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シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

考えない人・メッセンジャー・学者さんの三つ巴

コミュニケーション

 
 理解、または洗脳合戦の領域をみていると、1.考えない人2.メッセンジャー3.学者さん が三つ巴のジャンケンのような関係を形成している様子がしばしばみられる。とりわけ、1.〜3.までの程度差が大きくなりがちな、複雑な学問・専門性の高い学問・難解な学問 においてはこの構図を形成しやすい。
 
 1.考えない人2.メッセンジャー3.学者さんは、それぞれのレイヤーでそれぞれの理解を構築する。彼らは勿論自分達が見知った出来事を(程度の差こそあれ)良いものとしているわけだが、異なるレイヤー間で議論を行うときには相性問題を起こしやすい。以下に、それをちょっと書く。
 
 1.考えない人
 白か黒かでなければ把握が困難な人達であり、自分の理解している範囲を「限定」したり、分からないことに分からないという「留保」を準備したりすることが困難な人達。赤ワインも納豆も体に良くて、ゲームは脳がダメになるから禁止、オタクは理解不能だから悪い奴、という素朴かつ明瞭な世界に住んでいる。この人達は、ちょっと頭が働く2.な立場をとる人達によって容易に洗脳されやすく、煽動されやすく、論破もされやすい*1。その一方で、3.な立場をとる人達には「わかんねーよ!」「あんた、結局何が言いたいのよ」とスルーしてしまうことが多く、慎重且つ丁寧な物言いを心がける専門家になど見向きもしない。洗脳合戦においては、考えない人はメッセンジャーには容易にコントロールされるが、学者さんの学者さん的発言には見向きもしない。
 
 2.メッセンジャー
 メッセンジャー、という表現にしたが、正確には「ある程度の理解が可能で、自分の理解の程度も心得ていて、なおかつ他人にソレを伝達するのが上手な人」と表現すべきだろうか。この人達は、赤ワインも度が過ぎれば体を壊すことを知っているし、白ワインだって体に良いことがあることも知っている。ゲームが知的発達に良い影響も悪い影響も有していることだって心得ているし、オタクにも色んな人がいることも分かっている。分かったうえでメッセンジャーな人達は、自分の知っていることを他人に上手に、説得力をもって伝達することを得意とする。このメッセンジャーに該当する人は、考えない人を説得することも、洗脳することも、コントロールすることにも上手だ。しかし本物の学者さんと学問的な土俵で勝負すると太刀打ちすることが出来ないし、自分が太刀打ち出来ないこともよく心得ている*2
 
 3.学者さん
 当該分野について最高峰の学識・経験を持った人達。よく考え、よく観察し、自分が知っていること・自分が知らないことについて慎重な姿勢をとることが出来る。赤ワインがどのように体内で働くのかを詳しく知り、ゲームで遊んでいる時の子どもの脳がどの辺りで発火しているのかを直接データ取りする立場にあるのが彼らだ。学問にリソースを振り分けすぎているが故にコミュニケーション能力や世間知がちょっと弱い人も多く、それ故に(メッセンジャーに比べると)考えない人を“丸め込む”のは上手ではない。また、学問的正確さを犠牲にした、四捨五入された情報をマスに垂れ流すことに良心が疼く人も少なくなく、故に考えない人達との相性は悪い。その代わり、いい加減な知識と経験に留まりながらメガホンを手にするメッセンジャーの問題点を鋭く指摘できるのは学者さん達だけである。メッセンジャーは、しばしばある程度までは理解が出来ているので、そのようなメッセンジャーに対しては学者さんは釘を刺すことが出来る。
 
 
 このように、理解のレイヤーごとに「得意な洗脳対象」「苦手な洗脳対象」がジャンケンのように存在している。そして、1.2.3.のいずれか単独の傾向にある人は、苦手な相手に遭遇すると対応に苦慮したり、下手をすれば変なことを刷り込まれてしまう恐れがあるだろう。1.能力を求められず数も膨大な考えない人・2.政治的に強力になりやすいメッセンジャー・3.学問的正確さを持った学者さんは、それぞれ得意不得意を持っている。
 
 なお、世の中には1.2.3.の特性の複数を持った強い人もいるようだ。例えば2.メッセンジャーと3.学者さんの両方の特性を持つ人は、高い学識と話し上手の両方を生かした活動を行うことが出来るだろう。「納豆は身体に良いか悪いかの二分法」な人達の取り扱いに長け、しかも十分に学問的なディスカッションにも追随できる人というのはとても心強く、とても恐ろしい。
 

追記:はてブより抜粋

2007年06月21日 D_Amon コミュニケーション 世の中には2と3を兼ねていると自任する1な人もいるから恐ろしいです。

 あー、いますねいますよね。でもこの類の1.も、メッセンジャーにかかれば簡単にコロリなので何とか取り扱えるっぽいです。かなり最悪なのは1.2.を兼ねていて自称3.の人。政治力があるけれども白黒思考で、しかも自分は学者だと自認する輩は、「誤謬を平然と広げるけどやっつけるのは大変」な相手なので困ってしまいます。そしてそういう人もまた世の中には結構いたりするんですよね。
 

*1:やり方を間違えると逆ギレすることもあるけれど

*2:ただし、直接対決から逃げ続けながら、考えない人を詐欺的に洗脳することは可能である点に注意!