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シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

脱オタ症例9(要約)

 
症例9(汎適所属)
 
 本家のほうで、九例目の脱オタ症例を紹介しています。
 
 Iさんは、脱オタ症例としては比較的典型的な、“中流家庭・学業優秀・学業以外はダメ・小学校高学年でスクールカースト低位”といった条件を取り揃えた状態で思春期を迎え、案の定鬱屈した中学生時代を過ごしています。しかし、Iさんは例えば症例2(汎適所属)のような状況に追い込まれることなく高校生活を送ります。これは、自由な校風の保たれた地方の共学進学校に入ったことが大きく影響しているかもしれません。
 
 また、優越感なり劣等感なりといった思春期心性に縛られる度合いが少なかったこともIさんの苦しみを軽減させるうえで重要だったと考えられます。ファッション面での見直しを進めた大学生時代も含め、Iさんは執着するところ少ない日々を過ごしています。この事は、自意識に足を引っ張られて転覆したり、いきなり分不相応な願望を抱いて転覆したりするリスクを回避し、冷静に適応を追求するうえで有利だったに違い在りません。脱オタ者の多くは、自意識の問題やら劣等感の問題やらに関して“慌てる乞食はもらいが少ない”という格言を忘れがちですが、Iさんにおいてはそのような問題は無かったと言えるでしょう。
 
 ただし、この執着の薄さは良いことづくめなのか、私はわからずにいます。娑婆を渡っていくには、執着や慾が強いほうが重宝する場面というのも少なくありません。執着の薄さなり慾の薄さなりといったIさん独特の気質は、Iさんの適応をどのように形作っていくのでしょうか?慾にまみれた私には簡単に想像できませんが、とにかく、特有の適応を形作っていくに違いない、とは推測しておきましょう。