り」はやってはならず、そういうポエムはチラシの裏か2chに書き捨ててしまうべきだ。優れた職業釣り師なら、「自分語り」も「アンチへの反駁」も「スキャンダル」も、すべてが劇的でなければならない。
 
 

職業釣り師の道は冥府魔道

 
 以上をだいたい満たしている人なら職業釣り師の適性が高いと思うので、プチ炎上を身にまとい、職業釣り師になってしまうのも一興だと思う。
 
 けれども、職業釣り師になって自分が幸せになれるような価値観を持っていない人は、職業釣り師を目指してはいけない。職業釣り師なんて、衆目を集めるけれども尊敬されることの無い、ネット上の道化師みたいなものだから、道化が我慢ならない人や、頭が良いと思われたいような人が目指すモンじゃない。…というか普通の神経の持ち主では到底無理だと思うので、本物の職業釣り師の人達はやっぱり凄いなぁと思います。