シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

地方オタクの衣料品を探索する旅(国道沿いにて)

 
 「俺はオタクだ!」とオタクとしてのアイデンティティを積極的に提示するテキストとしての衣服とは、どんなものか。これを考える材料を探すために、とあるファッションセンターに乗り込んでみた。これまでの経験とCOMME CA DU NERDさんの研究から、「地方の国道沿い量販店こそが、地方のパラサイトシングルなオタク達の衣料品の供給地点になっている」と私は踏んでいたが、今回、それを確認することが出来たような気がする。以下の箇条書きは、見聞した印象です。
 
・お客さんは子供づれかおばさん一人
 子供づれでなければおばさん一人が殆ど。若い男が一人で品定めしている姿は全くみられなかった。なお、その店舗はブースの約1/3ほどが男性向けの商品で占められていたけれど、若いカップルとか男性onlyの客は全くいなかった。おとうさんぐらいの歳の男性と、おかあさんぐらいの歳の女性(おそらくは子どもの服を探している)姿がみられた。
 
・驚愕の価格
 低価格路線で名を馳せる企業だけに、信じられないような価格が並ぶ。Tシャツは700円以下、シャツも1500円前後。ユニクロと比べてもさらに一回り安い。ファッションという記号性を度外視するならば、凄まじい費用対効果といえる。
 
・デザイン性の重視
 無印やユニクロはコンセプトがそもそも違うにしてもそんなに派手な服を置いていないわけだが、今回訪れた店舗には様々なデザインの服が売られていた。裁断や生地、流行における位置づけなどはお察しなんだけれども、ユニクロに比べると一見デザイン豊富な服装が並んでいると感じられる。ただし、裁断などの問題などにより、それらがファッションとしての記号性・テキスト性を獲得しているかというと微妙なところで、模様やプリントの質&裁断などを加味して考えると「垢抜けない」イメージは払拭できていない。
 
・女性向け商品と男性向け商品のギャップ
 買い物に来るのが女性中心だからか、女性モノは相当がんばっている印象。ファッションとしての記号性を維持するよう、相当頑張ってるっぽい。価格も、男性モノよりちょっと高い。知人の話によれば「繰り返し洗濯するとボロが出やすい」とはいうものの、使えそうな商品が各年齢ごとに結構あって、もっと高価格の商品と組み合わせて運用できそうにみえるものも。
 それに比べると、男性側の商品は価格もデザインもワンランク下のような気がする。自分自身が男だからそうなのかなと思って事情通の女性に質問してみたら、「私もそう思う」とのこと。
 

  • そんなこんなで

 
 なるほど、おかあさん達に服を選んできてもらっている地方オタクの服飾について、ちょっと理解が進んだかもしれない。おかあさんがたの家計の味方・国道沿い衣料品店では、購入者たる女性にはそれなりのデザインのモノを提供しつつ、(女性からは良し悪しがわかりにくい)男性モノに関してはとにかく最低価格で財布の紐を緩めようという販売戦略を私は感じ取った。確かに、家計のやりくりに苦労しているママ達においては、「服に無頓着なオタク息子(やパパ)には、安い服で十分」と考えて国道沿い衣料品店で済ませようとする動機は十分にある。しかも、ユニクロや無印よりもさらに低価格で(裁断や流行廃りはともかく)デザイン重視のアプローチは、男物の良し悪しがピンとこない母親世代には訴えるところ大と推定したくなる。「男性ファッションわからないけれど、プリントも入ってるし、○○←あなたの名前を入れてくださいに買っていこうかしら」って感じで購入しそうな予感がする。まして、オタクな○○が服選びに無頓着で何でも着てくれるならノープロブレムだ。ママは安く済ませられて満足、オタクな○○君は服選びの手間を省略できて問題なし!ファッションに五月蝿い息子でない限り、国道沿い衣料品店は、家計とオタクの双方にやさしい、すばらしい店舗ということになるんだろう。こりゃあ倹約ママに支持されないわけがない。
 

 最近、秋葉原で遭遇する東京のオタク達の服装が「脱オタクファッション化」しているのが観察される。一方、コミケ三日目の行列をみると地方の国道沿いで購入された*1服装を多々みかけるわけだが、その要因がわかったような気がした。地方オタクの母親が国道沿いの衣料品店で服を購入し続け、彼自身が母親の購入品を黙って身につける限り、国道沿い衣料品店の服は地方オタクから一掃されはしない。国道沿い衣料品店の服は、デザイン性こそ盛り込まれているものの、低価格ゆえに裁断や細部の加工に粗が目立ち、しかも洗濯にもあまり強くない*2。そんな服を繰り返し洗濯しながら文句も言わずに着続けるオタク達の服装は...まぁ、伝統的なオタクファッション(nerd fassion)の呈をなしていくに違いない。「脱オタクファッション」の威力からか、秋葉原からは旧態然としたオタクファッションは後退しつつあるが、地方にはまだまだ大丈夫だ。 "traditional nerd style"は、21世紀に入っても絶滅してはいない。
 
 [参考]:オタクっぽい服の故郷は、地方量販店とおかあさん? - シロクマの屑籠
 [参考]:ユニクロの同業他社を教えて下さい。 条件 1)PB商品主体(100%で… - 人力検索はてな

*1:っていうよりもはや地方の国道沿い衣料品店にしかあり得ない

*2:だけどそれに文句を言うのは筋違いというものだ。あの価格で精一杯デザインと機能を提供しようと、最善を尽くしていると思う。