シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

“アニメのオフ会に着ていく服が無い”

 
 
Elastic: 東京カワイイTVのアニメ・マンガファッション特集
http://sucoyaca.jugem.jp/?eid=141
 
 
 オシャレアイテムとしての“オタク”。
 
 アニメやゲームがファッションや音楽に引用され、“メインカルチャー”“オシャレ”としてパッケージングされる風景は、ここ2〜3年でいよいよ加速してきたように感じている。ファッション雑誌に「アキバ、サイコ〜!」というキャッチフレーズが(曲がりなりにも)登場したということは、既に、アニメやゲームがメインカルチャーとして普及期まで到達していることを象徴していると思う。
 
 さて、ここまでオタクカルチャーがメジャー化・オシャレ化してくれば、さまざまな人達が秋葉原や同人即売会に足を運ぶようになる----というか、既にそうなっている。アニメやゲーム関連のオフ会に関しても同様で、かつて、アニメ系・ゲーム系のオフ会といえば、人生の大半をオタク趣味に捧げたような、コミュニケーション志向に乏しいオタクが大半を占めていたわけだけど、21世紀に入ってからのオタク系オフ会は、“オシャレなオタク”“コミュニケーション志向なオタク”が急増しているようにみえる*1。控えめに言っても、コミュニケーションに対する意識は間違いなく強くなっている。カップルでオタク系イベントに参加するような風景も、今ではそう珍しくない。
 
 
 こうしたオタクカルチャーの“オシャレ化”“普及化”に、当惑しているオタク達も少なくないのではないか。
 
 かつてのオタク界隈というのは、界隈全体がバッシングされていたかわりに、いったん中に入ってしまえば、会話の巧みさやオシャレ度を問われる心配の少ない、コミュニケーション不全な男女にとっての安全地帯として機能していた*2。オタク仲間とゲームやアニメの話題で繋がっている限りは、非モテだろうが、ブサメンだろうが、そういうのは大した問題にはならなかったわけである。そして、日常生活のなかではコミュニケーションに苦労しているオタクでさえも、秋葉原やコミックマーケットやオフ会に出てくれば、ある種の安心感のうちに楽しいひとときを過ごせたし*3、コミックマーケットなどのオタク系イベントは、彼らにとって数少ない“ハレの場”だったわけでもある。
 
 しかし、コミュニケーション志向なオタクが増加し、オシャレの一環としてアニメやゲームを消費する人の割合が増えてくれば、そうもいかなくなってくる。
 
「なに、このキモい人?」
「こいつKY」
「あの人はオシャレなオタク。この人はオシャレじゃないオタク。」
 
 昔なら、コミュニケーション能力が不問に付された場面でも、シビアに比較されるような状況が増えてきている。うっかりマシンガントークなどやろうものなら、ドン引きされてしまうだろう。極端な場合、容姿や話術の可否だけが問われ、アニメの知識やゲームの腕前が無視される状況さえ起こりかねない。
 
 “オタク系のオフ会だから、見てくれなんて気にしなくて良い”というかつての常識は通用しなくなりつつあり、“アニメのオフ会に着ていく服がない”というような状況が生じ始めているようにみえる。
 
 古強者なオタクの人ならとっくに気づいているだろうが、既に秋葉原は“コミュニケーション不全なオタクが安心して闊歩できる街”ではない。コミュニケーション能力が吟味され、オシャレか否かがまなざされる、ごく普通の街へと変貌しつつある。こうした変化が、オタク系ショップや、コミックマーケットや、オタク系オフ会といった場所にも、静かに、しかし着実に押し寄せてきているではないだろうか。コミュニケーション能力に難のある人達にとっての安全地帯・あるいは唯一の“ハレの場”は、急速に狭くなってきているのではないか。
 
 

コミュニケーション不全なオタクは、インターネットに閉じ込められる!?

 
「だったらニコニコ動画に行けばいいじゃん」
「2chかネトゲでコミュニケーションすればぁ?」
 
 そういう声が聞こえてきそうだ。
 
 確かに、インターネット上のコミュニケーションであれば、着ていく服のことなんて考えなくていいし、よっぽど痛い人でなければ、そこそこ上手くコミュニケート出来るだろう。自分の好きな動画や好きなスレッドで、お祭り騒ぎに興じればいい。
 
 だけど、いくらオンラインで繋がっても、オフラインには出てこれない。
 
 かつてのオタク系オフ会ならともかく、オシャレでコミュニケーション志向な参加者が増えつつある最近のオフ会に、コミュニケーションが不得手なオタクが参加する心理的なハードルは、高くなるばかりだ。一方で、ニコニコ動画や2chのように、インターネット上のコミュニケーションは、ますます利便性を高めていく。オタクな話題で繋がる際の、オフラインとオンラインのしんどさのギャップは広がる一途のようにみえる。
 
 まさに、“アニメのオフ会に着ていく服が無い”である。
 
 ファッション雑誌にオタクカルチャーが紹介されるようになったということは、もう、こうした事態が目と鼻の先まで迫っていることを示唆しているのではないか。ファッションブランドやファッションメディアに採用されればされるほど、オタクカルチャーの“オシャレ化”“メジャー化”は加速されていく。かつて、コミュニケーショが苦手な人達の安全地帯であった面影が、2010年代のオタク界隈にどれぐらい残っているだろうか?そして、コミュニケーションの苦手な(従来型の)オタク達がオフライン上でもくつろげるような“居場所”が、どの程度残されるだろうか?気になるところである。
 
 

*1:このような傾向は、若い世代において特に目立つ

*2:勿論、あまりにも逸脱度が高すぎれば、“つまはじき”という事態が当時無かったわけではないにせよ

*3:古参のオタクの人は、2000年頃の秋葉原の中央通りの雰囲気を思い出してみて欲しい