読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

「ゲーセンクイーン」の成立条件と生態

オタク趣味 男女 執着

 

ゲーセンクイーンって知ってるかい?はてなキーワードにも登録されてるね。「サークルクラッシャー」のほうが詳しく乗っているから知らん人は参照してくれ。今はどうか知らんが、昔はそういったことがしばしば起きていた。KOFがまだ98とかの頃の話だぜ。いい時代だったって?そいつぁ気が合うね。

http://anond.hatelabo.jp/20081025003044

 
 いえいえ、「ゲーセンクイーン」は今でもしっかり存在していますよ。
 いわゆる「ゲーセンクイーン」「姫」といった女性達は、津々浦々のゲームスポットで男達に囲まれながら、夢見るような笑顔を浮かべています。
 
 

「ゲーセンクイーン」の成立条件と、それに音楽ゲームが果たした役割

 
 「ゲーセンクイーン」は、現在進行形で今も起こっている現象で、大都市のゲーセンでも、地方都市のゲーセンでもみかけます。ゲーセンクイーンを高頻度でみかけるのは、
 

  • 1.ある程度の集客力のあるゲーセン
  • 2.ゲームにまつわるコミュニティが自然発生しているようなゲーセン
  • 3.女性客でも遊べるようなアメニティや雰囲気が整備されているゲーセン
  • 4.女性客と男性客が、接点を持てるようなゲームが置かれているゲーセン
  • 5.ゲーセン以外に女性との接点を持つ機会を欠いている男性がたむろしたゲーセン

 です。
 
 
 1.2.3.は、1980〜90年代前半の殺伐としたゲーセンには望むべくもありませんでした*1。ですが、UFOキャッチャーやプリクラブームが起こり、ゲーセンのアミューズメント施設化が進行した90年代以降は、ゲーセンで女性客をみかけることも珍しくなくなりました。
 
 しかし、問題は4.です。いくらUFOキャッチャーやプリクラが流行っても、女性客同士やカップルでイチャついているばかりでは、男性客層との“出会い”なんて生まれっこありません。UFOキャッチャーブーム・プリクラブーム全盛期の頃のゲーセンでは、女子高生やカップルがたむろするフロアと旧来からのゲームファンがたむろするフロアで客層が断絶し、接点を持たないどころか、嫌悪しあう風景すらみられたものです。
 
 この状況がはっきりと変化したのは、たぶん、90年代末だと思います。
 
 90年代末に入ると、『ビートマニア』『ダンスダンスレボリューション』などの音楽ゲームが人気を博するようになり、音楽ゲームを接点とした形で、女性プレイヤーと多数の男性プレイヤーが“出会う”場が生まれたのです。
 
 もちろん、音楽ゲームブーム以前の時代にも、キャラクターに惹かれて対戦格闘ゲームを遊ぶ女性や、格闘ゲーム大会に顔を出す女性もいなかったわけではありませんし、ゲーセンクイーンに相当する女性が絶無だったわけでもありません。ですが、そういった女性はまだまだ数が少なかったと記憶しています。よしんばいたとしても、ひとつのゲームの話題を男女で共有することも簡単ではありませんでした。例えば、同じ対戦格闘ゲームが好きと言っても、男性がゲーム性に着眼し、女性はキャラクターのカップリングに着眼、といった具合に、トピックスがズレやすかったからです*2
 
 ところが音楽ゲームの場合、女性プレイヤーの数も多ければ技量も高く、「ゲームの話題で女性とコミュニケートする」ことがかなり現実的になってきました。『ポップンミュージック』『ビートマニア2DX』などには技量の高い女性プレイヤーも珍しくなく、しかもブームが去った後も、これらのゲームは廃れることなく定着しました。女性プレイヤーと男性プレイヤーが同じゲームで遊び、なおかつトピックスを共有しやすい状況が持続するというのは、ゲーセンではこれが初めてだったのではないでしょうか*3
 
 5.に該当するような女っ気の無い男性がゲーセンに多かったことも手伝って、『ポップン』や『ビーマニ』は、男性の視線と賞賛を集めたい「ゲーセンクイーン」と、女性とコミュニケートしたくてウズウズしている男性との共犯関係がきわめて成立しやすい場所となりました。全ての音楽ゲームファンがそうだというわけではありませんが、少なくとも、そういった共犯関係が、音楽ゲーム周辺で高頻度に観察されるようになったのは事実です。
 
 

