シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

事件予告を巡っての“ピンポンダッシュゲーム”の厄介さ

 
 
 エクストリーム・犯罪予告*1 - 最終防衛ライン3
 lastlineさんの言うとおり、事件予告のレトリック周りは確かにゲームっぽさを帯びてきていると感じる。喩えるなら、小学生のピンポンダッシュや、イタズラ110番通報的な、幼稚で性質の悪いゲーム、ということになるが。
 
 
 ここ最近、2chを主な舞台として、殺人予告のようにみえるかみえないかのギリギリのレトリックを巡っての、書き込み者と警察側の微妙な攻防(!?)が続いている。例えば、
 

 調べでは、杉田容疑者は6月29日午後6時40分ごろ、インターネットの掲示板 「2ちゃんねる」に、「明日午前11時に丹後小学校で小女子を焼き殺す」「おいしく いただいちゃいます」と書き込み、同県三郷市の同校の業務を妨害した疑い。
 (以上、ニュー速からの引用)

 のようなレトリックだ。
 
 この手の「きわどいレトリック」の書き込みの過半数は、ピンポンダッシュの擬似勇者や、愉快犯的によるものなのだろう。到底、認められるものではない。しかし、このギリギリレトリックのピンポンダッシュには、「代わり映えのしない日常」には含まれていない刺激的なエッセンスがが含まれているのも事実で、
 
 
 ・「ピンポンダッシュしている俺って勇者」的な気分
 ・「もしかしたら有名になるかも?!」的な、漠然としたattentionへの期待
 ・言論の自由を巡って官憲と戦う(またはシャカイの抑圧と戦う)俺的なヒロイズム
 
 
 などなど、目立ちたいけど目立てない気分の人達を誘う“動機”には事欠かない。普段から注視されることに飢えきった個人が、上の幾つかの“動機”にあてられると、案外、ディスプレイ越しのピンポンダッシュに飛び出すこともあるのかもしれない。とりわけ、一人きりで自棄酒でも呑みながら2ちゃんねるをやっている状況などでは、抑制も利きにくく、かと言って誰かが止めてくれるわけでもない。後で「ムシャクシャしていたからやった。」とか言いだしそうである。
 
 長くネットをやっている人なら薄々感じるだろうが、この手のattentionやヒロイズムに動機づけられた類の書き込みは、書き込みがattentionを集めやすければ集めやすいほど、エスカレートしやすく、頻度も高くなりやすい。なので、“勇者”や“俳優希望”のスリルやヒロイズムを払拭する根本的な方法は、それらが着眼されない状況・attentionを集めない状況をつくりだすこと、と言える。幾らピンポンボタンを押しても誰も出てこないドアでは彼らのゲームは成立しないし、舞台とスポットライトが無ければヒロイズムや勇者気分は得られない。
 
 しかし、今の状況のなかで警察が神経質にならざるを得ないのも致し方の無いことで、スルーしたほうが愉快犯の類を惹きつけないと分かっていても、万が一、ということを考えると、警察はきっちり対応せざるを得ない。書き込みを「どうせピンポンダッシュでしょ」とスルーした挙句、翌日大事件となって報道されたとあっては、警察としては色々と面目が立たない*1
 
 しかも、仮にピンポンダッシュゲームが成立しないようにするべく、ぎりぎりレトリックの書き込みをスルーするように工夫したとしても、正真正銘のの事件予告をなくすこと自体は出来ない。先日の事件でも、容疑者はアクセス数の物凄く少ない辺境中の辺境のBBSで、独りボソボソと予告して実行に移っていた。このことから分かるとおり、どれほどattentionの濃度が低くしたところで、本物の事件予告をなくせるわけではない。そして本物の事件に関しては、予告があったということが事後的に判明すれば、いやおうなくattentionのスポットライトが集中してしまうときている。そういう意味でも、「スルー」は本物の予告者に対しては期待薄と言えるし、むしろ予告を見逃すという意味では、防犯のチャンスが一つ失われるのは勿体無い。結局、本物の事件に備えるという観点からみると、多少attentionを惹きつけやすかろうとも厳密にあたっていかざるを得ない。
 
 実際に対応している警察の方のなかにも、多分、現在の取り締まりや“世間の空気”がピンポンダッシュ勇者を助長している可能性に気付いている人はいると思う。けれども、本物の事件予告に備えるという意味では、ピンポンダッシュも含め厳格にことにあたらざるを得ない。細かな取り締まりや対応がそれ自体attentionを提供し、ピンポンダッシュ勇者気分をマッチポンプする、という面倒さを抱えつつも、日夜取り組んでおられる警察のなかの人は、本当に大変だろうなと思う。心から“お疲れ様です”。
 
 

いつまで続くの?

 結局、きわどいレトリックが出尽くすか、あまりにも日常茶飯事になるまで続くのかなぁ、このピンポンダッシュ。
 

*1:尤も、それだけではない理由もあって、張り切っちゃって言質を拾ってはとっつかまえている、という線もあったりするのかもしれないが、その辺り、疑心暗鬼を深めるときりがないので、ここではこれ以上考えない。