シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

「叩きやすさ」「萌えやすさ」と職業・属性について

 
 「風俗嬢に説教たれる人々が痛い理由」と「売春を合法化し、厚生労働省売春管理局を作る案」 - 分裂勘違い君劇場
 
 流石にid:fromdusktildawnさんの記事だけあって、様々な角度から考えずにはいられない、興味深い文章だった。今回も、あれこれと議論が沸き起こるんだろうな、と思う。
 
 

職業や属性がはっきりしていれば、「叩きやすく」「萌えやすい」

 
 それはさておき、今回の『分裂勘違い君劇場』をみて個人的に一番考えさせられたのは、「発言者の職業や属性が分かっていると、非常に叩きやすいのでは?」ということだった。「これだから風俗嬢は」という一文は、「これだから教師は」「これだから期間工は」といったフレーズに非常に置換しやすい。「これだから○○は」の○○の所には、なにも職業に限らず、出身地や性別や世代を代入することも出来るだろう。何か口を滑らせて拙いことを喋った個人が、とっかかりになるような属性を持っている場合には、非常にブッ叩きやすいし、そういった光景は2ちゃんねるのニュー速+辺りでは頻繁に見かける光景だ。
 
 一方で、職業や属性がはっきりしていると、叩きやすくなるだけではなく、正反対に「萌えやすくなる」という部分もあるかもしれない。例えば萌えキャラとしての“藤川優里議員”を考える - シロクマの屑籠の藤川議員などは、議員という職業属性がなかったら、“ただの美人”で終わった筈なのに、議員という属性が表に立っているお陰で、「萌えキャラとしてキャラが立っている」。ちょっと昔、女子高生が渋谷で社長をやっているというニュースをTVで見たことがあったが、あのニュースの女子高生だって「女子高生なのに社長!」だからこそ、人々の関心を非常に惹きやすくなっていたと思う。
 
 この「叩きやすさ」と「萌えやすさ」の両方を統合して表現するなら、「プラスであれマイナスであれ、職業や属性がはっきりしていると、第三者にとって言及が容易になり、関心のフォーカスにもなりやすい」となるだろうか。
 
 この、最も極端で分かりやすい例は、おそらく、タレント女医の西川史子さんの振る舞いとキャラ立てだろう。あの人のメディア上の振る舞いをみていると僕達は、「さすが医師だなぁ」とか「医師のくせに」という感想や関心を抱きやすい。プラスかマイナスかはともかく、西川史子さんの振る舞いをみていると、賞賛にせよ文句にせよ、何か言いたくなるようなウズウズした感じがするわけだが*1、そのように僕らを関心づけるうえで、彼女が公表している“医師という職業属性”の役割は非常に大きいと言わざるをえない。良い発言をして「萌え」の対象になるにしても、悪い噂でブッ叩かれるにしても、「キャラ」が立っているからこそ、西川先生は視聴者の耳目と想像力をかきたててやまないんだと僕は想像する。
 
 

ただし、幾つかの条件によって「叩きやすさ」「萌えやすさ」は違ってくる。

 
 ただし、「叩く」にしても、「萌える」にしても、ただ職業や属性が明らかであればいいというものではない。以下の条件によって、かなり左右されるとは思う。
 

  • 顕名か匿名か。匿名で、(2chで言う)IDやトリップさえついていない場合には、その発言者を「叩く」「萌える」のはかなり困難。逆に、実名やハンドルネームが明らかになっているなら、「叩く」「萌える」は比較的容易。2chでも、「○○だけど質問ある?」系スレッドのように、コテハン・トリップ・IDが固定されて個人同定が可能であれば、「叩き」や「萌え」の対象として関心のフォーカスになれないことはない。
  • 対象人物の発言や振る舞いが閲覧されている度合い。一番「叩きやすく」「萌えやすい」のは、職業や属性が明らかになっている他は、2、3の発言や振る舞いしか明らかになっていない場合。対象人物についての情報や文脈が分かりすぎると、かえって「叩きにくく」「萌えにくく」なってしまう。例えば女子高生のことを日頃よく知っている人は、女子高生を「叩く」のも「萌える」のも難しい。または、女性保育士(保母さん)と日頃一緒に仕事をしている人も女性保育士を過剰に「叩く」「萌える」ことが難しくなってしまう。その点、「警官」「ナース」「キャバクラ嬢」などは、間近に知り合いがいるわけでもない限り、非常に「萌えやすく」「叩きやすい」と言える。
  • だから、匿名でしかも職業や属性を一切明かしていない人で、個人のアイデンティファイする名前もIDも持っていない発言者は、個人として「叩き」のターゲットになる心配は無い。その代わり、その人が「萌え」の対象となることも、個人として関心を集めることも無く*2、この問題とは割と無関係。

 
 
 ともあれ、「叩きやすさ」「萌えやすさ」は、どんな職業・属性が示されているのかに非常に大きな影響を受ける点には、注意があってもいいと思う。世の中には、西川史子さんのようにそれを武器として使いこなす人もいる一方で、自分を縛る足枷になってしまって身動きがとれなくなっている人も多いように見受けられる。なかには、「○○のくせに」「これだから××は」と一身にバッシングを集め、週刊誌を騒がせたり、ブログを炎上させたり、2chの祭りを引き起こす人もいる。
 
 いまや、誰もがblogやmixiを通して発言し、動画や音声すら投稿する時代。だとすれば、これは多くのインターネットユーザーにとって決して他人事ではない、と思う。
 
 

*1:もちろん西川さんは、そのことを知悉したうえで自分のキャラを制御しているんだと思う。

*2:補足:ただし、一回きりの発言に関心が集まる、ということは勿論あり得る。