シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

ここがヘンだと思ったところや、疑問に思ったところ

 
 【注意!】
 以下のテキストは面白くありません。また、文章力が無い癖に誤解を少なくすべく頑張っているせいもあって、大変読みにくい文章に仕上がっています。娯楽を求めて読んでも、何も良いことはありません!ネタも仕込んでありません!お勧めタグは[後で読む]ではなく[長いから読まない]です!なにせ、書いた私自身が読み返すのを躊躇うぐらいですからね!
 
 さて、「利己的行動」という言葉を使う際の慎重さと軽率さ・メリットとコストに関して - シロクマの屑籠は私の姿勢と事情について言い訳をさせていただきました。こっちのテキストでは、行動遺伝学を視野に入れたものとおぼしきfromdusktildawnさんとみちあきさんの記述の幾つかに個人的レスポンスを行ってみたいと思います。んじゃ、爆撃モードに切り替えますね。
 
はてなグループ

 単純に、とくに悪いことをしているわけでもない子供が、いじめられていたら、「おい、こら、ちょっとまてよ。酷いことするなよ」って、止めに入りたくなりますよね。
目の前に、困っている人がいたら、つい助けたくなりますよね。
 
ttp://eizu777.exblog.jp/4177618/を見て、何とかしてあげたいとか思いますよね。
 
そういうのは、利他的な欲求という言葉で呼ぶべきだと思いますよ。
少なくとも、科学者が論文を書くとき以外は。

 
 だとすれば、私は何も書けなくなってしまいそうですね(笑)。私の妄想体系に基づくなら、「利己的な動機やインセンティブに誘導された利他的欲求」と書くことでしょう。ところで…この喩えにあるような、いじめを止めに入りたい気持ちがfromdusktildawnさんの心の中に沸いたのは何故でしょうか?何のメリットも期待できない(≠何のメリットも無い)状況下において、人は何故利他的行動を欲求するのでしょうか?共産主義を演説するのも、世界丸見え特捜部の8:30以降のプログラムを見て涙を流すのも、見知らぬ妊婦さんに席を譲るのも、私には「利己的な動機やインセンティブに誘導された利他的欲求」に導かれての行動だと思います――チンパンジーでは計算しきれないレベルを多分に含んだ、もっと複雑利己的動機やインセンティブが隠れていると思います。一方でこうした行動のなかには、「勘違い利他的欲求」とも言うべき、automaticなレベルにおいて利己的欲求が沸いているんだけれども冷静に前頭葉を回転させてみたらstopしちゃうかもしれない行動も含まれているんじゃないでしょうかね?
 
 さて、私の考えを披瀝するのはこれぐらいにして、おかしいなぁと思った点を指摘してみます。えっと、目の前に困っている人がいたとして、fromdusktildawnさんが助けたい気分になる確率は常に一律でしょうかね?相手によって違うでしょう、状況によって違うでしょう、fromdusktildawnさん自身の体調によってすら違うでしょう。身近な人やよく会う人に対しては、より助けたい気分になりやすいんじゃないですかね?知らない人や敵対的な人に対しては助けたい気分になりにくいんじゃないですかね?余裕のある時は助けやすい気分になりやすく、忙しい時や急いでいる時には助けやすい気分になりにくいんじゃないですかね?あなたや私の動機やインセンティブによって、利他的行動の多寡はレギュレートされてませんかね?ここら辺のことはfromdusktildawnさんなら全てご承知の筈ですし、この確率変化の存在もまた、私の考えを補強する所見のひとつです。あなたがこれに気付かない筈が無い。にも関わらずそこを触れずに通り過ぎてあーゆー言質をやるのは、どうかと思いますよ?
 
