シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

「旦那様、ヒロイズムをお求めになりませんか?」

 
 「どうか、哀れなわたくしを助けてください。旦那様の白い手をさしのべてください。無力で愚かなわたくしに、お慈悲を、お恵みを、ご助言を頂きたいのです。」
 
 「はい。はい。…はい!ありがとうございました。本当にありがとうございました。こんなに戴いて宜しいのでしょうか?お礼も要らないというのですか?旦那様の心の優しさと暖かさに、わたくしもようやく前を向いて歩けるような気がしました。“不幸を脱出する10の方法”、ゆめゆめ忘れぬよう心がけて参ります。適切なアドバイスとご支援を胸に、これからも生きていきたいと思います。」
 
 
 
 「旦那様がたは、今夜もずいぶんとご満悦の様子でした。いい仕事が出来ました。いい商品が売れました。皆様、枕を高くして休まれることでしょう。「適切なアドバイスをした自分」「感謝される自分」「奉仕する自分」の確認をお手伝いするのがわたくしの仕事です。頭の良さがご自慢の旦那様、心の美しさがご自慢の旦那様、気の利く性格がご自慢の旦那様が、ご自身の素晴らしさを安心して確かめられるように、丹誠込めて、旦那様がたが望むのままのお姿を映す魔法の鏡としてご奉公させて頂いとるわけです。
 
 「…いえいえ、わたくしも慈善事業でやってるんじゃございません。旦那様がたの上気したお顔、輝く瞳、少し高めの声のトーン、「良い質問ですね」という台詞回し…どれもこれもうっとりするような自意識のコレクションなのでございます。こうして、ささやかなヒロイズムを旦那様がたに差し上げる見返りとして、わたくしめは自意識の欠片を頂戴しておる次第なのです。\Dドライブに収蔵させて頂きました旦那様がたの無邪気な自意識の閃きを、一杯やりながら就寝前に眺めるのが、卑しいわたくしめの唯一の楽しみなのですよ。
 
 「…そこの旦那様も、今宵、快眠快便のために、ささやかなヒロイズムをお求めになりませんか?旦那様の美徳や美点のご確認を、不肖ながらわたくしめがお手伝い申し上げましょう。旦那様の甘美な自意識をほんの少し分けてくださるなら、御代は結構です。如何でしょうか?