シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

観客席から「政治」を愉しむ“メシウマ”ネットユーザー

 
 
 「2ちゃんねらーは敵に回すと恐ろしいが、味方につけると頼りない。」
 
 けだし、名言である。「2ちゃんねらー」の部分を「残念な日本のインターネット」と書き換えても、たぶんそっくりそのまま通じる。
 
 先日、切込隊長blogで『「ネット世論と実際の支持率予想とのギャップ」と「ニコニコ的民主主義」』という記事が掲載されていた。そこに書かれていた日本のインターネットの特徴をピックアップすると、
 

・政党や政治団体が、ネットユーザーに政治的支持を呼びかける動きが奇妙なほど欠けている
・日常的なネットユーザーが、ダイレクトに政治活動している姿をろくに見かけない
・ネットユーザーは報道や情報に脊髄反射し、二週間も経つと新しい事件に無我夢中になる

 といったものだったと思う。
 
 

日本のネットユーザーは「政治」プレイヤーというよりも、「政治」の観客

 
 結局、この記事から改めて思い起こされるのは、ネットユーザー----少なくともその大半----にとっての「政治」というのは「見世物」や「イベント」の類であって、「自分がコミットするものではない」ということだ。
 
 たとえるなら、ネットユーザーには自分が「政治」のプレイヤーという意識は希薄で、おそらく、観客席から「政治」を愉しむという意識しかない。
 
 例えば「政治」にコミットするからには、投票という手段を通して支持すること・支持の輪を広げていくこと、という要素が欠かせないだろう。もちろん、対立意見を潰すというというのもある。けれども、それだけでは支持の輪は広がらないし、自分が支持する政策・政党を推すということにもならない。にもかかわらず、ネットユーザーが特定政党の支持の輪を広げようと頑張っているような動きは、殆ど目に付かない。
  
 かわりにネットで広く観察されるのは、“「面白い政治ネタやスキャンダル」を見つけたら、とにかく石を投げて楽しもうぜ、というフィーリングだ。「メディアという名の闘技場で戦っている政治プレイヤーに駆け寄って加勢しよう」という姿勢よりも、むしろ「弱っているほうの政治プレイヤーに石を投げて楽しもうぜ」という姿勢に近い。 *1 ときには、敗北した政治プレイヤーの断末魔の呻きに対して、「くたばれ!」「くたばれ!」と連呼しているかのような、なんともいえない風景を目にすることもある。
 
 

票や資金はネットじゃ集まらない。が、「相手の顔面に投げつける為の百円玉」なら集まるかも。

 
 こうしたフィーリングが背景にあるとするなら(というより多分間違いなくある)、集団としてのネットユーザーを相手に「支持票」や「政治資金」を募ったところで、集まりっこないような気がする。金額の多寡以前に、「誰かを応援しよう」「支持しよう」という意志がどこか欠落してみえる。例えば『ニコニコ動画』で特定の政党支持率が高いというのも、あれは本当に積極的に支持しているのか?それよりも、自分が気に入らない連中に石を投げつけて快哉を叫ぶ方便として、そう振舞っているんじゃないかのか?“メシウマ”の為の方便としての、政党支持、みたいな。
 
 だから仮に、ネットユーザー達に、「我が党は、あなたの気にいらない相手に投げつける百円玉を募っています。連中の眉間に見事命中させてみせますから、百円玉を拠出してください。」と宣伝したら、案外たくさんのネットユーザーが、百円玉を渡してくれるんじゃないだろうか。特定の誰かを支持しようという意志は欠いていても、気に入らない奴を痛めつけたいという願望には事欠かない人間なら、特定の政治プレイヤーを応援するための百円玉はもったいなくても、弱そうで気に食わない人間の眉間に投げつける為の百円玉ならワンクリック!というのは大いに有り得るような気がする。政治にコミットする為に百円を躊躇う人でも、弱った猛獣に百円を投げつけて正義漢を気取るためなら喜んで財布を開く----そういうのが、少なからぬネットユーザーのフィーリングなんじゃないだろうか。そして、安全な観客席から百円玉を力いっぱい投げつけながら「世の中の為に正しく振舞う俺達」という気分に耽るのが、彼らの楽しみなんじゃないだろうか。もちろん娯楽として。
 
 そういうアングルから「2ちやんねらーは敵に回すと恐ろしいが、味方につけると頼りない。」という言葉をかみ締めてみよう。支持や連帯のための意志と能力を欠き、弱みをみせた人間に群がって石を投げ痛めつけて満足したい人達で充ちている日本のインターネット----こういうフィーリングの風景を、残念だといいたがる人が出てくるのも、理解できないことではない。とはいえ、観客席から投げつけられた百円玉をドブから拾い上げて一財産築こうという商魂逞しい人や、上手に加工して何らかのプレゼンスに変換しようと頑張っている人、などがいないわけではないようにもみえるけれども。
 

*1:勿論これは、ネットユーザーが支持政党を全く持たない、という意味と必ずしもイコールではない。ネットユーザーのなかにも、“非ネットの”投票所で何某という政治家や政党に投票している人は、それなりにいるのだろう。けれども、そんな彼らでさえも、自分の支持政党を“推す”ためにネットで声をあげることは珍しく、自分が支持しない政党や出来事に“石を投げる”ために声をあげることに専らネットを使っているんだろうな、と推測する余地は残されている。