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シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

オタク文化の辺境に咲いた『むちむちポーク』の花

 
むちむちポーク!-福多塚町公式サイト
 
 遅まきながら、『むちむちポーク』をプレイしはじめた。シューティングゲームとしての出来映えも良い感じで、キャラや世界観も微妙なところを突いてきたと思う。『むちむちポーク』を創ったひとは凄いと思う。
 

  • まず最初に、(ライジング勲章モノ系)シューティングゲームとしての完成度はどうやら一定水準以上らしい。装いはネタゲーでも中身はかなりのもの。クリアラーさんやスコアラーさんが楽しめそうな造りになっている、とみた。媚び萌え路線の一方で大味な造りだった鋳薔薇と比べると、前半面の難度や勲章システムなどの面で初級者に馴染みやすく、「理不尽な死」が少なくなった。まだまだ敵弾が見づらいことも多いけれど、“死ぬべくして死んだ”という感触が多いのは好感が持てる(6/4注:致命的なバグが二周目関連である模様。スコアラーに見限られる可能性が出てきた)。
  • どうやらCAVEの制作陣は気付いているようだ。「もう、ただ萌えなキャラを描けば良いというものではない」ということに
  • CAVE社内だけでも『鋳薔薇シリーズ』『エスプガルーダシリーズ』『虫姫さまシリーズ』があるに、社外を見渡せば『エグゼリカ』『東方』『式神の城』といった状況のなか、今更スタンダードな美少女萌えキャラで押そうったってそうはいくまい。しかし『むちむちポーク』は敢えて外してきた。“むっちり”というスタイルを提案してきた。これはインパクトのある選択だと思う。本作品を何度もプレイすれば、“緊迫感のあるむっちりさ加減”の魅力を再発見することが出来るかもしれない。
  • しかしただむっちりであれば良いというものではない。むっちり感にプレイヤーやギャラリーが魅力を感じ、尚かつゲーム世界では当然であるかような舞台仕掛けが必要だ。舞台仕掛けとは、世界観だったりゲームVGM(BGM)だったり小道具だったりする。とりわけ、トコトコ歩く豚さんやパラシュートの豚さん達は秀逸すぎる。「敵を破壊して出てくる豚さんがトコトコ歩き回る」という特徴は、アイテム回収というゲーム性そのものに影響を与えつつも、豚尽くしの世界をかわいく仕上げることに貢献している。太鼓の効いたBGMも耳によく馴染んで、むっちりキャラ達の『むちむちポーク的世界観』が見事に立ち上がってくる。壮観である。
  • 『むちむちポーク的世界観』の完成度がハイレベルであることは既に述べた。それとは別に、『むちむちポーク的世界観』の狙い所の絶妙さにも着眼しなければならない。『むちむちポーク』の世界観は間口が広い。ゲーセンにたむろする女の子にはかわいらしいイメージを、萌えオタ的素養を持つ人には“風変わりなテイスト”を、そして「媚びた美少女ゲーなんてやってられるか!ケッ!」という硬派なシューター達には「これは萌えではありません!」という免罪符とタイムボカン的雰囲気を、プレゼントする。もし『むちむちポーク的世界観』が、これらニッチの異なる多くのお客さんの目を惹く可能性を考慮してつくられたのだとしたら、なかなか巧妙と言うほかない。アーケードゲームという商品は必ずしも“マニアにさえ評価されれば良い”というわけではない。もし、『むちむちポーク的世界観』が少しでも広い範囲のお客さんの人目を惹きやすいよう工夫された結果としてああいう世界観に仕上がったんだとするなら、高く評価されていいんじゃないかと。

 

シューティング界隈という辺境に咲いたむちむちの花。

 アーケードでシューティングゲームをリリースする会社は、まず第一条件としてシューティングゲームとして十分な仕上がりであるよう宿命づけられる。そのせいか、最近のシューティングゲームはシューティングゲームとしての一定の手続きをきっちりと踏まえたモノが増えてききた(そしてそれらは概ね何系統かの系統樹に則った、伝統的な範囲で進化している)。それとは対照的に、シューティングゲームは世界観やキャラ造形の次元に関する限りは比較的自由度の高い状態が維持されている。もともと、アーケードゲームにおいてはスタンダード世界観やキャラ造形からズレまくったゲームが多々リリースされてきた*1。これは、“ゲーム完成度を担保として固定客*2をしっかり捕まえつつも+αを惹きつけ得る可能性”を模索することをアーケードゲームが宿命づけられているが故なのだろうか。完成度次第で遊ぶ遊ばないが決まってくる固定客に対しては安定したクオリティを提供しつつ、そうでない+αのお客さん達に対しては見た目や世界観でガツンとやってやろうという戦略。この戦略の帰結として『むちむちポーク』や『エグゼリカ』や『カラス』のようなSTGが生み出され、固定客以外の+αの獲得が常に模索されているのではないだろうか。
 
 この、固定客以外の+αへの訴求努力を「一般人に媚びている」「嘆かわしい」と言うシューターもいるかもしれないけれど、訴求の結果として『むちむちポーク』のようなユニークかつ完成度の高い世界観が立ち上がってくるというのなら、私は歓迎さえしたいと思う。アーケードシューティング界隈は、オタク世界のなかでも狭い辺境の地に位置しているので、固定客だけを相手に商売するわけにはいかない状況を背負っている。だが、その状況がユニーク且つ完成度の高い世界観が模索される状況を生み出しているとするなら、それは喜ばしいことなのかもしれない*3。完成度の高いゲーム性を担保としつつ、これからも様々な可能性が模索されるとするなら、ありがたいことなのだが。

 ライジング系は処女作『魔法大作戦』以来、世界観とゲーム性のクオリティを両立させた作品を幾つもリリースしてきた。これからも楽しみだし、たっぷりと百円玉をつぎ込もうと思う。『むちむちポーク』が今後シューティング史のなかにどのように位置づけられるのかは定かではないけれど、この“完成度の高い冒険”が最良の形で報われることを一プレイヤーとして祈ろう。
 

*1:例えばCAVEのシューティング部門の先祖・東亜プランなどもまさにそうだったし、ガンフロンティアなどを出していた頃のタイトーもブチきれていた。

*2:シューティングオタ

*3:一方、エロゲー界隈やラノベ界隈や同人界隈も、ユニーク且つ完成度の高い世界観が生み出される余地を持っている。しかしシューティング界隈とは幾らか事情が異なるような気がする。どちらにせよ、面白いものが沢山生まれてくるのは嬉しいことだ。