シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

脱オタサイトの分業(要:まとめリンク)

 

http://blog.livedoor.jp/yuikoinu/archives/50646102.html
 
 天馬さんが、メタ視点を考慮に入れたテキストを呈示なさった。
 仰るとおり、ガス抜きが必要だし、ファッションから遊びや興味や好奇心が抜けたら、それはもう「楽しむファッションじゃない」と思う。そして脱オタ初心者(全くファッションを知らず、ファッションを楽しまず、びくびくしている)にとって、この楽しむという視点を獲得する事も、数ある必要条件の一つに違いない。楽しさが無ければ、最初は「負けっぱなし」の脱オタ初心者が嫌になってしまうのは明らかだし。
 

人間の行動なんて不完全なものですから、「負け」を前提にするくらいで丁度いい。
失礼ですが、Masaoさんやシロクマさんは「結果」に対して
楽観視し過ぎな傾向があるように思います。
ジーコの如くです。
「負け」を知る事で人間は成長します、

 
 私のテキストでもしばしば、「負けたっていいじゃん、特に最初は恥をかくぐらいが重要」「屈辱回廊の徘徊」という表現を用いている*1。「負け」を経験しながら人が強くなっていく事は、やはり強調しておきたい。最初から勝つ必要はない。負けながら、負け続けながら色々な覚えていく。最初から勝っている必要など無いし、そもそも勝つ必要すらないのかもしれない。ファッションという差異化ゲームは、自分自身の(そのファッションという評価尺度における)劣等感が消滅した時点で勝ち負けをあまり意識しなくなってしまう(か、意識する姿勢が和らぐ)ので、脱オタが一定の段階を超えてしまえば、まさに「楽しむだけの境地」に至るだろう。脱オタをはじめてそこまで至るために、沢山のリソースを必要とするにしても。
 
 ただし、それでも脱オタにおいてはメタ視点やマニュアル的なものは必要だと思う。純然たる脱オタ初心者には、ファッションを楽しむ以前にファッションという概念が存在しない。勿論、評価軸がどういう所にあるのかや、色合わせのノウハウなんかも一切が存在しない。これらを知らない段階では、「楽しむ以前に何をまずすればいいのか分からない」ことになる。ここを何とかしなければ脱オタは話がすすみにくかろう。
 
 似たような喩えをするなら、MMOの初心者が良い例になるだろうか。一切ルールを知らずにMMOをやらされた人は、どう楽しめばいいのか分からないしどうやれば成長するのかも分からずに戸惑うことになるだろう。なんだか分からないままやってみてPK食らったり、いきなり高難度ダンジョンで稼ごうとして「このゲームつまんねぇ!」と叫ぶかもしれない。こうしたオンラインゲーム初心者には、「初心者向け装備」「初心者向けダンジョン」「初心者向けステータスふり」などを授けながらルールを覚えてもらうことが極めて有用である。そのうち、そのプレイヤーは勝手に楽しくなって色んな事をやり始めるだろう。オンラインゲームの世界はルールはあっても使命の無い自由度の高い世界だけど、全く無知の段階から自由度と楽しみを享受出来るプレイヤーはあまりいない*2。初心者にいち早くルール・ノウハウを把握してもらうには、テンプレやwikiを通して「初心者向け装備」「初心者向けダンジョン」などを経験してもらうのが一番である。それらの初心者向けレパートリーは、オンラインゲーム内のメタゲームで差をつけるには全く不向き*3だが、いち早くゲームプレイを覚えて貰い、「へぇ、こんな事も出来るんだ〜」と思って貰うには向いている。
 
 これと同様のことが、脱オタについても言えるんじゃないかと私は考えている。MMO同様、最初の段階では何をすればいいのか、何が楽しいのかも全くわからないプレイヤー達。やはり彼らには、初心者ダンジョン・初心者装備・初心者向け攻略が必要なんだと思う*4。MMOと同様、基本的なルールを覚えなければ上達なんて覚束ないわけだが、初心者向けレパートリーの間にそれを少しづつ覚えていけばいいのだろう。
 
 しかし厄介なことに、ファッションというゲームのルールを語る時、差異化の構造を抜きにすることは不可能である。ファッションというゲームでは、自分のステータスをはっきり確認するのは困難で、他者評価を通して間接的に覗くしか方法がない。だからメタ視点・差異化ゲームとしての要素は、「ステータス確認」においてすら必要になってくる。自分がどこまで成長したのかを確認することすら他者のまなざしを意識せざるを得ないわけで、ここを無視して「楽しむことだけ」追求することは、ファッションでは殆ど不可能だろう。仮に友人とファッションを競うわけでないとしても、やはり第三者からのメタ視点はどうしても要求されてしまう。
 
