シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

『童貞問答』で嘘をついてもろくなことがない

 
 http://guideline.livedoor.biz/archives/50624796.html
 
 ああ、オタなあなたならば、きっと一度ぐらいは経験して身悶えした事がある筈のテーマだ。『童貞問答』は、今夜も日本のどこかで発生し、童貞達に苦痛を与えているに違いない。
 
【童貞問答は惨い】
 
 二十代前半〜中盤ぐらいの男集団のなかにおいては、「女性経験が何人なのか」という話題は決して珍しくない、古典的な質問だ。オタク達にとってしばしば迷惑なこの質問は、
 
・質問者自身はそれなり以上の女性経験を持っていて
・質問者に親しい何名かも少なくとも一定以上の女性経験を持っている

 
場合に発せられることが多い。そして質問が発せられた際には、男集団の内部は以下のような気分にみたされがちだ。
 
・女性経験を数値化する事によって、ヒエラルキーが発生
・女性経験を有する者同士による「仲間意識」を体感することが出来る
・女性経験がある男は普通・女性経験が無い男はクズ、という変な空気
・女性経験の無い男にまとわりつく疎外感
・時に、女性経験の無い男性に劣等感が惹起されることもある

 
 この「童貞問答」は、非童貞に良い気分をもたらす事こそあれ、童貞に劣等感やら疎外感をもたらす事しかない非対称的な惨い質問といえる。非童貞側は童貞をスケープゴートにする事で優越感やら連帯感やらを獲得し得るが、童貞側には良い事は何も無い。処女は誇れても童貞は誇れるものではないからだ。オタク趣味に全身全霊を賭けている人にとっては腹立たしいだけの、いじめのようなこの問答への対応法について、とりわけ、嘘の危険性を中心に考えてみる。
 
【あなたが実際に童貞なオタクの場合には、嘘はヤバい】
 
 まず、間違いなく言える事は、「自分が童貞である事を隠すのはヤバい」という事である。質問者が優越感を味わうために『童貞問答』をやる場合には、絶対スケープゴートが必要で、多分あなたは生け贄の羊に違いない。彼らは、あなたがどれほど悶絶しながら惨めな思いを味わうのか、禿鷹の目で観察することだろう。童貞なあなたをみつけて彼らが『童貞問答』を始めた時、とりわけあなたの顔をみて問答を始めた時には、あなたが童貞である事は既にバレている。オタ丸出しなあなたの場合などは、とりわけそうである。答えを知ったうえで質問をしてくる彼らに、「一人だけ…」と答えてみたり、あまつさえ曖昧な返事をしようものなら、それこそ思うつぼだ。「僕は童貞です」とその場で切腹したら彼らの優越感はそこまでだが、檻からに逃げた羊にはじわじわとなぶり殺す愉しみがある*1偽りの答えを口にする時のあなたの目元口元に、非童貞達は全身全霊をかけて注目していることだろう。唇の端があがっていないか?目を逸らせていないか?もし、ちょっとでも嘘臭いアクションが含まれていたら、彼らはさらに質問を続けることだろう。質問は、あなたの嘘が十分に矛盾や無知を晒すまで続けられる。逆に質問が止まった時というのは、あなたが嘘吐き童貞である事が彼らの中でコンセンサスとして共有された時だ。もう、質問する必要は無い。あなたは、馬鹿にされたのだ。しかも最悪の場合、あなたは「虚勢を張る童貞」というレッテルも頂く事になるので、今後ことあるごとに、白状するまで、『女性経験』について嫌味な質問をされ兼ねない。そりゃ童貞だって事がバレても苦労は多いかもしれないが、「虚勢を張る童貞」は痛さもいじり甲斐も格別なので、禿鷹どもには最高のご馳走なのである。それだけは避けたい。
 
 どうせ非童貞達に嘘を突き通す事が出来ないとすれば…もう答えは一つしかない。「僕は女性経験が無いんです」と答えるしかない。どうせ連中には読まれている答えなのだ、口にしたところで痛くも痒くも無い。いや、自意識はそれなりの痛みを感じるだろうが、嘘をつき、非童貞達にこづき回された挙げ句に追いつめられるよりは犠牲は少ないと言える。まして「虚勢を張る童貞」レッテルの悲惨さを思えば、嘘のリスクの大きさは計り知れない。「僕は童貞です」と宣言すればその場一回切腹で終わりかもしれないが、「虚勢を張る童貞」の道を選んだ場合は、白状するまでこづき回されなければならないのである。
 
【禿鷹への逆襲も一応考えてみる】
 
 では、童貞側が非童貞側に逆襲する方法はあるだろうか?あまり効果的な手段は無いかもしれない。非童貞側にとって、童貞=駄目 非童貞=まとも という図式はあまりにも揺るぎない。例えば彼らを相手に哲学問答を仕掛け、それで優越感ゲームをひっくり返そうとしたところで、「オナニー哲学」とせせら笑われるのがオチだろう。そんな事をやったって益々いじめられるに決まっている。それよりももっと実効的に『童貞問答』を思いとどまらせるような、抑止力のある手段を講じなければならない。以下に、サンプル例を挙げてみる。
 
