シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

説得する前に、何故やらないのかを検討すると…

 
「Aさんは、今○○さえしておけば後で酷い目に遭わないで済むのに、やらない」
 という言葉をもうちょっと詳しく。
 
 この言葉が出てくる時、
1.Aさんは、今○○すれば回避出来るリスクを十分理解したうえで大した事が無いと思っている。だから○○をやるよりは、やらないほうが良いと考えている
2.Aさんは、今○○すれば回避出来るリスクを認識していないか、過小評価している。だから、○○をやるよりは、やらないほうが良いと考えている。
3.Aさんは、今○○しなければ酷い目に遭う事を十分知っているが、○○をやり抜く為のコストを全く支払えない。だから、やったほうが良くても出来ないと考えている
4.Aさんは、今○○しなければ酷い目に遭う事を十分知っているが、○○をやり抜く自信が無い。だから、やったほうが良いとは思っていても出来ないと考えている。
 
 どの場合であれ、○○しないと決めるAさん自身は、自分では現時点で最善の選択だと信じ込んで選んでいる。もし、○○しないことが現時点で最善じゃないと思っている人は、誰かに説得されるまでもなく、既に問題に着手していることだろう。Aさんに○○をさせておかないとAさんヤバい事になると思っている人は、AさんがAさんなりに最善を尽くしている事を十分承知したうえでアドバイスしなければならない。1.2.の場合は、極単純に、○○しない事のリスクを煽ってあげれば方針が変更されるかもしれない。だが、3.4.の人は、リスクを煽るだけのアドバイスではビクとも動かないか、「んな事ぁ分かっているけど出来ないんだよ!アホ!」と逆ギレされるだけかもしれない。誰かを説得したい時には、その人が何故○○しないという選択肢をわざわざ選んでいるのか、十分忖度したうえでやったほうがいいだろう。
 
 尤も、その人をわざわざ説得してリスクを軽減してあげたほうが良いような“義理”や“因縁”が、その人と自分との間にあるのかを十分検討してから説得するってもんだろう。見知らぬ誰かに説教厨と言われるリスクを冒してでも何かを伝えてあげなきゃいけない場面というのは、実際にはそう多くない。
 
 ※説教する姿勢を通して、何らかの実際的ステータスを手に入れようと目論む人・優越感を堪能しようと思っている人・説教する事で自分自身の葛藤を防衛したいと思っている人はこの限りではない。ありがた迷惑とか説教厨と後ろ指を指されるリスクを冒してでも手に入るべき利得があるなら、他人を磨りつぶしながら利益を誘導するのも悪くない。個人的には、短絡的な説教の連発が、(特に身近な人間関係のなかで)本当に自分自身の快楽や適応を向上させてくれるのかには大いに疑問を感じるが。