シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

オタク趣味以外にアイデンティティを補強する手段を持たない人達(要約)

 
 オタク趣味以外にアイデンティティを補強する手段を持たない人達(汎適所属)
 
 こちらのテキストでは、1970年後半以降生まれのオタク達が、いかにアイデンティティ確保・自己実現がオタク趣味以外に成し遂げられにくい状況にあるのかと、その原因について記述を試みた。
 
 この、おたくというよりオタクという呼び名の似合うオタク達がオタク趣味以外に自己実現を感じ取る手段が無い要因としては、
 
 1.思春期において他の自己実現達成の手段を選択できなかった(例えば女子との恋愛など)。少なくとも、オタク趣味界隈以外に人並みの活躍が出来る趣味・人並みに楽しめる趣味が無かった。
 2.職業や仕事から得られるアイデンティティが、修学期間の延長などによって延期されまくっている。二十代後半を超えるまでは、思春期男性は職業や仕事以外の分野で何とか間に合わせなければ窒息してしまう
 3.就職してからも、アイデンティティや自己実現感の乏しい職場・職種が少なくない。また、就職までの道のりで一度コケると挽回が極めて困難
 
 などが考えられるだろう。こういう背景のうえで思春期心性をこじらせ、オタク趣味界隈でソレを補償せずにはいられないオタク達が生まれていくのではないかと推測する。
 
 しかし不幸なことに、オタク趣味の敷居低下・能動的にオタク趣味を選んだというより受動的に仕方なくオタク趣味を選んだということ・世間のオタクバッシングなどもあいまって、彼らがオタク趣味を通して得られる自己実現やアイデンティティは、オタク界隈の内側でのみ通用するのが現実である。このため、彼らは唯一のアイデンティティ獲得機会としてオタク趣味に益々依存しつつも、オタク趣味界隈以外ではしょぼくれて生きていかざるを得ず、自ずとオタク趣味界隈に引きこもってオタク界隈のなかで優越感ゲームを続けざるを得なくなっていくと懸念される(し、実際にそういうオタクの最も極端な例を私達はしばしばみかける)。オタク趣味界隈だけが自己実現を達成する場となり、外の世界では全く評価されないが故に益々オタク趣味世界から出られなくなるオタク井戸の住人達。彼らの遷延する思春期と優越感ゲームに、果てはあるのだろうか。