読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

「ネットに慣れているなら情報強者」なの?

コミュニケーション

 
 「情報弱者」って言葉、ありますよね。“インターネットなどの情報メディアにアクセスできない人・使いこなせない人は、社会的・経済的に不利”みたいな意味だったかと思います。
 
 では反対に、インターネットなどの情報メディアにアクセスさえ出来ていれば豊富な情報のメリットを享受できる「情報強者」と言って良いのでしょうか?この文章では、そのあたりについて考えてみます。
 
 

「スゴいのは、あなたじゃなくてインターネットじゃないんですか?」

 
 インターネットやモバイル端末などに囲まれている若い世代が、過去の世代よりも沢山のメディア情報にアクセスできるようになったのは事実でしょう。また、ネットユーザーが一日に眺める情報量は相当なものです。でも、「インターネットのヘビーユーザーなら情報強者だ」とか、「若い頃からネットを使っている人なら情報処理能力に優れている」とみなすのは時期尚早だと思うんですよ。
 
 そりゃ、ネットメディアを使えば情報自体は幾らでも手に入ります。でも、それって情報強者っていうよりも「ただたくさん情報に目を通しているだけ」じゃないんでしょうか?それだけなら、「情報強者」というより「ただの情報コレクター」と呼んだほうがいいんじゃないですか?
 
 しかもこの場合、インターネットやモバイル端末といったツールの側の収集能力がスゴいのであって、大量の情報をガブ呑みしている人間の収集能力がスゴいわけではありません。ろくに考えないで長時間ネットを眺めているだけのネットユーザーを「情報強者」と無条件に呼ぶのは、すごくおかしいです。
 
 

ネットの情報に右往左往するような人こそ、情報弱者ではないのですか?

 
 そして現実のインターネットを振り返ってみれば、デマかどうかを確かめずに誤報を広めてまわるネットユーザーや、出所の怪しい情報を根拠に有名人を罵倒するようなネットユーザーがそこらじゅうに存在します。傍から見て、インターネットを使いこなしているというより情報に振り回されているようにしか見えないわけですが、えてしてこういう人が「インターネットを使いこなしている自分は情報強者」だと思いこんでいたりします。
 
 まるで、ナイフを振り回す子どもが「自分は強い」と勘違いしているみたいですね。
 
 インターネットという、玉石混淆な情報が押し寄せるメディアに接しながら、嵐の日の風見鶏みたいにクルクル翻弄されているような人は、情報強者というよりは、なんだか弱者っぽくありませんか?少なくとも情報を自分で管理できていると言うにはあたりません。そういえば、2chの創始者の人*1も、「嘘を嘘であると見抜けない人には(インターネットは)難しい」と言ってましたが、その嘘を嘘と見抜けないような、滝のような情報に翻弄されてしまうような人にとって、インターネットは無条件に情報強者たらしめてくれるツールではないと思います。
 
 

情報強者と言うからには…

 
 では、ネットユーザーで「情報強者」と言うにはどんな条件が揃っていればいいのでしょうか?
 
 私自身、情報に強くないのではっきりしたことは言えませんが、少なくとも以下の条件を揃えていなければ、情報強者とは言えそうにありません。
 
 1.曖昧な情報を取捨選択して確証度やバリューの高い情報に統合する
 インターネットの玉石混淆な情報の坩堝から材料をピックアップし、もっと確証度が高い情報・価値の高い情報にまとめあげることが出来る人は、ただ情報を眺めているだけの人よりも情報強者に近そうです。
 
 2.無駄な情報による消耗を避け、有用な情報源を選別
 インターネットで情報発信しているすべての人達の情報を均一に見ていては、消耗するばかりです。自分にとって有用な情報源をしっかり選び、目を通す情報に優先順位づけできなければ、単位時間あたりの情報収集効率は良くならないでしょう。
 
 3.情報源をネットだけに依存せず、異なるルートでの情報照会
 インターネットで注目を集めている情報が、実は専門家から見ればナンセンスきわまりないものだったり、現場の大勢とは乖離していたりすることが時々あります。ネットの情報のウラを取る手段と姿勢を持っている人は、情報に振り回されるリスクを減らし易いことでしょう。
 
 4.飛びつきたい情報を見ても、すぐに広げない・結論を出さない
 リツイートして広げたいような情報を目にしても、それが本当に信頼に足る情報なのか・仮に信頼に足るとしても自分がブロードキャストに関与するに足りる事案なのか、立ち止まって考えることが出来ない人は、「締まりのないスピーカー」と揶揄されても仕方ないんじゃないでしょうか。
 
 
 加えて、もっと本格的な情報強者と言えるような人は、5.希少度の高い独自の情報源やブレインを有している のかもしれませんが、さしあたり、上記の1.〜4.は必須条件でしょう。これらを満たしているわけでもないのに「インターネットの情報強者」を自認するのは、実態に即していない可能性が高そうです。
 
 現在のネットユーザーのうち、1.〜4.を満たしている人がどれぐらいいるのか?そして自分はどの程度なのか?
 
 そうやって考えると、「情報強者」と言うに相応しい“インターネットの達人”はかなり少ないのではという気がしてきます。ネットジャンキーのなかに、情報が増えれば増えるほど右往左往の度合いがひどくなるような、実はインターネットへの適性に乏しい人が少なからず混じっていることを踏まえると、「ネットユーザーなら情報強者、ネットを使っていないなら情報弱者」という単純な思い込みは、やめたほうがいいんじゃないかなぁと思います。
 
 
 追記:ニコニコ大百科にも、このあたりちゃんと書いてありますね。
 [関連:]情報弱者とは (ジョウホウジャクシャとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
 

*1:西村博之さん