シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

歓楽街に吸い込まれていった知的障害者の親子

 
 ちょっと昔、昼間の新宿で知的障害の男性を連れた年老いた母親が歩いているのを見かけたことがあった。場所が歓楽街だったからだろうか、母親からは落ち着きの無いオーラが発散されていて、地元の人間じゃないことは一目瞭然だった。男性のほうは弛緩した笑顔を浮かべているだけで、今自分がどこにいるのかも理解していない様子。
 
 歓楽街の風景に明らかに浮いている二人組は、やがてソープランドとおぼしき派手な店へと吸い込まれていった。なんとなく予想していたものの、的中した瞬間、私は何故か「見てはいけないものを見たような」「目を逸らしたくなるような」感情に襲われた。何故、私はそんな感情に襲われたのだろうか?
 
 母親は何を思い何を考え、息子を風俗に連れて行ったのだろう?
 息子はその店で何を得るのだろうか?
 そして風俗嬢はどのように知的障害者と向き合うのだろう?
 
 知的障害者に関わる仕事をしていながら、おそらく私は「こういった本当のこと」から目を逸らしてきたのかもしれない。故にこそ衝撃を受けたし、人間と性欲・親心・知的障害に関して学ぶべき事はたくさんあったのだろう。せめて、目を逸らしながら「そんな問題は存在しない」「そんな問題は些末である」とうそぶくのだけはしないでおこうと思う。