シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

澪ってかわいい?それともウザい? ----「萌え」の希薄化の功罪

 
 澪ってかわいい?それとも浮いてる? - たまごまごごはん
 
 眺める視点によって、澪は最高にかわいくもみえるし、相当にウザいキャラクターにも見える。
 
 かわいくみえる魅力については、リンク先であらかた書き尽くされていると思う。オタク的・萌え的な視点からみる男性にとって、澪の振る舞いはそれなりにわかりやすく、消費しやすい。黒髪長髪・強気のようで弱気・大げさなジェスチャーetc…。(律に対する)ツンデレ的な成分も相まって、いわゆる「萌えキャラクター」として消費するには格好のキャラクターであり、事実、澪はオタの人気をかき集めているようにみえる。
 
 ただし、単なる萌えキャラ展示会に終わってしまわないのが『けいおん!』で、「萌え」目線で眺めるのではなく、現実女性を想定した目線でキャラクターを眺めやることも可能だ。服装や仕草の細部に至るまで、現実女性を連想させるような配慮が仕掛けられているおかげで、『けいおん!』は一人一人のキャラクターを現実女性を想定した目線で眺めやすい作品に仕上がっている*1。この作品独特の味わいは、このあたりに少なからず由来しているのだろう。
 
 ところが。
 現実女性に即した眺め方で眺めた時、澪がなんだかウザいっぽい女性にみえてこないだろうか。他の3人に比べて、“面倒くささ”“鬱陶しさ”が目についてしまわないか?
 
 黒髪長髪・強気のようで弱気・大げさなジェスチャーといった、「萌え」ならプラス要素として消費される特徴も、現実女性を意識した目線になると、どれもこれも面倒くささを暗示する兆候にみえてくる。コミュニケーションの面倒そうな、意図や空気をとことん読んで抱きかかえなければ付き合いが長続きしないような女性としての澪。実際のところ、ツンデレキャラなんて、現実世界で間近にいたら面倒くさいことこの上ないのでは?例えば律に対する振る舞いだって、「萌え」の目線なら「仲良し」ととれるかもしれないが、現実に即して捉えるなら、「友達の寛容を前提とした依存」であり「抱きかかえてくれる相手がいなければ自己表現がしにくい女性」としてみえてしまう。
 
 友達としての付き合いであれ、異性としての付き合いであれ、リアル女性の延長線上として澪を想像すると、なんだか大変そうな女性像が想像されてしまうのである。
 
 

「萌えのテンプレ」成分が薄まったことの功罪

 
 澪はともかく、全体としての『けいおん!』は、いわゆる「萌えのテンプレ」的な要素が希薄な作品だ。女性スタッフが頑張ったお陰もあってか、現実女性っぽい仕草が確かにフィードバックされていて、「マンネリ萌えアニメ」に陥るリスクを回避している。そのあたり、巧くいっているとは思う。
 
 けれど逆に、「萌えのテンプレ」にあまり忠実ではないがゆえに、良い意味だけでなく悪い意味でも現実女性を想像してしまいやすい作品にも仕上がっているようにみえる。このことが、澪をみた時に、二通りの視点(萌えキャラとしてのかわいらしい見え方と、現実女性の延長としてのウザ女性っぽい見え方)が発生してしまう原因になっているんじゃないかなと思う。
 
 この構図は、「萌えのテンプレ」を徹底させた作品と比べてみれば分かりやすい。
 
 例えば『らき☆すた』のキャラクター達は、「萌えのテンプレ」に忠実に描かれているので、現実女性の延長としてキャラクターをまなざしてしまう“リスク”は殆ど発生しない。もし『らき☆すた』の四人組が実在していたとしたら、http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-328.htmlに描かれているような生臭い想像だって十分に有り得るわけだが、普通に『らき☆すた』をみている限り、そういう生臭い想像力は浮かんでこない。「萌えのテンプレ」から殆どはみ出すことのないキャラクター造形のゆえに、現実の女子高生を想起する余地が殆ど無いからだ。
 
 ところが『けいおん!』は「萌えのテンプレ」に忠実ではないので、『らき☆すた』のようにはいかない。キャラクターに対して現実女性を想定してしまう余地が結構残っているので、「萌えのテンプレ」にキャラクターを落とし込むだけでなく、“もし、澪が現実女性だったら?”という想像が湧いてくることは十分ありえる----現実女性とのコミュニケーションが一切無い人間でもない限り。
 
 「萌えのテンプレ」成分が薄まったことによって、量産型萌えアニメに堕するリスクを回避したけれども、キャラクターの向こう側に現実女性っぽい面倒くささやウザさをも想像しやすくなった『けいおん!』。この“功罪”を、あなたはどう捉えるだろうか。
 
 

尤も…

 
 尤も、現実女性との接点がもともと無い人であれば、「現実女性」を意識しようにも意識しようが無いので、澪がウザい可能性に気付かず済ませられるのかもしれない。「テンプレとはちょっと違った萌えキャラ」ぐらいの感覚で澪というキャラクターを楽しむことができそうではある。そして現に、澪が頭一つ抜けた形で人気を集めているのをみると、たぶん、そういうことなんだろう。
 
 

*1:少なくとも、ライトノベルやエロゲーを原作とした大半のアニメに比べてそうであろう。