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シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

ナマクラ策士の騙しあい

短文

 
 「相手を巧く踊らせた」と確信している状況というのは、まだまだ危ない。もしかしたら「相手を巧く踊らせた」と思い込ませる策に、こちらが乗せられている可能性が多分に否定できないからだ。これに対して、「『相手を巧く踊らせた』と思い込ませるように、自分が踊った」場合は大分安心できる。そこらのナマクラ策士というものは、相手を巧く踊らせることには夢中になってばかりで、それがタランテラの踊りであっても気づかないものだからだ。一見、唯々諾々と相手の注文通りに踊ったようにみせかけて、相手の期待する舞踊とは異なる成分をこっそり注入する一連の作業は、相手が策に溺れるタイプであればあるほど、美しく決まるだろう。
 
 そんなわけで、ナマクラ策士を嵌める為に偽りのダンスを踊っている限りにおいて、その瞬間、なおも相手の術中にあるということはかなり珍しい。偽りのダンスの踊り手をさらに嵌めようと思った者は、「『《相手を巧く踊らせた》と思い込ませるように、自分が偽りのダンスを踊りきった』と思い込ませるように策を仕掛ける」か、(策に溺れて有頂天にならずに)せめて偽りのダンスを看破しなければならない。しかし、そこまで眼の良い策士はそう滅多にいるものではないし、選りすぐりの策士でもそう滅多に出来るものではない。
 
 
 [補足]:偽りのダンスは十分に愚かな人には通じないことがある。だが偽りのダンスが通じない程度まで十分に愚かな人には、通常の策でたいていは事足りる。