シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

人間男性は、自分の得意なモノサシで自他を比べて優越感を希求する

 
 男性という生き物は自分と他人のどちらが格上かを判断するのが大好きな生き物である。しかし雄犬と同じだと決めつけてしまってはつまらない。大脳が大きいためか、社会的コンテキスト*1が複雑なためか、雄犬よりも人間男性のほうが序列化の手続きは複雑だし、だからこそ観察していて退屈しない。犬の序列は比較的単純な「生物としての強弱」という単一に近い評価尺度で優劣が決せられるけれど、人間の場合は面白いほど評価尺度が多様化している。
 
具体的には、

  • DQNは、腕力・ガンの飛ばし具合・セックスした女の数・やらかした悪い事・車のスピーカーから鳴らす音の大小などで人間評価を行う。DQNにとって、腕力・ガンの飛ばし具合・セックスした女の数というのは、自分自身と他人を評価するモノサシとして機能する。それらの程度をみてDQNは人間に値段をつけるし、それらの程度を高めることによって自分自身の値段が高くなると信じている。

 

  • 学者は、知識・議論の能力・acceptされた論文・学者的肩書き・新聞や雑誌に掲載された度合いなどで人間評価を行う。学者にとって、知識・議論の能力・学問や社会に与えたインパクトというのは、自分自身と他人を評価するモノサシとして機能する。それらの程度をみて学者は人間に値段をつけるし、それらの程度を高めることによって自分自身の値段が高くなると信じている。

 

  • オタクは、オタク知識・ゲームの腕前・貴重なコレクション・作品理解の程度などで人間評価を行う。オタクにとって、それらは自分と他人を評価するモノサシとして機能する。それらの程度をみてオタクはオタクとしての安い高いを判断するし、それらの程度を高めることによって自分はもっとオタクになると信じている*2

 

  • ブロガーなどのネット上の発信者は、アクセス数・テキストの質・ネットバトルの巧拙・トラックバック・周囲の人達への影響によってブログやブロガーを評価する。それらは、ブロガー自身と他ブログを評価するモノサシとして機能する。それらの程度をみてブロガーはブログに値段をつけるし、それらの程度を高めることによって自ブログの値段が高くなると信じている。

 
 
 他にも挙げればきりがないが、とにかく人間の雄は何でも比較して優劣を争うようにできているらしく、しかも面白いことに、評価のモノサシは己が最も得意とするものや、相手との差異化が最も目立つものが選択されがちだ。平等平等と叫ぶ人も、決して他人事ではない。彼らもまた「他の男達よりも、自分は公明正大な平等主義者」である事を念じることで、気持ちのうちにライバル達に差をつけちゃっているわけで、この構造は殆どの男性間関係において観察される。
 
 相手がどんなに強大でも、自分がどんなに惨めでも、自分自身が相手よりも勝っているところをautomaticに検索→相手よりも優れている所を発見→一安心 という手続きが実行されるという現状。どうやら人間男性という生物(ことに思春期)は、優越感を獲得するための自動プログラムでも埋め込まれているらしい。お互いが「俺はあいつよりもここは優れているよな」と心中で確かめながら、男性間のコミュニケーションは今日も回り続けている。あなたも私も、相手より優れている所をいつの間にか脳内で検索して、その視点で相手を数度眺めやっている。ひょっとしたら(というかほぼ間違いなく)確認作業の合間に、脳内麻薬がジュワーっと滲みだしているやもしれない。
 
 雄犬達と違って様々な評価尺度を保有する人間男性は、任意のモノサシでもって相手を貶め自分を優越させる事が出来る(なんて優れた「文化的」生物!)。もちろんそこで図に乗っちゃった人は痛い目をみたり白い目でみられたりするわけだけど、心の奥底で、自分の得意な分野の数直線上に相手と自分を配置してみる作業を一度ならずやっている事を見逃すわけにはいかない。もちろん私も人間男性なので、こうした醜い心の動きが常に脳内で働いている。思春期の頃に比べればまだしも減ったが、まだ残っている。厄介だが、仕方ない。せいぜい、しっかり自分自身を監視しておいて、他の男性に不快感や迷惑をかけないように努めよう*3
 