 このファッション独特のルール*5は、一歩間違えれば「他者のまなざしが全て」になりかねない危険を孕んでいる。自分自身が楽しむとか自分で考えるではなく、ひたすら他者の評価が高くなるようにあくせくするようになっては、息苦しくなったり楽しくなくなったりするのは当然であり、それじゃあやっていられない。しかも、脱オタの初期〜中期においては、メタゲーム上で高い評価を得られる可能性は低く、他者のまなざしに触れるたびに不愉快に曝されるかもしれない。そりゃ「前よりいいマシな感じ」と評価されるかもしれないが、-50の評価が-30の評価に変わったぐらいのもので、「褒められるにはまだ遠い」。他者のまなざしだけを直視し続けることは、脱オタ者にとって (いや、ファッションによる差異化ゲーム全プレイヤーにとって)辛くて苛々することに違いない。自分のステータスがどう変化しているのかを確認する為に時々覗かなければならないにしても、覗きすぎると辛くて息切れするのは避けられない。
 
 天馬さんが強調する「楽しむこと」「差異化ゲームばかり見るのは疲れる」というのは、まさにこの陥穽を避けるうえで有用なアドバイスといえるだろう。それだけでなく、楽しいと思った瞬間や好奇心を抱いた瞬間に、人は大きく伸びていくものでもある。ファッションの差異化ルールを覚え、それを参照するだけでは脱オタ者は精神的に行き詰るだろう。モチベーション維持のためにも、好奇心や楽しむことはどこかで獲得しなければならない。「負けた傷を癒して、現実との折り合いをつける為に楽しめ」「勝ちを求めるときりがないから、たまにはガスを抜け!」と天馬さんは主張する。実際、これらのアドバイスは否定するべきものではない。勝敗だけに拘っていてはファッションは楽しくなくなるだろうし、楽しさがなければ(脱オタ者が望む)向上や劣等感克服も達成が難しくなる。そういえば、MMOだって楽しいと思うからこそキャラクターは成長するのであって、楽しくないのにレベル上げをするだなんて、余程の暇人でなければ耐えきれるものではない。
 
 天馬さんのコメントは「楽しめ楽しめ」に終始していてメタ視点がみられないけれど、それはそれでいいのかもしれない。メタ視点を指摘する人なんてどうせどこにでもいるし、マニュアル面については書籍・ネットともに既にかなり充実している。だとすれば、モチベーション維持などのための「楽しさ」を強調する役回りの人が一人ぐらいいたって悪くはない。勿論、ルールだけを語る人やwikiやまとめサイトだけを語る人がいたっていいかもしれない。それら一つ一つだけを見ても脱オタは成功しないだろうけど、読み比べて折衷できれば、きっと良いヒントになるだろう*6。単サイトとしてみた時のhttp://blog.livedoor.jp/yuikoinu/は、お世辞にもバランス良いとは言えないけれど、一人で全てを語らなければならないわけでもないわけで、今のスタンスで頑張ってもらったほうがいいような気がしてきた。そのほうが、天馬さんの持ち味を生かしたテキストになりやすそうだし。やはり、人それぞれ合った事を書くのがお似合いで生産的には違いない。天馬さんは、楽しいことを書けばいいんだろう。そして私は私で湿っぽい話を書けばいい。完全な「脱オタ論」なんて、独りで構築するのはどだい無理なんだし。
 
 最後に、強調したいコメントを引用しておきたい。

時間がかかる事を承知であえて挑戦するのならば
普通コンプレックスに火をつけるよりも
「楽しめ」とか「楽にやれ」と主張してみたい。
いつか、差異ゲームに疲れた時の避難場所として覚えておいて欲しいからです。

 私自身も、この「楽しさ」「楽にやる」ことにはどれほど救われたことか。これを無視して他者のまなざしだけを直視した者は、過剰適応の果てに墜落を余儀なくされるのが定め。いつも肩に力を入れていては、何事も決して長続きはしない。このポイントを指摘し続ける人の存在がいるという事は、やはり大事なことなんだろうと私は思う。メタ視点を承知しつつも敢えて自らの路線を突き進む天馬さんの意見を、そっと見つめ続けよう。
 

*1:from性格の改善その1(汎適所属)見た目の改造(汎適所属)。旧いテキストだけど私の脱オタの原点は「七転八起」と、その中から楽しみを見つける、だったと思う。少なくとも脱オタ最初期においては、メタゲームでいきなり勝つなんて事はあり得ないし、他者と比べて優越感を感じ取ることは不可能に違いない。

*2:勿論、他の同ジャンルゲームをプレイした事のある人はこの限りではないが

*3:MMOでは、装備・ダンジョン・レベルなどを通したメタゲームは実際に存在している。だからこそ非実用品ではあっても希少な品には高値がつくことは十分にあり得るし、それらのアイテムを通して最高級の優越をプレゼントすることもできる。例:ROの頭装備

*4:だからこそ、数年前に私はあのサイトを作った...けれどコンテンツが不十分!

*5:他の差異化ゲームもそうだけどね

*6:逆に折衷させられずに極論に走る人には役立たないとも言える。だけど、折り合いをつけられない適応はファッションに限らずどの分野でも失敗すると個人的には思う