シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

ネット空間の情報収集の効率化に関して

 
 あらゆるテキスト・エントリ・発言の一回一回を公平かつきちんとした態度で抄読するというスタンスは、決まった数のテキストしかない状況・決まった数の執筆者しかいない環境で情報収集をするのならば、新しい発見や好ましいアドバイスを拾い上げるのに向いている。
 
 しかし、現代のメディア空間、特にインターネット空間における情報収集においては、情報収集の試行回数も対象サンプル数も全く決まっておらず、殆ど無限の選択肢が広がっている。駄目だと思ったテキストは、無理して最後まで読まなくても、同じ内容をもっと平易に書いているテキストや、もっと役に立ちやすいテキストがどこかにあるかもしれないのだ。このような状況下においては、公平な態度・真摯な抄読にコストを投入するよりも、読みにくいものやイデオロギー的対立はうっちゃって最初から分かりやすいテキストを捜し求めたほうが、単位時間あたりに*1より多くの知見を吸収することが出来る。ひとつひとつのテキストを真摯に咀嚼するよりも、「わかりやすさ」「効率性」を優先させたスクリーニングやフィルタリングを設けたほうが、人ひとりが持てる限られた時間のなかでより多くの知識やメソッドを吸収することが出来るだろう、そして実際、多くの人がそのように行動している。
 
 もちろんこの方法を用いると、楽に情報を配信してくれるサイト(GIGAZINEなど)におんぶにだっこの状態で、やがて自分で新規に情報収集することを忘れてしまうという弊害が有り得るかもしれない。また「まとめサイト脳」「wikipedia脳」になってしまいやすいという弊害もあるかもしれない。その辺りの弊害を出来るだけ回避しながら、ネット情報収集の効率性を向上させるようなフィルタリング・スクリーニングを設けるにはどうすれば良いのか。
 
 新規の発言者や新規のスレッドに対してフィルタリングを設けることは、新規可能性を大幅に低下させるのであまり推奨されないが、既に何度も見知った発言者やスレッドで、且つ生産性に乏しい場合は、閲覧も含めたコミュニケーション試行回数を低下させてしまうのが望ましく、場合によってはフェードアウトしてコミュニケーションを断絶してしまったほうが良い場合もある。コミュニケーションの放棄なり縮小なりは、もちろん可能性の放棄でもあるわけだが、それを行うことによって他の発言者やスレッドを開拓する余力を得るのならば十分にpayする。例えばはてなアンテナなどで、視ても視てもしようがないサイトは巡回からいったん外すのが望ましいのだろう。また、「まとめサイト脳」「wikipedia脳」に関しては、自分が特別の関心を寄せているジャンルだけでも他の情報源を大量に持つことによって弊害を軽減化することが出来るような気がする。何らかのジャンルにおいてwikipediaを遥かに凌駕する知見を蓄積させ、色々な人と議論したことのある人ならば、wikipediaやまとめサイトが含みがちな限界や偏りにも気づくことが出来よう。全部の分野でwikipediaやまとめサイトを越える知識を持つことは不可能にせよ、何らかの分野で凌駕する知見を持っている人ならば、「wikipediaに書いてあることはこれぐらいだろうな」という“あたり”をつけることは出来る筈だ。また同時に、ネット上の情報収集だけ仕入る情報というのが(どの分野において)どれぐらいのレベルのものなのか、を知ることも出来る。
 
 ただ、このやり方でも超えられない弊害が一つだけある。それは、「選好やイデオロギー的相違を含んだ情報を一切受け付けない脳」になってしまう可能性である。無限の情報と情報発信者がいる状況では、読みにくさや好みでどんどんテキストをスクリーニング足切りしたほうが、単位時間あたりの情報収集は効率性を高めやすかろう。だが、このやり方をすると、入手する情報がどうしても個人的選好とイデオロギー的親和性の高いものとなってしまいやすく、好みじゃないテキスト・イデオロギー的対立を含むものを摂取しないような偏食情報収集になってしまうリスクが残ってしまう。読みやすさと情報収集効率の追求は、スピードの速い現代において重要な手法だとは思うが、それが嵩じて偏食情報収集家になってしまうと大きなしっぺ返しが待っているだろう。放って置いても情報を選好させるのが人間。効率性を追求させると、この情報選好をも大きくしてしまう副作用を含みがちなことに留意しない人は、極端な考えの持ち主になってしまうかもしれない*2。公正な視野、などというものは望むべくもないとしても、せいぜい、自分自身の選好や偏食情報収集の傾向にはチェックの目を光らせておくのが適当だろう。
 

 ネットは今日も情報の洪水で、情報選択の効率性とスクリーニングは、個々人にとって常に重要な問題の筈だ。そのなかで、馬鹿正直に一次情報をひたすら追いかけ続ける・2chのスレッドを隅々まで読むというのも疲れる話だし、かと言ってwikipedia脳・まとめサイト脳という陥穽も回避したい。ジャンルによっては、ネット上の情報だけでは大した知識とはならないジャンルもあるだろう。こうした状況のなか、最小の労力で最大の情報収集(とwikipedia脳や情報偏食の回避)を選びきる能力が、常に問われている。
 

*1:単位コミュニケーションあたりに、ではない点に注意

*2:スレッドで隔てられた2chなどは、その格好の舞台となろう