【この現象の実例:オタクのS君の場合】
 分かりやすい例として、架空の人物・S君を紹介しよう。オタクS君(21歳、♂)は、エロゲーとラグナロクオンラインが大得意なオタクである。腕力と勇気と持続力は無いが、法政大学に在籍しちゃったりしている。ゲームセンターで熱心にアルバイトをしているので、お金にはそんなに困っていない。毎日せっせとブログを更新していて、エントリーがニュースサイトに掲載されたこともあったりもする。現在彼女募集中。
 

1.DQNに遭遇しちゃった!すごまれた!退散した!
→俺はあいつらよりも頭がいいし、迷惑行為なんか絶対にしない。あいつらは社会のお荷物だよ。どうせアイフルとか“ご利用”してるんでしょ?威張っていられるのも、若いうちだけだよ(w)。
 
2.ラグナロクオンラインで頭のきれる人に出会った!プレイスキルも高くてびっくりだ!
→俺のプリーストはレベル99で、あいつのはレベル91だから、まだまだ大丈夫だ。装備も俺のほうが沢山持っているし。もうちょっときっちりプレイしたほうがいいんじゃないかな(w)。
 
3.ネットバトルで、高卒ニートにやりこめられた!皆が彼に賛成して、なんだか旗色が悪い!大ピンチ!
→高卒ニートなんて、どうせ漫画ぐらいしか読んでないんでしょ?大学にも行ってないし。それに比べて俺は、勉強しながらバイトしてるし、ちょっとした本だって読んでいる。あんな奴の言うことがまかり通るなんて、どうかしてるよね。アクセス数も、俺のブログのほうが沢山だし(w)。
 
4.凄い勉強の出来る知人と、専門分野の議論をやってみた!来た視た負けた!こてんぱんだ!
→彼は専門分野ばっかりに集中してて視野が狭いよね。バイトもしてないし趣味も無いみたいだから、なんていうか社会経験が足りないし。いわゆる専門バカってやつ?(w)
 
5.げんしけんの高坂くんのようなオタクに会っちゃった!しかも彼女連れ!ありえない!
→あんな彼女は、僕*4なら選ばないね。もっと、大和撫子っぽい女性なら、付き合ってもいいけど。ゲームも上手だしエロゲーもよく理解してるみたいだけど、熱意が分散しているよね。僕みたいに、もっと焦点を絞らないと。っていうか、ダメオタクとしては失格だよね、彼(w)。
 
6.ネットウォッチ@2chネカマ作戦記みたいな、見た目・知識・立ち回り・財力etcあらゆる点で気の毒なオタクを発見した!
→やっぱ、俺って最高(w)
 
 
 S君はデフォルメされた架空の人物だし、仮にこんな事を逐一考えている人物がいたとしても、あくまで脳内に留めておかれるのが常だとは思う。だけど、(一瞬とはいえ)こうした「優越検索」をやっている痕跡を、私は自分自身と他人のうちに発見することは多い。そしてきわめて稀にだが、脳内に留めることが出来ずに全部脳外に垂れ流す人を見かけることすらある。誰にでもある性質とはいえ、こういう性質が他人に丸見えではさすがにまずい。ちゃんと、蓋をしておかないと。
 

*1:状況、とでもここでは訳していただければ幸い

*2:ただし、第三世代以降のオタクで、オタク趣味を消極的に消費しているだけの層にこれがどこまで当てはまるかは不明

*3:勿論、他の男性に不快感や迷惑をかけないという事によっても、僕は優越を獲得するチャンスを得るわけだ。ついでに社会的にも上手くいきやすくするってわけだ。つくづく業の深いことだけど、それで業が深いというのなら、人間男性そのものが宿業の生物だと言い切ってしまいたい

*4:注:俺、じゃなくて僕