「ゲーセンクイーン」ならではの特徴

 
 「男性にチヤホヤされたい少数の女性が、男女比の極端なコミュニティのなかで姫のように振舞う」という現象は、ゲーセンクイーン固有のものではなく、オタク界隈/サブカル界隈のコミュニティでもしばしば認めるものです。ネットスラングでいう“サークルクラッシャー”が、まさにそれでしょう。ですが、ゲーセンクイーンにはゲーセンならではの特徴もみられ、他の領域のサークルクラッシャーとはそれなりに違った生態が観察されます。
 
 

  • 免疫のある男性が少なく、ゲーセンクイーン対策が継承されていない。

 ゲーセンのコミュニティは自然発生的で、文化系サークルの“部長”に相当するような中心的人物を欠いていますし、グループとしてのまとまりも緩やかです。そのうえ「サークルクラシャー対策」を先輩から後輩へと継承するような伝統もありません。このため、男性側がこの手の女性に対する免疫を事前に身につけるのはかなり困難です。*4
 

  • オタク系女性とは限らない

 ゲーセンで音楽ゲームに興味を抱く女性のなかには、ヤンキー系に近いスタイルの女性も結構混じっています。もちろん、弁明の余地なきオタク系女性も多いですが、文化系サークル・オタク系サークルでみかけるサークルクラッシャー女性に比べれば、ヤンキー系寄りの女性に遭遇しやすいと言えるでしょう。なので、「アニメやゲームの話題なら絶対安全牌」というわけにはいかないようです。なお、音楽ゲームではなく格闘ゲームなどのキャラクターに入れ込んでいる、旧来からの(そして少数派の)ゲーセンクイーンは、今でもその殆どがオタク系女性です。
 

  • ジャージズボン女子も結構みかける

 ヤンキー系に近い風習、というのもあってか、はたまたゲーセンという場のせいなのか、ジャージズボンのような気楽な格好のゲーセンクイーンというのも案外みかけたりします。サークルクラッシャーに多いタイプというと、やたらとヒラヒラフワフワした服装や、“アジアンテイスト”なアクセサリをジャラジャラさせた服装が連想されますが、ゲーセンクイーンの場合、ハローキティのジャージズボンを愛用しているような女性がゲーセンノートに落書きしていたりします。こうした風景は、純粋培養の文化系サークルではあまりみかけません。
 
 

まとめ

 
 このように、特に音楽ゲーム周辺にみられる現在のゲーセンクイーンには、ゲーセンという場所ならではの特徴がみられ、伝統的な文化系・オタク系サークル内のサークルクラッシャーとはちょっと違ったテイストを呈していると見受けられます。
 
 また、ゲーセンクイーンに対する免疫的知識が男性側の間であまり継承されていないせいか、「チヤホヤされる姫と、姫に愛想良く振る舞いながら水面下で牽制しあう男達」という図式が割とナチュラルに展開されている事もあったりして、男女間の執着のメカニズムが非常に透けて見える*5コミュニティも少なくありません。ゲーセンクイーンにまつわる悲喜劇の物語は、まだまだ終幕には遠いようです。
  
 個人的には、若いうちに「ゲーセンクイーン」や「サークルクラッシャー」的な現象から学び取れるものを学び取っておくのは有意義なことだと思いますし、案外、巻き込まれてみなければ到達できない境地というのもあるような気がします。当事者にとっては一喜一憂の日々ではあっても、火傷しない範囲のレクリエーションとなる限りは、案外、人生を彩るエピソードのひとつになるのかもしれません。
 
 
 
 [関連]:サークルクラッシャーとは - はてなキーワード
 [関連]:誰の執着がサークルをクラッシュさせるのか - シロクマの屑籠
 

*1:単に治安が悪かったというだけでなく、例えばトイレが男女別々になっていないゲーセンが多かったなど、女性のお客さんが快適に過ごす為の基本的なアメニティが整備されていなかったことを付記しておきます。

*2:尤も、「姫さえいれば話題なんて関係ないね!」という男性や、「なんでもいいから、わらわに侍るがよい」という女性もいないことはなかったですが。

*3:一時的なものなら『マジカルドロップ』『サイキックフォース』のようなものもあったのですが、あくまで一時的なものでした

*4:尤も、そのようなサークルクラッシャー対策の知識を継承しているようなサークルに所属している男性も、警句を継承することで本当に免疫を獲得するというよりは、サークルクラッシャーに巻き込まれている自分自身をさも客観的にみているかのように思い込むべく警句を代々継承しているようなふしがあって、免疫的知識が継承されればサークルクラッシャーに巻き込まれないというわけではありません

*5:それこそ、「もうみたくない、おなかいっぱい」と思っていても目に飛び込んでくるような