・キレてみる
 キレて場の空気を滅茶苦茶にしてしまうという、馬鹿でも出来る方法。ただし、この方法は、周りの非童貞達に嫌われても自分の立場が危うくならないか、そのコミュニティを使い捨てにしても困らないような状況でなければ使えない。賑やかな居酒屋のド真ん中で「童貞で何が悪いんだようウワーン!」とキレたあなたは、もう滅多に『童貞問答』のターゲットにならないかもしれないが、口もきいてもらえなくなったり、一層仲間外れにされたりするかもしれない。ただ、彼らをその場で困らせる事は、十分に可能だろう。特攻精神。
 
・童貞同士で連帯してみる
 もし、童貞側の人間が複数、望むらくは過半数存在する場合には、むしろ童貞同士で連帯感を表明するのが良いかもしれない。コミケ後のオフ会で『童貞問答』を始めたような不届き者には、「こんな場で女性経験聞くなんて、空気読めない奴ー!」と仲間はずれにしてやろう。空気も読めない禿鷹など、羽を毟って丸焼きにしてやれば宜しい。ただし、この方法は童貞仲間が十分揃っている時でなければ難しい事はお忘れ無く。
 
・風俗に行く
 正直これはお勧め出来ない。確かにあなたは『童貞問答』において何らかの回答が可能になるかもしれないが、ただ、それだけである。もしも『恋愛問答』なんかが始まればやっぱり嫌な思いをする事になる。その他にも色々な問題を孕んでいるような気がするので、この選択肢をすぐに選んで良いかどうかは、十分慎重に考慮すべきじゃないかと思う。第一、この方法では非童貞達への復讐は全く果たされない。せいぜい、彼らの惨めな子分にされるだけのこの選択は、禿鷹どもへの復讐としては不適当である。
 
 うーん、やはり禿鷹に復讐をするのは割に合わない方法か、童貞側の土俵でなければ難しいものっぽい。嫌な奴らとはいえ、復讐の為に自分自身が大きいダメージを食うようでは割に合わない。また、復讐はさらなる復讐を呼ぶことがある事を記憶しておかなければならない。自分のダメージを最小限にする事を優先させざるを得ない、泣き寝入り的な状況が少なくないように思える。
 

【偶発的『童貞問答』にはおおらかに。嘘なんてつかないように】
 
 『童貞問答』は、確かに童貞達にとってはた迷惑な問答だ。ただし、なかにはあなたが嫌な顔をするなんて想像出来ないまま、『童貞問答』を仕掛けちゃったケースもあるかもしれない。この場合は、問答を仕掛けられたあなたをみて、二度とやるまいと誓ってくれる人も少なくないと思う。そのような人を恨んだり憎んだりしてもしようがない。あなたを小馬鹿にしようと手ぐすね引いて寄ってくる禿鷹どもはともかく、あなたが童貞である事&あなたが童貞コンプレックスを持っている事にちゃんと配慮を払ってくれる人は、(色んな意味で)味方になってくれる見込みの大きい人達といえる。悪意をもってあなたを生け贄にしようとしている連中と、そうでない人は出来るだけ見分けられたほうが良さそうだ。
 
 この偶発的『童貞問答』においても、やはり嘘は禁物だろう。悪意の無い人による『童貞問答』は案外と嘘を信じてしまう人もいたりする*2ので、あなたを非童貞だと本気で勘違いしてしまう可能性がある→以後もあなたが非童貞という前提で話し続けるリスクがある。お互いに悪意が無いのに、あなたは嘘の白刃の上を転げ回るという、滑稽な茶番劇が展開されかねない。悪意の乏しい『童貞問答』の場合、あなたが正直に答えてちょっとがっかりでもしてみせれば、二度も三度も童貞問答を仕掛けてこない確率が高い。まして、それが同盟関係にある知己だったら尚更である。この場合も、嘘はメリットよりもデメリットの多い選択ではないだろうか?
 

【総括:嘘(・A・)イクナイ!!】

 嘘は使い方の難しいものだが、『童貞問答』においてはとりわけ難しいと言える。既にあなたの童貞コンプレックスを見抜いている禿鷹どもを喜ばせ、偶発的に『童貞問答』してしまった善意の人を勘違いさせてしまうかもしれない“嘘”。あなたが余程巧みな嘘ツキでもない限り、お勧め出来るものではない。禿鷹を相手にする時はさっさと言ってしまったほうが傷が少ない*3し、偶発的に『問答』してしまった人に嘘をついても大体ろくな事が無いと思う。
 

*1:単純に非童貞同士の連帯感だけを彼らが目しているなら見逃してくれるかもしれないが、場のなかに一人でも“童貞野郎が、惨めに嘘をつく姿がみたい”という奴がいたら、多分、逃げた羊を失血死させる為に奴らは追いかけてくる!

*2:禿鷹どもと異なり、彼らはあなたの言う事を最初から嘘だと疑ってかかるような真似はしていない。余程あなたの反応が嘘くさくない限りは、そのまま信じてしまう可能性が、ある。

*3:&禿鷹どもを喜ばせる事も少なくて済む