シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

ガンダムAGE 26話のウルフについて

 
 アセムの成長物語としての『ガンダムAGE』が、ボルテージを上げまくっていてヤバい。以前からそれっぽい兆候がみられたが、25話でつぼみが膨らんで、26話で爆発した。戦闘も中盤の山場っぽい場面を迎えていて、固唾を呑んで眺めずにいられなかった。
 
 ※この文章は、ガンダムAGEの第26話のネタバレを含んでいます。
 



 
 『ガンダムAGE』は男の世代交代を描けるか - シロクマの屑籠
 
 先日、上記リンク先で“ウルフは父親以外の成熟モデルをアセムに示している”、と書いた。Xラウンダーにならなくても、目指すべき“やりかた”はある――ウルフはそのことを身をもって示し、アセムに良いアドバイスと励ましを与えていたのが先週の25話。
 
 で、今日の26話。
 死亡フラグを何重にも踏みまくったウルフは、大方の予想通り、奮戦やるかたなく戦死した。とはいえ無駄死には程遠い。父・フリットと違う道を示し、その違う道を歩いていくであろうアセムを肯定し、年長者として年少者を守る姿勢を存分に示し、ウルフは死んだ。
 
 この先、アセムは困難に出会うたびにウルフのことを思い出し、力づけられるだろう。死んだウルフに報いるためにも、もう腐ってなんていられない。そして大人になった暁には、年少者を守り育てる年長者にならずにいられないだろう。ウルフを手本にするからには、多かれ少なかれ、そういう大人を目指すことになる。
 
 しかも、このタイミングで死んだウルフは神になるしかない。ここでいう神とは、もちろん「アセムにとっての神」という意味だ。
 
 もし、この先ウルフが長生きしていたら、ウルフとて人間だから、色々な欠点がアセムに見えてくるだろうし、歳を取れば“老醜”ということもあるかもしれない。しかしウルフはもう死んでいるので、“死人に口無し”がここではポジティブに働き、いつまでもアセムにとって理想の存在として記憶され続ける。これはもう、アセムという個人のレベルでみれば、神の機能にかなり近い。あるいは“ご先祖さま”というか。
 
 だからここでウルフが死んだということは、アセムの成熟フラグが立った、ということでもある。同僚パイロットのなかにも死亡フラグを立てている者がいるので、たぶん仲間のうちにも死人が出たりして、「生き残った大人の責務」なるものを痛感せずにはいられまい。アセムは思春期のアイデンティティの問題を切り抜けて、立派な大人になるだろう。“才能面では恵まれないけれども心理的な人物配置は恵まれまくったガンダムパイロット”。今まであまり無かったタイプだけに、今後の展開が楽しみ。