「目の前に、困っている人がいたら、つい助けたくなりますよね。」という言葉は、精製プルトニウムほど慎重に取り扱う必要はないでしょう。ですが、人形峠の石ぐらいの慎重さをもって取り扱って欲しいなぁと思う瞬間でした。
 
 また蛇足ですが、世の中の人間が自分も含めて全員利己的な意図で動いていると考えることが、即ニヒリズムに繋がるのはおかしくね?とせんせい思いまーす。『いかにさもしくとも力無くとも人間は人間であることによってのみ尊い 』という有島武郎の言葉を私は気に入っています。いや、誰もがそれを思えるわけじゃないのは知っていますが、人間の尊厳なり人間の生きる意味なりは、「人間が利己的行動を繰り返すという洞察」によって消滅する類のものではない筈ですし、そんなもので消滅する尊厳なり生きる意味なりって何よ?って思いますよ。fromdusktildawnさんがお好みであろうニー何とかさんも、「ふざけんな」とか「そんなので消える尊厳やら意味やらなんてインチキだ!」とかって言いそうな気がするんですが、如何でしょうか。
 
 では次いきます。
 

はてなグループ
 

チンパンジーやボノボなどのサルですら、この利他性と利己性の二つの欲望がベースになって、社会を形成している。

 チンパンジーやボノボが互恵的行動を含んだ、社会的な小集団を形成する事を引用して色々と説得なさっているid:fromdusktildawnさんが心優しい天使にみえる、ほのぼのとしたテキストです。「シロクマの屑籠」みたいな殺伐サイトに飽きた人にお勧めの一文です。みんな仲良く!
 
 しかし、この引用はどうなんでしょうか!確かにチンパンジーやボノボは、利他的行動をしばしばとりますし、それが社会を形成しているのも事実のようです。彼らはお互いの毛繕いをしたり、共同で子どもを守ったり、様々な利他的行動(というより互恵的行動)を発達させている。だけど、どのような場面でチンパンジーが利他的行動をとるかフィールドワークした人達は「お礼をしてくれる仲間にやる傾向」「同じ群れの仲間にやる傾向」「血の繋がった仲間にやる傾向」などを発見してびっくりしているらしいですよ!つまり、利他的行動が巡り巡って(遺伝子を残す、という事も含めて)個体または遺伝子残存に関するメリットを促進するような利他的傾向ばかりをサル達は身につけているようなんです。この点を見過ごして、サル達の利他的行動と社会福祉を同列で論ずるのは、それこそ「プルトニウムの桶に首を突っ込む」ぐらい危険だと思います。サル属に限らず、鳥類や昆虫などでも利他的行動は多々みられますが、人間以外の生物の利他的行動は(個体または遺伝子残存の観点から)利己的利益の期待値が上昇するような場面に徹底的に限られていることを指摘しておきます。途方もない長さにわたって加えられてきた淘汰圧が、そのような行動形質を含んだ遺伝子の個体だけを遺伝子プールに残したのでしょう。
 
 その点、人間の利他的行動は、極めてユニークで複雑なわけのわからないもので、(考察対象として)ロマンに満ちていると思います。性淘汰・自然淘汰によってガチガチに本能づけられた、プリミティブな利他的行動だけではなく、防衛機制・文化的偏向・判断力などなどによって無限のバリエーションを持った利他的行動を利己的に選択出来る人間というイキモノ。この人間というイキモノのとる利他的行動、とりわけ福祉だの寄付だのといったものを論じるにあたって、行動遺伝学的知見は必要には違いないけれども十分なものではないというのが私の考えです。
 
 さて、あとひとつ。次、次。
 
2006-07-28 - すべての夢のたび。
 
 id:fromdusktildawnさんが指摘してないようなので、代わりに私が指摘してみたいと思います。ただし、fromdusktildawnさんの言う「利他性の欲求」と、私の言う「利他性の欲求」の間にあるギャップはほったらかしだという事は、ご了承ください。

 fromdusktildawnさんのいう利他性の欲求って、要するに、他人のために行動したときにも脳に快楽物質が出る、という話ですよね?(もし違ったら指摘お願いします) つまり、あの人が幸せでないと私も幸せでない、みたいな。ぼくはそれを利己性の欲求に分類している、ということです

