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シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

「公衆の面前でひとり食べている人間」

短文

 本を読んでてみつけた趣深かったフレーズを抜粋して保存。
 
 
 当地(ニューヨーク)では驚くべき数の人々が、ひとりで考え、ひとりで歌い、街頭でひとりで食べ、独り言をいっている。しかしながら彼らは、お互いに一緒になりはしない。それどころか、彼らはお互いに逃げあっているのであり、彼らの類似ははっきりとしていない。
 
 しかしある種の孤独は他に類をみないものである。公衆の面前で、掘ぎわで、自動車のボンネットの上で、鉄柵に沿ってひとり食事の用意をする人間の孤独。こうしたことはここでは至るところで見受けられるが、それはこの上なく痛ましい、貧困よりも悲惨な光景であり、公衆の面前でひとり食べている人間は物乞いをする人間よりも悲惨である。人間あるいは動物の掟にこれほど反したことはない。動物は、食物を分かちあったり、あるいは奪い合ったりすることを常に名誉としているからである。ひとりで食べている者は死んでいる(だが、酒を飲む者はそうではない。なぜなのであろうか)。
 
                           ボードリヤール『アメリカ』