シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

「脱非コミュかつ脱無残な優越感ゲーム」?

 
2007-12-03 - matakimika@d.hatena
 
 id:matakimikaさんへの私信として。
 
 仰るとおり、「脱オタ」という修辞はもはや名と実が一致しない語彙になっているといわざるを得ません。ファッションの面においても明確なアキバ系というものが既にわからなくなりつつある昨今、「脱オタクファッション」という語彙すら、間もなく名と実の一致しない語彙になっていくのではないかと想像されます。尤も、どこまでがオタクでどこまでがオタクでない人なのか、どこまでがオタクコンテンツでどこからが非オタクコンテンツなのかの境界線も曖昧な状況を思うにつけても、もう「オタク」という単語を特定の嗜好集団に割り当てること自体も次第に困難になっているのかもしれませんが。
 
 私が考え続けてきた「脱オタ」というのは、勿論オタク趣味をやめることでもなければ薄いオタクから濃いオタクに進化することも意味していませんでした。あくまで、1.オタク趣味の狭い井戸の外側でのコミュニケーション可能性を確保していくこと 2.優越感ゲームに雁字搦めに縛られたメンタリティを軽減させて、色々と生きやすくしていこうということ を念頭に置いています。狭い世界で優越感ゲームに耽るほか無いような適応のあり方のオタクが、より汎用性の高い適応なり、より心的ホメオスタシスを維持しやすい適応なりに移行する為の方法論の模索こそが、私がずっと探し続けているものだったわけですから、敢えてこれら1.2.を並べて語彙にするなら、「脱非コミュかつ脱無残な優越感ゲーム」という単語になってしまうでしょう。
 
 これらの要件を満たせるなら、別にオタク趣味に耽溺していようがいまいが、薄いオタだろうが濃いオタだろうが、好きなようにやればいいんじゃないか、と思っています。ご指摘の通り、コミュニケーション実行可能性をある程度確保していてしかも優越感ゲームにもあまり束縛されていないオタク趣味愛好家というのは案外と存在するものです。彼らのような人種はそれでいいんだと思います。この文脈上では、オタク趣味の有無やサブカル趣味の有無というのは瑣末なことでしかなく、コミュニケーション実行機能の可否と、狭い分野でアレな優越感ゲームに終始しなければならないメンタリティの有無だけに私は焦点をあてていくのが適当でしょう*1
 
 なお、matakimikaさんが主張している「薄オタは屑、濃いオタはsuperiorとする人達」っては、プロのポジショントークならともかく、立場に立脚しない状況下でそういう言葉を漏らすのだとすれば、なかなか楽しい人達ですね。いえ、私もそういう人は沢山知っているわけですが、そういった人達こそがコンテンツを用いた優越感ゲームと自己承認の形式に束縛されている代表例だと私は認識しております。ジャンルの井戸のなかの縦にひょろひょろと細長いピラミッドのなかでヒエラルキーを規定せずにはいられない人達(勿論、自分は上のほうというわけです)のなかには、まさに「脱非コミュかつ脱無残な優越感ゲーム」を提案したくなる人達が混じっているかもしれませんね。
 
 

語呂が悪すぎ

 しかし、「脱非コミュかつ脱無残な優越感ゲーム」という表現では語呂が悪すぎます。こんな語呂をいつまでも使っているわけにはいかないなぁ、と思ってしまいます。「脱無残」というのもいいかなぁとは思ったのですが、脱非コミュという要件を満たさずに脱無残というのは(例えば本田透の護身陥穽完成などという信仰にすがるのでもない限り)なかなか安定した境地に至りにくいなと思っています。いや、際立った才能を身につけている人や、伝統芸能の洞穴に閉じこもって工芸品を作りまくる立場の人は別ですけれど。しかしそんな人は滅多にあるものではなく、消費記号の差異をもって優越感ゲームに終始する程度の人においては、脱非コミュという要件をある程度緩和してなければ遅かれ早かれやっぱり無残な境地に至るのではないかと私は考えています。「脱無残な優越感ゲーム」と、「脱非コミュ」を別個の命題とする見方もあるでしょうけど、私はこの二つは根っこで深くリンクしていると思っているので、これら二つを統合した命題として取り扱える語彙を探しているわけです。
 
 「脱オタ」に替わる「脱非コミュかつ脱無残な優越感ゲーム」に相当するもっと語呂の良い言葉の模索。どんな語彙を用いれば都合良いのか?私自身のなかでは、既にある程度答えが固まりつつあるのですが、他の人に適切に伝えることが出来るほどには未だ考えが練れていません。しかし、来年以降のネトラジなり文章なりを通して、そこら辺を出来るだけ表現していって、皆さんのご意見を頂ければと思っています。
 

*1:ただし。痛い優越感ゲームに向いているジャンルやコンテンツというのはあちこちにあるわけで、痛い子を大量に擁しているという特定のコンテンツやジャンルには格別の興味を抱いているのは言うまでもありません。そして、オタク界隈やサブカル界隈といった狭いセグメントが、そういった営為に多用されていることは、今一度確認しておきましょう