 ドーパミンなりβエンドルフィンなりを介して行動を規定する、というのは(昆虫とかは知らないけれども少なくとも哺乳類レベルでは)よくある事なので、個々の動物において、特定の条件下で特定の利他的行動をとるように脳内麻薬を分泌する遺伝子を持った個体が遺伝子プールに溜まっちゃう可能性は十分にあることでしょう。人間においても、(例えば)子どもが運動会で一等賞をとった時なんかは、脳内麻薬がドバドバ出る際に遺伝子も一枚噛んでいるんじゃないかな、とは思っています。
 
 でも、人間の行動はもうちょっと面白くて複雑ですよね。前頭葉をしっかり発達させた人間の場合、A10神経からβエンドルフィンやドーパミンが放出されなくても、長期的視野において利得が期待できると大脳皮質が判断する状況下では抑制をきかせることが出来る程度にお利口ですし*1。みちあきさんが仰る話だけでは、例えば嫌な上司にお世辞をいう人間の利己性は説明出来ない。脳から快楽物質が出ないか、むしろ不快な時でも、ある程度知恵の働く人間なら、政治的メリットや社会的メリットや長期的ビジョンを頭に入れて行動することが出来ます。凄いですねー。これは、動物で広く認められる快−不快による行動制御だけでは絶対に為し得ない、まさに人間ならではの賢い(または浅はかな)ところだと思います。ついでに、幸か不幸か心的葛藤を調整する防衛機制が一枚噛んでいて、一層人間の利他的行動の利己的目論見は読みにくくなっているのも面白いところですね*2!この、人間ならではの複雑な利他行動の利己的動機を踏まえて予測を行うには、チンパンジーの利他行動を予測するよりもずっと複雑なモデルや仮説が必要となることでしょう。目下私は、行動遺伝学的行動傾向・防衛機制を低レベルレイヤーとし、大脳皮質レベルの計算や文化依存的行動を高レベルレイヤーとする多層的な利己追求モデルを仮組みして他人の動機やインセンティブ探知を実施しています。この近似モデルをもっともっと洗練させて煮詰めていくのが私の夢のひとつです。もし、人間がどのような場面でどのような利他的行動をとるのかについてもっと詳しく知ることが出来れば、(悪いことや利己的なことに使えるばかりか)福祉や支援などの分野でも効率化等の貢献が出来るんではないでしょうか。
 

【以上、爆撃終了】
 
 以上、目についた範囲で「あれれれなんだかおかしいな」と思った点について突っ込んでみました。ネットを散策していると、例えば「遺伝子は利己的だから俺は利己的でもいいんだ」的なトンデモ議論に出会ったり、ネオダーウィニズムによって明確に否定された(1900年代前半ぐらいのカビ生えた)社会進化説を「正しいモノ」と信じている人に出会ったりすることがあります。そこまでいかなくても、「人間の行動や性格は全て環境因によって後天的に決定される」と決めつける意見や、その逆の決めつけに出会う事もあります。それら全部説得して回るのは愚かな事に違いないですし私の望んでいることでもありませんが、「fromdusktildawnさんやみちあきさんの文章にこうしたツッコミを入れる」という行動は、さしあたり私個人の利己的インセンティブを刺激したようです。ご覧のように、また長くて読みにくい、自分で読んでも吐き気のしそうなモノを書いてしまいました。お目汚しすいませんでしたです。ぺこり。 
 

*1:ですが、十分に大脳皮質なり前頭葉なりが発達していない親も勿論いますよね。最近そういう親がやたら目立つようになっている点について色々書きたいけれども今日はやめときます

*2:そうそう、利他的行動の利己的目論見が読まれちゃまずい状況が多々ある事にご留意くださいね。天使のフリをする事が利益を最大化させる時に黒い尻尾をみせていては、信じて貰えません!だから、天使のフリする時は騙しあいです!情報戦です!ディスプレイです!