シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

シューティングメーカーは、もっと上手にお金を巻き上げるべき

 
 STGゲーマーは、現在の「危機的状況」をもっと認識すべきだよ。 : ゲームセンターに明日はあるの? - livedoor Blog
 
 リンク先の記事でも指摘されているが、現在のゲーセンのシューティングゲームは、収益モデルが破綻していると思う。初心者への敷居が下がってきたとはいえ、中〜上級者が100円で筐体を何十分も占拠してしまうのが当たり前になってしまっている状況では、ゲーセン経営者がシューティングゲームを敬遠するのも無理もない。
 
 
 では、何がボトルネックになっているのか?
 やはり、一番の問題は、一台のシューティング筐体が100円で何十分も占拠されてしまうことだろう。自販機のジュースが100円で買えた頃から今に至るまで、ゲーセンのゲームは100円で1プレイが相場となっている。シューティングゲームは、最低でも一周に15分はかかる。このため、人気ゲームの場合でも一時間に稼げるのはせいぜい数百円程度だ。そして厄介なことに、シューターが熱心にやりこめばやりこむほど、プレイ時間は長くなり、時間あたりの収入*1は下がってしまう。このため、現行のアーケードシューティングゲームは、どれほど人気を集めようとも、どれほど優れたゲームをリリースしようとも、高い収益性をキープすることが難しい。
 
 なら、難易度をあげまくって、誰もが5分で死ぬゲームにすれば売れるのか?
 答えはもちろんNoだ。いまどき、理不尽な難度のゲーム*2にすすんで金を払うやつなんていないし、そうでなくても、難しすぎるジャンルは衰退していくのが定めだ。一方、『ポップンミュージック』や『ストリートファイター2』は、難易度が低くても大収益のきっかけとなったわけだし、『バーチャファイター2』や『麻雀格闘倶楽部』のように、時間あたりのコストが高いゲームであっても、お金を払うに値する楽しみにはプレイヤーはきちんとお金を払う。消費者は、気持ちよくお金を払わせてくれる娯楽に対してはけっこう寛大だったりするものだ。
 
 財布の紐を緩めるような強烈な面白さと、その面白さをきっちりと収益に変換できるような収益モデルが組み合わさったゲームこそが、プレイヤーだけでなく、ゲーセン経営者とゲームメーカーをもハッピーにしてくれるゲームと言えるのだろうし、これまでゲーセンを支えてきたのも、そういったモデルに合致したゲーム達だった筈だ。
 
 

シューターの財布から金を巻き上げる為の、まともな収益モデルが存在しない

 
 この点、昨今のシューティングゲームは明らかにズレている。
 確かに、ゲームの質は良くなっているし、ビギナーに対する配慮も大幅に改善している*3。80〜90年代にしばしばあったような、不可解な難度のゲームや劣化コピーゲームも一掃された。それなのに、収益モデルは昔のままなのである。どれだけ素晴らしいゲーム内容でも、一人のプレイヤーに筐体を数十分間占拠されて、たった100円である。今時、100円で数十分も遊ばせてくれるなどという*4、お人好しなサービスがどこにあるだろうか?
 
 ゲーセンをみている限り、シューティングゲームのプレイヤー層が「特別に貧乏で」「貧乏ゆえにシューティングゲームを選んでいる」という風にはみえないし、むしろ本当にシューティングゲームをやりこむ最上級者は、ゲーム基盤を購入してでもゲームを研究するぐらいには、金払いが良い。にも関わらず、ゲーセンのシューティングゲームは、そういった金払いの良さそうな、シューティングジャンキーどもから大量の100円玉を巻き上げるためのまともな収益モデルを確立していないのだ。現在のシューティングゲームは、1時間1000円払ってでもやりたいというジャンキーからも、1時間100円しか払いたくないというケチからも、同じ収益しかあげられない。はっきり言って、これはもの凄く勿体ないことだと思う。はたして、『怒首領蜂大復活』の二周目が楽しいと言うぐらいにやり込んでいるプレイヤーのなかに、「50分間を100円で遊べないなら俺はシューティングを辞める」というドケチプレイヤーが何パーセント存在しているだろうか?殆どいないんじゃないだろうか?さらに言うなら、「100円で50分間、最高のサービスをよこせ」などという、どのみちpayするあてのない客の機嫌など、無視したって構わないのではないだろうか?
 
 

かけがえのない楽しみには、消費者は気持ちよく金を払う

 
 よくできたアーケードシューティングゲームは、強いスリルと快感をもたらすものだし、昨今のシューティングゲームには出来映えの良いものが多い。安い基盤を使ったマイナージャンルとはいえ、作り込みのしっかりしたコンテンツを供給し続け、そのうえ、プレイする為なら骨惜しみしない熱心なファンを抱えた分野でもある*5。にも関わらず、100円ぽっちりで何十分も筐体を貸し出すという、旧泰然とした、お人好しな商売を続けてしまって、経済的に困窮しているのだ。お人好しというか、商売が下手というか、どうにも勿体ない話だと思う。
 
 一般に、[優れたコンテンツ]と[熱心なファン]という組み合わせには、なにがしかのビジネスチャンスが潜んでいると思う。なぜなら、“熱心なファン”というものは、その熱心さに比例して金払いも良いからだ。シューティングゲームが好きでたまらない人達もまた、優れたコンテンツには相応のお金を払ってくれるような気がするし、これから顧客として重視すべきはそのようなプレイヤーだとも思う。そのような、潜在的にお金を払ってくれそうな熱心なシューターが、思う存分、気持ちよく100円玉をつぎ込めるような収益モデルを用意できれば、ゲーセンシューティングゲームを巡る厳しい状況はマシになるのではないだろうか。逆に、そういった収益モデルをいつまで経っても創出出来ないなら、どんなに良いゲームを仕上げようとも、市場淘汰のなかに消えていくことは免れまい。
 
 
 …ということで、CAVEをはじめとするシューティングメーカーさんは、気持ちよい弾幕を研究するだけでなく、気持ちよい収益モデルについてもアイデアを練って欲しいと思う。お願いですから、もっと巧みにシューターから金を巻き上げてください。ちょっとだけでいいので、商売上手になってくださいよ。>シューティングメーカーさん
 
 (→例えばこんな風に:『怒首領蜂大復活』の2周目は別料金でも構わないのでは? - シロクマの屑籠)
 
 

*1:いわゆるインカム

*2:例えば『P-47 ACES』や『雷龍』のような

*3:参考:http://d.hatena.ne.jp/p_shirokuma/20081130/p1

*4:それも、アドレナリンをドバドバ垂れ流すような数十分を遊ばせてくれる!

*5:さらに言うなら、昔はシューティングゲームを遊んでいたという、潜在的な予備消費者を抱えた分野でもある