シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

そんなグローバル化が実現出来ればまだ御の字

 
 
西暦2026年の日本 - 分裂勘違い君劇場
 
 なんと自由で無尽蔵な世界だろう!自由が行き着くところまでいけば、こうなるに違いない。こんな未来はいやだなぁ(だって俺みたいなのは淘汰されちゃうから)と思いつつも、こうなる人類の未来は明るいような気がした。この思考実験は、fromdusktildawnさんが試験管のなかでやったものなので(もちろんご本人もそのつもりっぽい)、実際にこうなることはまぁ無いのだろう。たとえば、このin vitro(=試験管内の)な試考を妨げそうなファクターとして今すぐ思いつくものとしては、
 

  • 国のエゴのぶつかり合いや種々の保護政策
  • 天災や環境問題による後退
  • 資源問題と人口問題と水食料問題
  • 途上国の為政者がどこまで有能で国の未来を考えられるのか&先進国の為政者が途上国の躍進を黙っていているかなど
  • タスクの透明化&それに伴う知的ヒエラルキーの構築に対する、既得権益防備の為のサボタージュ

 
 などだろうし、そんなこたぁあの御方もご存知だろう。これらのファクターは、殆ど間違いなく21世紀の発展に一定の制限をかけるだろうから、なかなか試験管のとおりの結果にはならない。特に資源と人口と水食料の問題は思いっきり足を引っ張るに違いないし。今後技術革新がおいしい方向に転がって、無尽蔵な資源と食料と水にアクセスできるようになれば話は別だが、化石燃料・既存の鉱物資源・非可逆的農業に頼った現在のあり方では、拡大し続ける消費資本主義は支えきれなくなるだろう。いや、すでにそうなりつつあるのかもしれない。そのうえ地球規模の環境悪化や資源枯渇は、一層国家間の緊張を高めるだろうし、緊張が高まったりリソースがなかったりすると喧嘩するのは国も人も変わりない。ともかく、人件費がいくら値下がりしようとも、鉱物資源やエネルギー資源が値下がりしなければ国中にカメラを仕掛けることは出来ないし、今後鉱物資源やエネルギー資源が値下がりする可能性は極めて低い――途上国が発展すればするほど。資源問題をはじめとする諸ファクターは、fromduskitildawnさんのin vitroな実験結果をみえにくいものにする。サービスや情報は、いくらでも流通を促進させることは出来るし増やすことも出来るが、エネルギー・鉱物資源・水・食料はそうではないのだから。
 
 とはいえ、今回のin vitroな思考実験が指摘しているキモの部分が間違っているとは到底思えず、情報だの労働力だのの垣根が低くなるというのは多分そのとおりなんだろうと思う。特に情報通信分野においては、その傾向が顕著になるわけだろうか。英語言語圏・英語思想圏がどんどん巨大化していくという指摘も当たっているようにみえる。この2026年予測が当たるほど人間が利口じゃないし、地球は資源だらけでもないにせよ、情報分野やサービス分野の傾向としては、こういう方向で進みそうな気はする。そしてもしこうした“情報化”が一層進むんだとしたら、とても面白いことがいくつも発生しそうで妄想のしがいがある。極端なまでの知的エリートの台頭と、中等度以下の知的労働者の削減は、程度の差こそあれ今後進むことだろう。さらに、清掃などの簡素なサービス業の自動化や移民の流入が進めば、コンピュータ・情報産業以外の分野でもこうした問題は加速するかもしれない。
 
 いやはや、このSF試験管は脳の妄想ツボをいたく刺激する。「分裂勘違い君劇場」は、いつも刺激的だ。すっかり僕は妄想の虜だ。時間とエネルギーと好奇心が、吸い取られていく!
 
 (一個下のテキストにつづく)